幕間 臆病な騎士②
彼女、メラリアとの<天使堕とし>云々から数日が経った。
「まだ堕とそうとしてないの?」
「するかよっ! なんで私があんたを<天使堕とし>にしなきゃいけないんだよ!」
「だってその方が面白いじゃん。」
(メラリアの悪い癖だ)
彼女は時々面白いことと言って、とんでもないことをするのだ。この前も飛竜馬車という新たな交通機関をつくろうと言って、最終的に教会騎士の団長までも巻き込んだ大事業へとなってしまった。
<天使堕とし>はさておき、私は教会騎士に入団した。教会騎士には色々な部隊があり、私たちは竜ノ隊に入隊し下っ端として働いている。下っ端いえども給料は夢のような金額だ。
「メラリア、ツェルカ。団長殿がお前たちを呼んでいる。」
私たちよりも少し位が上の騎士がそう言った。竜ノ隊はお貴族部隊であり、庶民を毛嫌いしている騎士がほとんどだ。(どうして竜ノ隊になったのかって? 私たちの能力が高い故らしい。)
「小竜の二人よ、初めまして。」団長のアステヴェ様が私たちを部屋に招き入れた。団長は私と変わらない年頃だが、団長としての威厳が感じられる。
「小竜?」私は首を傾げた。
「竜ノ隊の新人騎士や三級騎士のことを小竜と呼ぶのだよ。もう、小竜ではないかもしれないけどね。」
「どういうことですか?」メラリアが言った。
「君たち二人を隊長、副隊長とした新たな部隊をつくろうと思ってね。名は獣ノ隊。」
「獣・・・。」
獣に私は深く反応した。こんなところで私の生まれにつながる言葉を聞くとは。
「竜ノ隊が貴族の騎士で構成されているのはご存じだよね?」
「はい・・・。実感しました。」私も隣でうんうんとうなづいた。
「彼らが全員レクテや帝国の<宝石貴族>ではない。むしろ他の国々出身の貴族がほとんどだ。<宝石貴族>は当然珍しすぎる。それゆえに大体の貴族は庶民や他種族を毛嫌いし、最悪差別もしている。
竜ノ隊は星ノ隊の次に最高戦力だ。彼ら全員の<聖剣を捨てさせる>ことはしたくない。でも、このままじゃ教会騎士の評判は世界中で落ちていく。」
「だから、新しい部隊を作り、竜ノ隊が行ってきた雑用を代わりに受け評判を元に戻すのですね。」
「さすがはメラリア君。君は隊長がいいね。」
「ありがとうございます。」
「となると副隊長はツェルカ君かな? 頼めるかい?」
「お断りいたします。」私は首を横に振った。
「どうしてかな?」
「<同華の愛>である私を副隊長にするのはどうかと思います。同華でなくても生まれが生まれで・・・。」
「同華は恋愛の一種だし、私だって・・うぉっほん! ぐっ、古傷が・・・。
と、とにかく、強制ではないからな。隊長がいれば機能するのだから副隊長の重要性はそこまでだし、残念だけど仕方が無いか。」
(団長はかつて学園の卒業式で盛大に振られた黒歴史を思い出した。)
「ツェルカが副隊長になってくれたら助かるんだけどね~。」
「うっ。」メラリアのお願いには弱い。が、ここは耐える。
「歴代最少人数だけど、今ここに新たな神の部隊<獣ノ隊>を設立する。おめでとう、今日から君たちは獣の騎士だ。」
こうして私とメラリアの二人だけの部隊ができた。(二人きりなのは僅か1年だったけど。)
設立1年後に今の副隊長レイグが入隊し、その後数十人もの部隊となった。
その翌年にファミラが正式に入隊した。
この年、魔獣が2体帝国付近で出現したため、星と竜、そして私たち獣ノ隊による合同作戦があった。
魔獣は一体で大国を滅ぼす力を持ち、しかもそれが2体だ。作戦でかなりの仲間を失った。結果からいうと作戦は失敗に終わり、2体とも致命傷を負わせたものの、逃亡し行方をくらませた。
獣ノ隊は実力優先で私とメラリア、レイグ、そしてファミラだけの参加だったため損失はそこまで無かった。竜ノ隊はほぼ全滅で機能するには2年後の今でもまだ先である。
これによって私たちの隊が竜ノ隊の仕事の分までするようになり、教会でそこそこ大きな知名度を誇るようになった。
2年前の魔獣討伐はものすごく言いにくいが、獣ノ隊にとっては利となってしまった。
しかし、あの日からメラリアに異変が生じていた。




