幕間 臆病な騎士①
私は臆病だ。大切な人を見殺しにした。臆病であることを理由に・・・。
「あなたが<夜弓のツェルカ>さん?」
あの人と出会ったのは、冒険家として毎日日銭を必死に稼いでいた頃だった。当時はだれも信用できずに幼い体で魔物と戦っていた。彼女は冒険家業界の中でトップの強さで老若男女問わず人気があってアイドルのような存在だった。生まれが最悪の私とは天と地ほどの違う。同じ空気にいることすら赦されないだろう。
だが、ある日彼女が声をかけてきた。
「あなたみたいな子供が魔物と戦っているのかが不思議に思ったの。お金が無いのなら私が援助してあげようかなと・・。」
彼女は評判通りの平等に接する人物であった。
「あっちいって。」
失礼なことに私は冷たく断ったのだ。
しかし、彼女はこの後私と無理やり行動を共にした。最初は失礼ながらもうざいと思ったが、段々と彼女の底抜けの明るさに触れ、次第に彼女を恋愛的な意味でで好きになった。
残念ながらこの世界で<同華の愛>が認められるのが<レクテ>と<帝国>と<ウィルベリー>という二大国家と自由都市のみであり、私はこの三つのうちどこにも国籍を置いていない。
こんなことが彼女や周りの冒険家たちに知られたら、終わりだ。ただでさえ私は生まれのせいでずっと種族を隠して生きていかなければならないのに。
「教会騎士に!?」
「うん。エステヴェ=スプリケルっていう騎士団長さんにスカウトされちゃったの。教会騎士って入団できれば将来安泰と呼ばれるほどの高額で安定な収入だし、冒険家みたいな収入に波がある職業よりかは十分いいんじゃないかって。」
「よかったね。」私は初対面の時のように冷たく言った。
「あなたも入団するのよ?」
「は?」
「団長さんに、あなたも入団させることを入団の条件としたの。」
「何してんの。」
「あなただって騎士並みの強さじゃない。」
「あんたほどじゃない。」私は褒められて恥ずかしくなり、そっぽを向いた。
「話してみたけど、団長さんならあなたが<同華の愛>だとしても全く問題無く接してくれるはずよ?」
「!?」
彼女の言葉に驚き、後ずさりした。
「いつから!?」
「なんとなく、かな?私って<サキュバス>みたいに老若男女問わず好かれるから、他人の好意には気づきやすいの。」
「ご、ごめんなさい。」
「謝ることじゃないわ。人間を信用していなかったあなたが私を好きになるのをものすごく大きな一歩よ!そう、かの有名な<妖乱島>に上陸したように!」
「たとえデカすぎ。・・・あんたは私のこと好きなの?」
そういうと彼女は目を伏せて悲しそうに首を横に振った。
「ごめんなさい、私は誰かに恋したことなんて人生で一度もないの。」
「意外。」
「だよね~。昔どうしたら人を恋するのか考えてみたけど、ダメだった。」
彼女は空を見上げる。飛竜や雷鳥が今日も元気に飛んでいる。(元気に飛んでいては人間の脅威になりうるのだが。)
「・・・だから、私に恋をくれないかな?」
「は?」
「私があなたを好きになるようにしてくれないかってこと。 要は<天使堕とし>よ!」
「うそでしょ。」




