(62)惨劇
「魔力全開! 全魔術発動!!」 魔術書はひかり輝いた。
ズドォオオオン!
「・・・」
ルオはゆっくりと目を開けた。
「え?」
目の前は生温かい液体が広がっていた。
ルオの身体にもその液体は付着していた。液体に触れると、昔から知っている嫌な液体だった。
「・・・血?」
ルオの周りにはグイレも、誰もいなかった。あるのは一面に広がる血と血塗られた魔術書のみ。
「あ、ははは、。あぁ、俺が人族であれば・・・。」
ドサっ
ルオは魔力切れをおこして気を失った。
魔狂石。
魔石の亜種の一つであり、世界の数個しかない貴重な石。普通の魔石は魔力が一定以上集まったときに、石と融合して生み出される。
一方の魔狂石はどのように生み出されるのかは全くの不明であり、実物を見るのも、ダイヤモンドの原石を道端で拾うほどの珍しさである。
しかし、仮に魔狂石を道端で見つけたとしても近寄ってはならない。見つけたらすぐに魔術連合か教会、あるいはレクテ王国に報告することがあらゆる地域での共通のルールとなっている。
それはなぜか。
理由は簡単。
ものすごく危険だからである。
そう、魔術書が魔狂石によって一瞬で大爆発を起こすように・・・
ーーー
「以上が俺が起こした罪です。この後は教会騎士、獣ノ隊が俺を連行しました。・・・何か質問は?」
「「「「無し。」」」」
ファミラ、クレーネ、ギヌア、ツェルカは口を揃えて言った。ラジエルは当然知っているようでうんうんとうなずいていた。一方カイは、・・・故障していた。
「カイのことは気にしないで。野生児だから。」
「わかった。・・・本当に聴きたいことはないの?」
ルオは彼らの顔を窺いながら問う。
魔獣キマイラであることは、この世界では恩師のみであり人間上での家族にさえ打ち明けていない。そもそも魔獣の誕生は赦されず望まれないものである。教会ならなおさら・・・
「私はルオの処刑前に副隊長に教えられたよ? 魔獣って何かはあんまし分からないけど。」
「うぉい、こら。」ツェルカがファミラの学の無さにつっこむ。
「私もこの馬鹿と同じ。遺跡の時のアレ見たらやっぱりってなったけど。」
(魔法と魔術の知識すら無いのなら、魔獣を知らなくて当然か。)
ルオは少しだけ、ほんの少しだけ心が軽くなった気がした。
「私たち妖精族も魔獣、特に<道化派>全般や<黒血派>のラドンを嫌っているけれど、命の恩人である事実を優先するわ。ね、カイ? おらっ起きろ!」
クレーネがカイの腹を思いっきり殴った。(※良い子はマネしないように)
「・・・起きた。何があった?」
カイは両手で、クレーネの拳を腹に当たるギリギリで受け止めた。
(うわぁ、すごい関係・・。)ルオは引いた。
「ルオが魔獣なんだってさ。私の助けてくれたからそんなこと関係ないでしょ?ね?、ね?」
(<蛇神>並みに怖。)
「この町に害が無ければ、魔獣であれ平等だ。それが自由都市」
カイはいつも通りに答えた。
「・・・二人とも、ありがとう。」
ルオはふるえながら感謝を述べた。
「私は?」
「ファミラは、ちょっと、うん・・、。」
「なんでありがとうじゃないの~?」
「あんたが馬鹿に決まってるからでしょ!」
「そうなの!?」
「今更かよ。」
ツェルカは頭を掻いてため息をついた。
「そろそろおぬしの番じゃぞ~、蝙蝠娘。」ラジエルがツェルカに言った。
「そうだったわね。」
(蝙蝠?)




