(60) ルオと遺跡
「うぉ~、壮大~!」
遺跡内は広く天井も高い、ところどころにある松明のおかげで真っ暗闇にはならず、苦も無く進むことができる。長い時間が経ったのか、建造物に蔦が生い茂っている。
「何らかの儀式を行うための祭壇ってところかな?」
「・・そうかもな。」
「壁に彫られてる文字は全部見たことがない。昔、この場所あたりに国があったのかな? だとしたらいつ頃なんだろ? レクテの近くにあった国はそこまで多くないし・・・。グイレはどう思う?」
「そんなことどうでもいいから早く行け。」
「グイレ・・・?」
遺跡に入ってからグイレのテンションというか、様子がおかしい。いつもはルオの話を聞いてくれるはずなのに・・・。
「地図によると次は右、だそうだ。」
「わかった。右ね。」
先頭にいるルオは分かれ道で、右に進む。
「そろそろ魔物が来るのかな。なんだか魔力が濃くなってきたし。」
ルオは宙で手を動かし、空気に触れた。若干魔力が含まれている。
「立ち止まらないで行け。」
「・・・わかったよ。」
遺跡を進むごとに、グイレの口数は減っていき、だんだんと厳しい口調になってきた。彼だけでなく他の傭兵たちもだった。
ーあの時も、この時も、気づくべきだったのだ。ー
ズバァンっ!
ザシュッ!
「ナイスフォロー!」
「・・・どういたしまして。・・・魔物は全滅した、進むぞ。」
「うん・・・。そうだね。」
魔物との戦闘でも口数は少なくなっていった。
「そろそろ深部かな?」
「・・・・・。」
「虫があんまりいなくてよかったぁ~。こういう場所って出やすいから、行くとき覚悟してたんだけど、杞憂だったみたい。」
「・・・・・」
「おっ! 今度は壁画だ。けどほとんど剥がれ落ちてて、何が描いてあるのか全然わかんないや。」
「・・・・」
ルオの独り言が遺跡内に響いている。
後ろを振り返っても、ちゃんと傭兵たちはいるが、まるで人形化のようにしゃべらない。
(なんだか、おかしいな。どうしてみんな一言もしゃべらないんだ? いつもは近所迷惑になるくらい騒がしいのに。 もしかして遺跡のギミックか? 俺は他の種族たちとの境界が大きいから、俺だけかからないのも分かる。)
「<探知> ・・・。反応なしか。現代の魔術でも探知不可能なギミックなのか?だとしたら一体どういうギミックなんだ。」
「・・・ギミックじゃない。」
数時間ぶりにグイレがしゃべった。
「グイレ!?」
「俺たち<羊の群れ>は、この遺跡探索に集中してるだけだ。」
「そうなんだ。そんなに真剣に・・・。 ありがとう。」
少々気味が悪いが、彼らが真剣だったということに感激し、気にしないようにした。
「そろそろ最深部だね。帰る道も一応確保したし、行くか。・・・ん?」
最深部の扉を開ける前に、ルオは何かを発見した。
「これは、何?」
ルオが発見したのは何らかの布切れだった。
「この布、遺跡に対してかなり新しい。っていうか、これ、レクテの最新の布じゃん! どういうこと?
それに布だけじゃない。 この小袋は、保存食のパッケージだ。
間違いない。誰かがこの最深部に居たんだ。しかもつい最近。 ・・・まさか、さっきの教会騎士!?
グハッ!」
突然全身に鋭い痛みを感じた。・・・懐かしい痛みだった。
体がいうことを聞かなくなり、地面に倒れこんだ。視界がだんだんとぼやけてくる。
「・・あーあ、最深部に行く前に気づかれちゃった。一応魔法弾持っててよかったぁ~。」
「・・・ま、ほう、だん?」
(懐かしい痛みだと思ったら、魔法弾だったのか。慣れないな、この痛み。)
ルオは気を失った。




