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あなたにおくる魔法の教科書  作者: 珍獣モフ犬
第二部 迷宮編

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(61) 消された記憶

 昔々、今は亡き小国にどこにでもいるような普通の少女がおりました。名をフェリス。両親は平民でしたが食べるものに困ることなく幸せに暮らしておりました。


 しかし、ある日小国に魔獣が攻め込み、夜が明けた頃には跡形もなく消えておりました。


 少女フェリスの家族はアマリリスの庭へと運ばれ、抜け殻だけが残っておりました。


 少女も致命傷を負い、誰がどう見ても助からないほどの惨い傷でした。


 不思議なことに、数日後彼女は何事もなかったかのように起き上がりました。傷も消えており、無くなった四肢も元通りでした。


 ただ一つ、戻らなかったのは、彼女の記憶でした。少女は自分が無いものであったのを忘れてしまっていたのです。自分を知るために生き残りの小国民たちに尋ねますが、彼らは少女を見ると腰を抜かして、逃げていくだけでした。

 少女は疑問に思いましたが、特に気にすることなく亡国から旅立ちました。


 旅の途中で出会った人たちも少女を見ただけで、化け物扱いしました。これは流石に少女も傷つき、やがて山奥の廃墟でひそかに暮らすようになりました。


 そして2年がたった晴れの日、貴族のような育ちの良い少年が少女の住む廃墟を訪れました。


 少女は化け物と言われたくなく、冷たく追い払いますが、彼は一切動じずズカズカと少女のパーソナルスペースに入ってきました。彼のデリカシーは家出していたのです。


 ついに少女は根負けし、一緒に住むこととなりました。


 ちなみに少年はリック=バルドルという名で、死霊を払いし光の術師の一族の次期当主だったのです。なんてこった。

 何も知らぬ少女は彼の正体をカミングアウトされても無意味でした。


 少年は好奇心旺盛でしたが、自分の生まれがコンプレックスでしたが、彼女の人となりで人知れず救われたのです。


 数年が経ち、共に成人した時、リックはフェリスにプロポーズをしたのです。(住んでる廃墟で。)

 フェリスは涙ながらに彼の頬に口づけをし、見事結ばれたのです。


 その後フェリスに新たな命が宿り、2人だけの結婚式を行うことを決めました。(もちろん住んでる廃墟で)


 結婚式当日、新郎新婦はバルドル家に襲われました。バルドル家だけでなくあの亡国の生き残りや、周辺国の者まで。

 何年も暮らしていた廃墟は焼かれ、フェリスはバルドル家の当主によって胸を貫かれました。

 しかし、あの時と同じように、何事もなく復活したのです。

 

 そう、彼女は既に死んでおり、死体のまま蘇った死霊だったのです。


 リックのことを探していたバルドル家は死霊フェリスがリックを操っていると考え、襲撃したのです。


 リックは出会った時から彼女が一族の敵である死霊と知っていましたが、それでも愛していたのです。


 一族の敵に回り、フェリスとまだ産声を上げていない胎児を守るために、リックはアマリリスの庭へと旅立ちました。


 残りは新婦のみとなりましたが、そこへ、魔獣<道化派>の座長ロキが現れたのです。ロキはその場にいたものを一瞬で肉片だけに変え、ヘルにこう言いました。


『素晴らしい顔をしてるね♪ 君、俺っちの所に来ない? 俺っちの所なら復讐ができるよ♪』

「復讐なんてしたくない……。私、この世にいてはならない存在だし、第一魔獣でもない。」

『へぇ~、……おもんな。』

「え?」

『俺っちの劇団に正義なんていらないから、さ。』

「な、なにを!?」

『復(・)讐(・)鬼(・)に(・)書(・)き(・)換(・)え(・)て(・)あ(・)げ(・)る(・)♪』

「やっ、いやっ、いやぁあああああああああああああ!!!」



 厄災期110年(今から889年前)、最も人類を殺した復讐鬼が誕生した。

 

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