(60) 泥だらけのあがき
炎を全身に纏った黒の巨人が、腕を振り上げ、異形の蛾に振り下ろされる。ボロボロの羽がぐしゃりと押しつぶされ、見るに堪えなく目をつむりそうになったが抑えた。見る責任がある、これは自分が起こした事なのだから。そう言い聞かせて。
マダ!!ココデクダバルワケニハイカナイ!!
ヘルは力強く羽ばたき、星をも吹き飛ばすほどの超爆風でスルトを追い払う。まるで本当に世界の終りのようだ。
「うぉおおおおおおおお!!!!」
ルオは目をカッと開き、スルトと一体化したように感じた。目先には巨大な、死の蛾がいる。倒すと決めたんだ、もう後悔はしない……。
「行くぞ!! ヘル!!!」
望ムトコロ!!
スルトの業火とヘルの羽による攻撃がぶちかまされる……。
ドォオオオオオオン!!!
爆風と炎が戦場を支配した。
「はぁ、はぁ……。倒せた、のかな?」
魔力を一気に失い、弱った魔狂石をおさえながら、ルオはその場にドサッと座り込む。死の恐怖は無くなったようだ。これでようやく死を気にせずに戦える……。
「いや!」
「まだです!!」
炎と煙と土埃で見えない視界から、スッと死を纏う矢がルオめがけて来る!!
「はぁっ!!」
メリーがルオの前に庇うように入り、黒炎を纏った回し蹴りで払う!
「流石は<世界最強>の弟子ね!!」
上空に人型の少女の姿に戻ったヘルが現れる。
「やっぱまだか!!」
「あたりまえじゃない!! 私は神話のヘルではないもの!!」
じゃあなんだよ、といいたくなるが、それはまた後で。
「これでラストだ!! 行くよ!!メリー!!」
「はいです!!」
2人は力強くハイタッチをし、二手に分かれて全速力で走る。
「うぉりゃあああ!!」
メリーの拳がヘルの顔を狙うが、紙一重でかわされる。
「乙女の顔になんてものを!!」
ヘルはお返しに杖で思いっきりメリーの腹に突き刺す!!
「がはあっ!!」
メリーは勢いよく吐血をするが、キッとヘルを睨み杖にへばりつく。
「離しなさい!!」
「あっかんべー! です!!」
メリーは杖の上にスッと立ってジャンプし、空中で一回転し、ヘルに数発の魔法弾を撃つ。
「遅い!!」
「そりゃそうです!!」
ヘルが杖で打ち返している隙に、弾丸スピードの魔法弾が一発ヒュンッと風を切る。
「きゃああああ!! くそ! フェイントだったのか!!」
ヘルはわき腹を片手でおさえる。血は出ておらず、アンデットと同じように光が粒子が零れ落ちていく……。
「あなたは、一体なんですの?」
「だから分からないって言ってるでしょ!!」
ヘルはメリーの一瞬の隙をつき、杖で殴り吹き飛ばす。
「きゃあ!!」
メリーは廃墟の壁にめり込む。
「まずは、1人……。」
「次はあなたです!!」
「!?」
後ろを振り向くがもう遅い。<火神鳴り>を纏ったルオの拳がヘルのみぞおちに入る!
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