(59) 厄介な条件
「<スルト>ぉおおおお!!」
ルオの声が戦場に響き渡る。
直後、真っ赤な業火が視界一面に広がった。
暑い、肌が焼ける、酷い臭いのなにかを吸ってしまって肺が苦しい……。息が苦しい……。
「今すぐ、生存魔術<酸素ボンベ>を展開するのじゃ!!」
「ラ、ラジエル……? 無事で……。」
「早く!!」
ラジエルは予断を許さないほどの焦りを見せていた。一体どういうことだろう?
「今は、神話魔術の発動中で……。」
「メリーが、やるです!!」
意識が戻ったメリーが肩をおさえながら駆け寄り、<酸素ボンベ>を発動させた。円形の結界がつくられ、その中に必要分の酸素が補給されていく。
不思議と息がしやすくなり、苦しさもなくなる……。
「ふぅ……。何とかなったのぅ……。今の我らはヘルのせいで厄介な条件を付けられてしもたからの。」
「厄介な……、条件?」
ルオの神話魔術はまだ完全発動ではなく、業火がいまだ吹き出している。流石は<ラグナロク>に匹敵するものだ。
「ヘルは死の支配者。死とは生と対、そして命の側面。一瞬で我らに死の概念を与えたようじゃの……。」
「「死?」」
聞きなじみがあるが、しっくりと来るはずのない言葉だった。
「そう、魔法生物には縁のないもの、つまり命を与えられたのじゃ。何故か久しぶりの感覚じゃが、これは<スルト>と相性が悪いかもな……。」
もう発動しちゃったんだけど……!
「安心するのじゃ、ヘルを撃破さえすれば元にもどって、お構いなく<スルト>をぶち込める……。というか、安全地帯にさえいれば焼死にはならんぞ。」
「つまり、この結界がある限りは平気ってこと?」
「焼死にはならずに済むかの? 我とメリーで展開させとくから、とっとと完全発動させるのじゃ。」
「分かった!!」
ルオは中断していた術式魔力供給を再開する。スルトのような神話の大物は発動にリソースの魔力と時間が圧倒的に多い。それに制御も難しい……。
既に発動している、万焼の炎でヘルの身体を焼き尽くしているのに、まだ本体が出ていない……。ヘルの<ラグナロク>は一瞬だったのに……。
アツイ、アツイ……!! ヨクモ黒ノ終焉ヲ呼ビダシタナ…………!
「聞いてる、良し、これで最後だ……!」
最後の一筆を加え、ついに来る。
スルト……。
「さあ! <ラグナロク>をここに始めよう!!」
もう1つのラグナロクがヘルに降りかかる。
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