(58) 神話の再現者たち
気が付いたら空が見えた。後から背中に大きな痛みが走った。起き上がろうとするとズキッと痛み、すぐには無理だった。
左右を見るとゴスロリの悪魔と性別無しの天使が同じようにして倒れていた。
2人はまだ衝撃で気を失っている。
土埃で視界が悪いが、自分たち3人以外この戦場にはいなかった。
「配下すらも犠牲にしたのか……。」
一般ダンジョンボスクラスのアンデットが何百もいたが、あの一撃ともいえない蛾の羽ばたきで全滅した。
「……、ラジエル……、メリー……。」
足を引きずりながらラジエルの元へ駆け寄る。小さい体を揺するが、気が付かない。
「魔法生物だから、致命傷ではないだろうけど、下手したら消滅の恐れがある。」
ルオはラジエルを抱え、ヘルから離れた比較的安全地帯に行き、ゆっくりと横たわらせた。
「はぁ、はぁ……。」
なんだか身体が重たい……。レイグ(セラフィエル)の持っていた魔喰の剣にやられたみたいだ。というか、なんだろうこの感覚……。鼓動が早まり、一刻もこの場から早く逃げたいという気持ちが勝とうとしている。
「一体何なんだ……。いっ! なんか痛い……。」
ルオは人間でいうあばら辺りを抑える。
死ニソウッテオモッタ?
「!?」
恐ろしい気配に、一瞬ドクドクと鳴っていたものが止まりかけた。さっと後ろを振り向くと、異形の姿となり果てたヘルがこちらを向いていた。ボロボロの羽は片羽だけ動かしている。見ているだけでも痛々しかった。寂しくて辛くて苦しいと感じる……。
コンナ姿ニハ、ナリタク、ナカッタケドネ……。
ヒトの姿をしていないのに何故か悲しく微笑むヘルの顔が頭に浮かんだ。
「ヘル……。」
何ヲ憐レンデイルノカシラ、同情シテイルノカシラ……。イカナル理由ガアッタトシテモ、コエテハナラヌ一線ヲ犯シタ者ニ、同情シテハダメヨ?
「そんなことくらい知っています……。同情が時によって人を殺めるものであることは、体験しましたから。」
ダッタラ、スベキコトハ、分カッテルワヨネ?
「ええ、たった一人となってしまいましたが、降りるつもりはありません。」
ルオはまだ痛む身体に鞭打って、しっかりと地面を踏みしめる。丹田に力を籠め、魔力をより循環させる。
マギアバースト一歩手前くらいまで……。大丈夫、もしもの時は世界最強が何とかしてくれる、はず……。だったら、降りるとまでかっこ悪くあきらめずに粘ろうじゃないか……!
「魔の法をもって、神話をよぶ……。汝は、破壊、終焉、再生、の化身、世の始まりからあり、世の終わりにあり。世界樹を喰らうほどの炎よ、かの死の女王を、焼き尽くせ!!! <スルト>ぉおおおお!!」
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