(57) 異能、ヘル
「ものすごく逢いたくて首をろくろ首ほど長くして待っておったぞ! ルオ君!!」
ラジエルが真っ先にルオに抱き着く。
「お怪我はありませんです?」
メリーは服についた泥を落としている。ガーターソックスは破れており、そこから見える肌には痛々しい傷があった。
「それはこっちのセリフだよ、迷惑かけてごめん。」
「ごめんはノーセンキューです。他の言葉が欲しいです。」
「他の、言葉……?」
ルオは頭を絞って思い当たる言葉を探すが、見当たらない。
「まったく! こーゆうときは、ありがとうって言うのじゃ!!」
「あり、がとう……?」
「そうじゃよ! 謝られるよりあたたかい感謝をされた方が、助けた身としては嬉しいのじゃ!」
キマイラ……、……になってくれて、ありがとう……。
……、そっか。だからルオはあの時「ありがとう」って言ったんだ。
ルオは寂しさを含んだ笑みを浮かべた。そして、
「ラジエル、メリー、そしてウィンデさんも……。俺を助けるために来ていただき、ありがとうございます。」
ルオはしっかりと礼をした。
「えっへんです!」
「ルオ君に感謝されたのじゃ~♡」
「ただただ感謝が欲しかっただけじゃないの?」
遠くで、どこからもってきたのか椅子に座り、高みの見物をしているウィンデはラジエルは嘲笑う。
「サボり野郎はそこで黙ってろ!」
「雑魚が戦っても無意味だと思うけど?」
「あんじゃと!?」
「まあまあ落ち着いてラジエル。」
「そのとおーりです! 師匠も戯れが過ぎるです。世界最強のくせに、ルオ君を助けられなかった悪魔がどの面です。」
「がはぁあああああああ!!」
「ウィンデさん!?」
ウィンデは椅子から後ろに転げ落ち、吐血していた。
「世界最強のくせにメンタルは雑魚w…….。」
ラジエルは笑いを必死にこらえている。
ふふ、あなたたちは戦いよりもそっちの方が好きなのね。良かったわ……。
「え?」
カァン!
杖の先を地面に強く突いた音がした。
ヘルはいつの間にか骨で出来た杖を手にしていた。先端には骸骨が付いており、妖しく光っていた。
「おままごとはここまで……。」
「これ、おままごとだったんです!?」
メリーが驚愕する。これでも苦戦を強いられてたのに。というか、前話でかっこよく言っていたヘルを放置させてしまった……。
「悪魔、天使、魔獣……。夢想の存在である魔法生物が3種……。普通は会うことのない者たちが出会い、死の女王を倒すとき、太古の戦争を終結させる道が拓かれん……。」
「一体何を……。」
ドォオオオオオオン!!
「言っているんですか。」 と続きをいう前に轟音が響く。ヘルは美しくも死人のような少女の姿から、恐ろしい蛾のような異形の存在へとなり果てた。
「……なっ。」
「まるでルオさんみたい……。」
「マギアバーストを無理やり起こしたのか……!」
醜い姿となった死の国の女王は、ボロボロの羽を羽ばたかせ、アンデットたちを召喚した。
「きりがない……!」
倒しても倒してもアンデットが増えていく……。
ソウ……、ワタシは死ノ国ノ女王……。<ヘルヘイム>ニイルカギリ、ワタシガ世界ノルール……。コノ異能モ魔法デアルト定義スルコトモデキナイ……。
頭に直接響いてくる。先ほどの少女のような声ではなく、厳かな女性の声だった。聞いているだけども身体が硬直する。
「それがお主の異能……、ヘルか……。」
名と異能、全く同じだが、それは恐るべき力だった。
蛾の羽ばたき一つで空間が歪み、巨大な竜巻と土煙で視界が奪われる。激しい雷雨となり世界の終りのようだ。
「高位神話魔術、<ラグナロク>を再現させるとは……。」
ウィンデは言葉を失い呆然と立ち尽くしていた。
何故彼は助けないかって? それは助けられないからだ。
3人の戦士たちは大地に叩きつけられ、ぐったりと倒れていた。
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