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あなたにおくる魔法の教科書  作者: 珍獣モフ犬
第二部 迷宮編

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(56) 真打の帰還

 ギチギチギチ……。

 だめだ、全然びくともしない。というか力を込めれば込めるほど、魔力で出来た縄に縛られていく感じだ。

 

 メリーとラジエルが必死にヘルの配下と交戦している中、囚われのヒロインのようになっているルオは縛られている紐を解こうとしていた。普通なら魔力を筋肉に行きわたらせることによる身体強化で簡単に引きちぎることができるが、特殊な紐の用だった。


「天然<ハードスライム製>かよ……!」

 ハードスライムとはスライムの一種で、外内部からの魔力で硬く強固に身体を硬化させる性質を持った魔物だ。その便利すぎる性質で大量乱獲されて現在絶滅危惧種になっており、現在存在する9割は牧場産だとか。そして、人工よりも天然の方が硬化効率が高い。


(金貨1枚以上のやつを贅沢に……! じゃなくて! どうにかして縄をほどかなきゃ! でもどうやって!? 力を込めれば込めるほど縄は頑丈になっていく……!)


「ヘルっっ!! 何故ルオ君を人質にした!!」

「なんでかしらね? 負けてくれたら教えてあげる♪」

「教えてあげないってことですね!! だったら倒すだけです!!」

 視線の先で爆炎と土煙が上がる。光の粒子となって消滅していくアンデット達に構わず、メリーは黒炎で眼前の障害を振り払う。


「はやく……! 早くいかなきゃ!!」

 込める力が増えるほど体に縄が食い込む。


 「くそ! なんで!! 魔獣の馬鹿力なのに……! ん?魔獣?……。そうか! そうだった!!」

 魔法生物は常日頃魔力を放出している。一方友好種(ヒト)は1細胞に1以上ある魔力孔で魔力放出の開閉を行っている。ヒトの世で暮らすルオは魔獣であることをよく忘れることがある。

「落ち着け……。力を極限まで抜いて……。……ふぅ~。」

 ルオは深呼吸をして力をゆっくりと抜いていく。外部からの魔力が途絶え、縄は自然と解いていく……。


「まったく……! 気づくのが遅いわよ!」

 一連の行動を見守っていたヘルは、誰にも聞こえない小声で言い、優しく微笑む。


「?」ヘルと視線が合って一瞬焦ったが、ヘルの表情を見て首を傾げた。


「おわぁあああああああ!!」

 淑女らしからぬ悲鳴が聞こえる。メリーが地面にたたきつけられていた。お気に入りだと言っていたゴスロリ衣装も泥だらけで所々破れている。

「くそぅ!! 我に魔力さえあれば!!」

 ラジエルは小さな身体でメリーの前で庇っている。


「ラジエル! メリー!! 今行く!!!」

 ルオはバルコニーから飛び降りる。

「させないわよ!」

 ヘルが怨霊が詰まった魔力弾を放つ。ルオは顔を少し傾けギリギリで避ける。余裕で地面に着地し、2人の元に走っていく。アンデットの大群がルオに立ち向かうが、

「吠えろ!!<地神鳴り(ぢがみなり)>!!」

 ゴロロロロロロロッッ!!

 大地まで鳴り響くほど雷が一閃する。


「ルオ君!!」「ルオさん!!」

「はは! やはり真打だ!」

 味方陣営?は彼の帰還に歓声を上げる。

 

「結局、私ははずれ者か……。ふふふ、いいわ。元々予定していた人数、何も困ることは無いわ!」

 ヘルは指をパチンと華麗に鳴らし、上級アンデット達を次々に呼び出した。


「ヘル……。」

「真打は帰還した!! さあ!!長くて短い迷宮冒険譚の序章もクライマックス!! 最初の敵はこの私! ヘルヘイムの女王、ヘルが相手をしよう!!」

「望むところです……!」

 

いつも夜遅くに読んでいただきありがとうございます!


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