(54) 一応主人公なんですけど
「天使の中で唯一の別神産、<知の天使>ラジエル……。頭の良さと知識量は天使1と呼ばれてるけど、それ以外はミジンコ以下って聞いてたけど、本当にその通りね。」
「その通りとはどういうことじゃ!? というかミジンコ以下って!!」
「あら、ごめんなさい。ミジンコに失礼ね♪」
「我に失礼ってことが抜けておるぞ。」
ラジエルは地団駄を踏む。ヘルは扇子で口元を覆いながらフフフと笑う。
「……は! 忘れておった!! ルオ君! 無事か!?」
「先に言って欲しかったけど、無事だよ。」
電撃で痛む身体を起こす。電撃による火傷跡が全身にあるほどだが、魔獣の存在力なら数時間で治るだろう。めっちゃつらいけど。
「ちなみに私たちもいるからね!」
「助けにきたです!!」
見覚えのある2人の悪魔の声が聞こえてきた。
「メリー、ウィンデさん……。」
「私は最後かいっ。」
「そりゃお主がマギアバースト時に1番役立たずだったからのぅ。」
「最弱王には言われたくないね!!」
「我はルオ君のプライバシーを守ったぞ!! お主がアワアワしている間にな!!」
「ぐぅううう……。」
ピシャァァアアアアアアアアアアアアアア!!!
ヘルの背後で雷が轟く。
「うるさい。戦士は一人でいい。」
死の女王の魔力による冷気が3人の戦士?達を拒む。
「さっきも言った通り、我はサポーターじゃ。戦闘の専門家ではない。」
「と、言うことは、私たちが戦士ということかな? ヴァルハラ行は却下だけど。」
「あなたは招いていないのだけど?」
「おや? そうなのかい?」
ヘルは招かれざる者をきつく睨む。ヒトならばこれであの世行になるだろう。
「ルシファー、親に反抗してから幾千年……。未だ反抗期が続いている問題児だったわね。魔獣を助ける暇があるのなら、親と仲直りでもしたら?」
「……。」
ヘルの言うことは間違っていない。魔獣は世界の敵と呼ばれ、悪魔公国デーモンズを何度も襲撃した、悪魔たちの宿敵でもある。魔獣を助ける意味などないはずである。
「私は公国と仲悪いけど?」
「は?」
「メリーも公国には一度も足を踏み入れたことないです。」
「うそでしょ?」
例外の存在にヘルとルオは呆然とする。
「世界の敵の1人だとして、それが私の何だ? 世界最強が生後499年の厄災の1柱に負けるとでも?」
ウィンデから魔力の圧がヘルに襲い掛かる。迷宮の空間が歪むほどだ。
「メリーにとってルオさんは命の恩人なのです! 借りを返さない悪魔は悪魔失格なのです!!」
「メリー、ウィンデさん……。」
ルオの目元が眼から出てくる水で濡れる。
「……、ウィンデさえ、ウィンデさえ! 来なければ完璧な舞台にだったのに!!」
ヘルは利き手で顔半分を抑えながら言う。まるで何かに苦しんでいる……。
「ヘル……。」
「舞台……、成程な……。」
ウィンデはメリーの肩をポンッと軽く叩き、後方に回った。
「?」メリーは首をかしげる。
「世界最強が戦えば、物語の面白みが無くなってしまっては困る! よって私は観客になろう!!」
!?
「何を言っておるのじゃ!? くそ悪魔!! 道化の娘に我とメルセリスの2人がかりでルオ君を救出できるわけなかろう!?」
ラジエルはウィンデの脛を蹴りながら怒る。(ノーダメです)
「だいじょう~ぶ、だいじょ~ぶ! ヘルがルオ君をずっと捕まえられるわけがないから♪」
「はぁああああ~!?」
ラジエルは意味不明な発言に眉を顰める。
「明星の堕天使よ、気遣い感謝する……。」
ヘルは扇をピシっと閉じ、バルコニーからラジエルたちの元へ転移した。
「「!?」」
「ラジエル! メリー!」
ルオは2人の元に駆け寄ろうとするが、「人質は動かないで♪」と、ヘルによって紐状の魔力でぐるぐる巻きに縛られ、身動きが取れなくなった。
「では、始めようか!! 死者の国の女王に囚われののヒロインを助けに来た2人の勇者の英雄譚を!!」
ヒロインになってしまった……。




