(49) 適任者
適任者と言ったらやっぱりあいつだよね!!
ドォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンン!!!!!!!
一般の人間が普通は聞くことがないであろう程の爆発音とともに、衝撃波が迷宮の大地をえぐっていく。せっかく上位種に出世したアンデット型エネミーたちも巻き込まれ、真っ黒な液体に飲み込まれていく。
『<サンプル回収>……。不死者や死の概念が存在しない者も対象になってるのか! じゃあ私は救出にいったら終わりじゃないか!!』
『どう考えでもそうじゃが、ここはルオ君とメリーのために心臓たる魔法を犠牲にしてくれ。』
『私の心配くらいしてくれよ!!』
いつも通りの漫才的なやり取りをするが、現在大変危険な状況である。特にメリー。
『メリー!! 聞こえるか!?』
ウィンデは愛すべき馬鹿弟子の名を叫ぶ。
<竜宮城>で入手した魔法具<玉手箱>によって迷宮とウィンデ達がいる現世との時空のズレは解消されている。
「聞こえるです!!」
メリーはルオの元から<玉手箱>を両手で抱えて、廃墟の城の屋根に避難していた。
『ひとまず無事でよかった! ルオ君は!?』
「悪魔も恐れる狂悪な魔力が体中から溢れてて苦しそうです!!」
『メンタルは!?』
「バースト前、いつもより変でしたです!」
『通常の魔獣みたいになってないのが不幸中の幸いか……。』
ウィンデが相手をしてきた魔獣は大体頭のネジが全てはズレてるような性格をしていた。まさに理から狂い外れた存在、ルオはその中間に位置しているが。
「師匠!!」
『どうした?』
「どうやったらルオさんを助けられるです!?』
「メリー……。」
『もちろん分かってるです、あの真っ黒なのに飲み込まれたらメリーという存在も、元になった魔法ですら飲み込まれて消失するということを。……でも、第2迷宮で出会ってからずっと助けられてばっかりです! このまま助けなかったら、誇り高き悪魔として、何より、大好きな好きな人に顔向けができないです!!!!』
メリーは震える手を抑える。齢100歳後半の悪魔はまだ若人である。
『……。分かった、私が行く。』
「師匠!?」
『ウィンデ!? 何血迷ったことを言う!? それなら数日彼の中でシェアハウスをしていた我が適任じゃろう!!』
ラジエルが迷宮サポート緊急システム2を作動させようとキーボードを高速で叩く。(ちなみに1は緊急脱出で3は完全蘇生である。)
『お前が消えたら、全ての魔術が消える!! 今はまだ魔法を誰にも<継承>させてないのだろう!?』
ウィンデはラジエルを、片手で後ろ襟を掴んで中断させる。ラジエルは「離すのじゃ!」と叫ぶが、ウィンデは聞かない。
「ルオさん!?」
ルオはいつもの短髪になった黒髪の好青年の姿から、
鳥、魚、獣、竜、虫、さらには人とアンデットが不細工で歪な混じり方をした、醜い怪物となっていた。
『キメラ……。それの元となった魔法生命の冒涜のみが執行できる応用魔法……。ヒトを辞めたな……。』
『もう私が我がとか言ってる場合じゃないぞ! アレの厄災力は迷宮も飲み込むぞ!?』
『分かってる!!! <傲慢の法>発動! 世界が時空を越えられないのなら、私は時空を越えられる! 世界がキマイラを止められないのなら、私は止められる!!』
たいむあうと……。
!?
感情の起伏のない少女の声が聞こえてきた。声を発するだけで周りに冷気が漂う。
世界最強なんて所詮これくらいね。ワタシには勝てない……。
『誰だ!!私の魔法を遮るものは万死に値する!!』
ウィンデは激怒するが、声の主はどこにも見当たらない。まるで7鍵王の<読書会>のように……。
万死? いいえ、笑止……。死は私のもの、あなたに死を語る権利はない。
『お主は……!?』
「ルオさん!?」
瞬きの間にルオはメリーの目の前から、1階層から消えてしまった……。
え、誰ぇ~~~!?
いつも夜遅くに読んでいただきありがとうございます!




