(35) 竜宮城
ランセティア大陸の東には渦を巻くように並ぶ無数の島々が連なっており、太古の昔から存在する海賊たちの領域となっている。大陸語である<バベル語>の統一時に抵抗した勢力の末裔でもある。独自の文化がそれぞれあり、大陸人が行くことは危険とされている。
竜宮城は妖乱島の近くの海底にあるダンジョンであり、まず大陸人が知ることは無い。
「母が昔話として聞かせてくれたんです。もう1つの世界ともつながり、外と内では異なる時間が流れている海底の城。玉手箱という時間を司る魔導具が眠る場所とも呼ばれているそうです。」
『なるほど、竜宮城か……。この前ラジエルにルオ君の家庭環境について聞いてみたが、君の母君はとんでもない所から来たようだね。<八岐大蛇>は伝説だよ。』
知らぬ間に個人情報を知られ、プライバシーの侵害になりそうだが、今はそれどころではない。
『ウィンデは秘密を守る悪魔じゃから、安心せい。それよりも、今いるダンジョンが竜宮城であることは分かったが、だからどうする?ってなるのぅ』
ラジエルの言う通りだ。竜宮城は付近にも時空のズレを生じさせる力を持ち、攻略しても力は残ってしまう。そのためこれ以降の迷宮も時空のズレが発生しているのが高い。そうなれば休憩なしで過酷な探索となるであろう。
「御伽噺のなかに竜宮城の時空のズレを何とかする方法は無いけど、この特殊の状況ならある程度何とかなるかもしれない。」
「そうなのです!?」
『……そうか、玉手箱か。アレさえ手に入ればこれ以降のダンジョンも時間に気にすることが少なくなるはずじゃ!』
ラジエルはルオの策に気づく。
「元々大陸には無い迷宮がここにあるって言うことは、迷宮群<ニヴルヘイム>の誰かが召喚したっていうことだ。つまり本来の竜宮城のシステムは完全には発動していない。そして、<玉手箱>は元の時間に戻す効果がある。迷宮群の一部となり小さくなった竜宮城なら<玉手箱>の効力が迷宮サイズで効く可能性がある!」
「なるほどです! それで、その<玉手箱>は何処にあるのです?」
「……御伽噺の通りなら、竜宮城に住む姫君からもらうんだけど、20層目にあるのかもしれない……。根拠は無いけど……。」
『<羅針盤型の魔導具>に魔導具を探知する機能があります。ナビシステムよりも消費魔力が高いですが、早く発見することが可能です。』
セバスチャンが言う。
(ポラリス……。それが覇者の遺産の魔導具の名称か……。)
「ルオさん?」
黙っていたルオの顔をメリーがつま先立ちで覗き込む。(ルオの顔には一切届いていないが。)
「あ、ごめん。ちょっと考え事してた。それじゃセバスチャンさん、遠慮なく使わせていただきます。」
ルオは探知機能をオンにした。ポラリスは光、真っ直ぐな光線を20層の方へと飛ばした。
「やっぱ最奥か……。」
『二度手間にならずに済んでよっかたのぅ。ダンジョンボスは今までの迷宮よりも当然強敵なはずじゃ! 2人とも気を引き締めるのじゃぞ!』




