(32) 前代未聞
『ルオ君の言った通り、この第四迷宮と、我たちがいる現世との時空のズレが起きているようじゃの。ま、今はフロアポイントにいるから何とか通信できておるのじゃが。』
「やっぱりか、と言ってもついさっき連絡鳩のアナウンスのおかげで判明したんだけど……。ラジエルの方ではどんな感じだったの? 俺たちの方は通信不可になっていたけど……。」
時空のズレだなんて前代未聞であり、物理とかの科学が苦手なルオにとってはよく分からない。
『う~ん、魔術ではなく魔法による現象じゃから科学的に正しいことなのかは分からぬが、こっちではルオ君がスロースペースになっておったの。しかもかなり遅く。』
「マジ?」
ラジエルの方はより分かりやすい変化のようだった。
『最初はルオ君が急な声変わりをしたのかと思ったが、あまりにも会話のスピードが遅く映像の方もじゃったから、通信機器の故障かと思ってセバスと確認しようとしたら、その後通信不可となったのじゃ。多分あまりにも迷宮内との時間乖離で情報処理が追いつかなくなったのじゃろう。』
「本当に、時間がずれてるんだ。」
(やっぱり何処かで聞いたことがある……。)
『先程、<ダンジョン管理部>と時間のズレについて大まかな仮説を立てたんだが、迷宮内での1日がこちらでは1カ月となる状態だ。』
「「!?」」
ウィンデの仮説に二人は驚愕する
『第四迷宮では、これくらいの時間のズレだ。あくまで仮説だがね。』
「第四迷宮では、ということは以降もですか……。」
『その通りだね、とはいってもこちらもまだ断定はできないがね。』
「土星の老賢者様の仮説なら正解だと思いますがね。」
『!? ……、そうか。もう分かってしまったのか。』
ルオの言葉にウィンデは驚く。
「はい、最初に迷宮攻略を提案したのが彼でしたから。今は数人に絞られましたが断定まではいってないです。許可が必要ですし。」
『彼は別に正体を暴かれても別に気にしないだろうけどね。君の言う通り老賢者の仮説でね、第四以降はより複雑に理不尽になるという。下手をしなくても連絡鳩との通信が回復不可となるかもしれないほどね。』
老賢者が言うのなら間違いないのだろう。彼ほど迷宮を知る人物はいない。
「フロアポイントでは通信が何とかできるということですね。」
『ああ、老賢者に大量の借りをつくってしまったが、第四迷宮の全体像が掴めた。今そっちに送るよ。』
連絡鳩から羅針盤型の魔導具が転送されてきた。
「これは?」
「コンパスというやつですの?」
『第四迷宮を最速で攻略できる、最強アイテムさ。針が指す方向に真っ直ぐに進んでいけばいい。ちなみに私の自費だから気にしないでおくれ。フロアポイント以外では連絡鳩は省エネルギーモードにするようにね。』
「ありがとうございます。」
この魔導具はおそらく水の香が何百個あっても足りないほどの価値だろう。
『愛弟子を守ってくれているからね、くれぐれも手は出さないようにね♪』
「コアの魔狂石に誓ってそのつもりは一切ございませんので。」
「師匠とルオさん、何をしているのです?」
メリーはしっかりと愛されていた。(本人は一ミクロも気づいていないが。)




