(31) 衝撃な事実
<ニブルヘイム>の第四迷宮(海中ダンジョン)以降から時空のずれが起きている。つまり、ダンジョン内と現実世界内で時間の流れが違っていた。
連絡鳩を介した通信ができなくなったのはこのためであった。時間のズレにはまだ対処不可能である。
前記のことが判明したのは、第二層フロアポイントに着いた直後であった。
——第四迷宮<■■■>、第二層フロアポイント——
「何とか無事に着いたな……。」
フロアポイントは洞窟で水に浸かっていなかった。
「はいですの。連絡鳩はどうですの? やはりまだ連絡が……。」
「うん……、さっきと何も変わらず……、うぉ!?」
ルオが連絡鳩を持ち上げて、臀部を確認していると、機械仕掛けの鳩が突然ポポーッと鳴き、ルオの両手の中で金属製の羽を羽ばたかせた。
『エラー対処中、エラー対処中。迷宮と現世での時空のズレが発生、現在の乖離率は低下中。半径数百メートル内にエネミーの存在未確認、安全圏とし現世との通信を再開します。』
連絡鳩の眼が青く点滅し、接続中となった。
「!?……、何とかなったのです?」
「うん、流石はフロアポイントだね。……それにしても、時空のズレって。」
ルオは連絡鳩のアナウンスを気にしていた。
「確か言っていましたです、ウツシヨとズレがそうのこうのと……。それが通信不可の原因?」
「多分そうなんじゃないかな? 時空のズレとか初めて聞いたけど……。」
(海に、時間のズレ……、どこかで聞いたことがあるんだよな。)
ルオは現在の状況に聞き覚えがあった。
『接続完了。』
連絡鳩の眼は点滅し終わった。
『……!? ルオ君!メルセリス! 無事か!』
すぐに聴きなれたちびっ子天使の慌ただしい声が聞こえてきた。ガタンと椅子が倒れた音や、小さな天使以外の声もザワザワと聞こえてくる。
「一等星魔術師ルオ=ノレス、無事です!」
「傲慢の眷属第100位、メルセリスも無事なのです!」
二人は急いで安否を報告した。
『!? っ、ルオ君……、メリー、……本当に良かった……。 おい!ルシファー!セバス! その他大勢! ようやくつながったぞ!』
『メルセリス!?』
小さな天使、ラジエルの次に聞こえてきたのはあのナルシスト悪魔の声であった。いつもとは違い余裕のない声だ。
『ルシファー様! メリーは無事です! ルオさんのおかげで何とか六体満足ですの!』
『そうか……、良かったよ。……ルオ君、ありがとう……。』
ルシファーこと、<金星の魔法使い>ウィンデヘェル=レングミルは大きく息を吐き、安心した。
『ルオ様、メルセリス様、ご無事で何よりです。今からそちらにバイタル測定魔導具を転送するので、健康状態の確認だけお願いします。』
ほんの少しだけ息が乱れているような、セバスチャンの声と共に2つの腕輪が転送されてきた。
『っていうかっ、その他大勢ってなんだ! 僕はココの一番偉いヒトなんだけど!』
「すみません、幻聴が聞こえるみたいです。」
『おそらくモニター室にいる幽霊なのでしょう、塩でもかけておきます。』
『セバスゥ!?』
また雑に扱われてしまうジャック=ルージュ子爵であった。カワイソウ。




