(30) 異変
夜の海は海魔の領域となり、なるべく彼らに見つからないように静かに2層目へと向かう。連絡鳩も水中兼隠密モードへと切り替わり、二人の後を音無く付いていく。なお、ルオとメリーは離れるとドジをやらかして(主にメリー)あらゆる方向にいる海魔に見つかり、ハチの巣になりかねないので身体同士を仕方なく密着させている。(メリーには人間のボーイフレンドがいるらしい。)
1層目から2層目の経由地は石でできた丸い蓋の扉であり、ゆっくりと開けて中に入っていった。
2層目に入り、ルオは辺りを見回した。
「……、ぷはぁ。もう大丈夫だよ、メリー。」
「…………、はぁああ~。すんごく怖かったのですの。主様から海魔についてある程度教えてもらっていましたが、あんなにも怖い存在だなんて……。」
「そりゃ誰だってそうなるよ。俺もまだ心臓がバクバクしてるよ。」
ルオは胸をゆっくりと撫でる。
海魔は魚の姿をした異形の存在であり、未だに魔法生物なのか魔物なのはっきりと分からない存在である。唯一分かることは人類が海に行くと殺意むき出しで襲い掛かってくること、海中では不死であること、夜に活発になることのみである。
「というか、なんでいきなり海になるのやら。ダンジョンは予想外のことがよく起きるけど、海中ダンジョンはあまり無いよ。」
「そうなのですね。慣れているのでてっききよくあるダンジョン形態と思いましたが、ルオさんは海中戦に慣れているんでしたよね。」
「さっき言った通りね。2層目も海魔がいる気配するけど、フロアポイント付近だから1層よりも少なさそうだ。とりあえず、セバスチャンに会話OKなこと伝えなきゃ。」
というか連絡鳩経由で見てるんだから、状況が分かるはず。
と思いながら、セバスチャンに連絡する。が、
「あれ? なんか繋がらない。」
「!? ここにきて故障ですの!?」
メリーは頬に両手をあて、青ざめる。
「いや、ちゃんと起動しているけど、通話ができない。」
機械仕掛けの鳩はしっかりと作動している。一体何が……
「……、何かが起こっているけど、今はとりあえずフロアポイントに向かおう。話はそれからだ。」
「……、そのとおりですね。行きましょうなのです。」
二人は連絡鳩を気にしながら、急いでフロアポイントに向かって泳いでいく。
「う~ん、ダメだ。全っ然分からない。見たところ故障ではないけど、向こうとの連絡が一切途絶えているみたいだ。」
「ぴ、ピンチですの。」
「あぁ、食糧の方はここで何とか賄えるけど、サポーター不在だからな。危険度が一気に跳ね上がったぞ。何としてでも早くこの状況を打開しなきゃいけない……。」
ルオは機械仕掛けの鳩の隅々を見回しながら言う。
そういえば、どうして期限が1年なのだろう。あまりにも長すぎなのでは?
ルオはふと思った。




