(27) 相容れないもの
「ルオさん……。」
「どした?」
「これ……。」
「!?」
メリーが指をさしている迷路の壁を見ると、乾いた血痕が飛び散っていた。状態からして1週間前で、おそらく捜索依頼の……。
「なんか、おかしい……。」
血痕は壁一面に広がっているが、途中で変な途切れ方をしている。約1mほど先の壁に血痕のつづきが付着していた。まるで迷路の壁が移動したかのように……。
「きゃっ! びっくりした……。」
「見つけた……。」
二人はかつて人だったものを見つけた。魔力濃度が濃い迷宮内では<抜け殻>の腐敗が進みにくく、魂がアマリリスの庭に連れていかれた直後のままであった。
「見つけたけど、どうしよう? このまま持って帰るのはちょっと大きいし……。」
「確か、セバスチャンさんに貰った小型収納具がありましたよね?」
「そうだった、それを使うか。」
ルオは収納具のボタンを押し、抜け殻を回収した。
「ルオさんって、こういうのは慣れているのですの?」
「血は苦手だけどね、それ以外なら普通に……。」
ルオにとってクローギヌ遺跡での一件はとうの昔の事になっていた。
「メリーは、悪魔信仰が盛んな魔族の村で百年ほど住んでいたときに、みてしまいましたね。皆叫びながら自身の魔石を貫いて、アマリリスの庭へと……。庭に連れていかれると誰も動かなくなるから、メリーはどうすればいいのか分からなく、途方に暮れていましたの。」
「それは分かる。臭いもするし重いしで運ぶのもめんどくさいからね。」
「そんな時に現れたのが私の運命の人、レオナ君にあったのですの! 当時はまだ小さな子供でしたが、今では立派な男性ですの! どうして結婚しようとしないかが謎ですけどね。」
メリーは目をキラキラと輝かせて、恋人のことを話す。
ルオは何故か頭に違和感のようなものがはしるが、気にせずメリーの恋人話に耳を傾けながら迷路を進んでいった。
「そろそろ夜になるみたいだ、今日はここで休もうか。」
「そうですの! 2つのテントを並べて張るにはちょうどいいスペースですし。」
二人は、もう1つの水筒に入っていたセバスチャン特性のシチューを食べ、就寝した。
——翌朝——
「お、重い、息が、できない……。」
ルオは上に何か重い布のような、しかし少しだけ弾力のある柔らかいものが顔に触れていた。
「ん? ……、きゃぁあああああああああああああああああああああああ!」
少女の悲鳴が耳元で鼓膜がさけるほど響き渡り、スパァンと右頬に大きなダメージができた。
「先ほどは失礼しましたのです。緊急事態でしたのに、いきなり平手打ちをかましてしまって……。」
「それは俺の方もだよ、もっと早くに迷路の仕組みを解き明かしていれば、こんな失礼な事態にはなっていなかったよ。」
ルオは赤くはれた右頬を手で押さえながら言う。
ルオのテントの上にはメリーのテントが載っていた。これらのテントは決して重ねられるような頑丈さはない。メリーはテントの入り口からルオが寝るテントに転がり落ちてきたのだろう。
昨夜テント2つ分ほどのスペースであったはずだが、今ではテント1つ分ほどのスペースでしかない。
そう、この迷路は一日ごとに大きく変わっていくのだ、ルートもトラップも……。




