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自己犠牲英雄ロールプレイを満喫してたら何故か仲間たちが次々とヤンデレ化する件について  作者: 西沢東@『HAO』コミカライズ連載開始!


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大体俺が思いつく技は皆も試してる

 ノースランド流奥義『爆雷剣』。俺の使う『抜刀』と同じく、鞘の内部で爆発を起こしその衝撃で居合を加速、敵を一刀両断する技。


 が、何故俺がわざわざ別名を使ったのかというと理由はシンプル。『爆雷剣』は難しすぎて、それを簡略化したのが『抜刀』なのだ。断じてオリジナルではない、そもそも俺が思いつく程度の策は大体誰もが試していて、失敗したか条件を整えるのが難しいかでやらないだけなのだ。


『爆雷剣』はノースランド流の師範代レベルでもないと十全に使いこなせない。それは人の身で衝撃を有効利用するために、適切な『身体強化』(フィジカルブースト)や風魔術による姿勢制御、斬撃距離を伸ばすための地面への氷魔術など、極めて高度な複数魔術の併用を必要とするためだ。無論鞘内部の爆発を減らせば制御はしやすくなるが、その分火力が落ちる。


 一方俺の『抜刀』はマジックアイテムの魔剣『唖狼頑剣ネガディール』のフル出力を前提としてそういった制御をかなぐり捨て、シンプルに身体能力の高さで爆発の反動を受け止めている。芸術である必要はない、殺せれば剣術としては満点という思想である。


 が、目の前のマールさんは違った。呼吸のテンポが変わる。目は光がないままだが。瞳孔の開き方、体の姿勢、それらが著しい勢いで変化する。そして先ほどまでのマールさんとは思えない、声帯は変わらないが男らしい発音で言葉が紡がれる。


「……『爆雷剣』!」

「!」


 そして次の瞬間、マールさんの体が消え、曲芸じみた技が実行される。鞘から爆発が発生し、同時に腕の関節のみを『身体強化』(フィジカルブースト)。背を押すように風が包み、足元は薄く氷が張り爆発の反動で体を弧を描くように滑らせる。俺には詳細が分からないが、他にも複数種の魔術が同時に、精度良く、問題なく実行されていた。


 俺は回避が間に合わないと判断し、マジックアイテムの魔剣『唖狼頑剣ネガディール』の出力を引き上げ勘で空間を木刀で叩く。幸いにも俺の木刀はマールさんの『爆雷剣』の側面に当たり、軌道を斜め上に逸らした。


「……『迅雷』」

「なるほど、『人工勇者』、伊達ではありませんね」


 続いてマールさんが放つのはノースランド流ではなく、東アネモス流のこれまた奥義。片手で剣を持ち、『身体強化』(フィジカルブースト)と風魔術、そして俺の推測ではあるが雷魔術を使用した肉体の条件反射による加速で、幾重にも突きが放たれる。俺は対吸血鬼戦の時とほぼ変わらない出力の『身体強化』(フィジカルブースト)を起動しながら、その突きを避けていく。


 そしてまたしても、マールさんの様子は変化していた。またしても呼吸、瞳孔、声色、全て別のものに置き換わっている。そして全ての技は超一流と呼んでも良い技量と出力であり、先ほどまでのマールさんの技とは次元が違った。



「意図的に意識を削って器を透明にして、再現魔術の発動抵抗を弱めるということですか」

「……」


 いわゆる儀式の前のお清め、のようなものなのだろう。不要な情報を削ぎ落とし、儀式のための媒体とする。もうここで俺はこのギミックの正体が再現魔術の類であるということは確信していた。


 つまりありとあらゆる英雄、達人の技を組み合わせ再現し、戦う戦士、それを薬物投与と魔術で作り上げる。故に『人工勇者』。


 俺がマールさんの攻勢を身体能力任せで無理やり回避し続けていると痺れを切らしたようなシグノーミさんの声が聞こえる。


「完了です、やりなさい!」

「……承知しました」



 マールさんは足を止め、俺の前で木刀を高く掲げた。一番初めの俺のように。そして彼女の呼吸が俺と同調、いや同じものに変化していき、魔力が溢れ蟲のような異様な形状をした魔力の塊がマールさんの体に纏わりついていく。


 シグノーミさんと俺は満足そうに頷く。そう、これを待っていた。


 俺の寿命を削る魔術は元々吸血鬼の使っていた魔術を模倣したものだ。それを使って戦っていくうちに魔剣を手に入れ、今に至る。


 しかし未だ、自分以外の人類でこの魔術の使い手を見たことがない。天候変化など、命を使う魔術は存在するのに。また、興味を持ってくれた人はいたが習得には至らなかった。


 おかしいのだ。この死が蔓延する世界で、たかだか寿命を捧げれば力を得られるのに俺の知り合いは誰も戦闘で使っていないだなんて。寿命を捧げるというコストが高いとしても、死ぬよりはマシ。俺のように常用するかはさておくとして、切札としては持っているべきなのではなかろうか。


 というかそもそも寿命を消費するなんて当たり前のことだ。病が発生すると知りながら人はタバコを吸うし暴飲暴食する。メリットがデメリットを上回れば皆やっていることなのに、なぜ戦闘ではそれをしないのだ、と思ってしまう。


 だから俺は期待する。俺と同じような人間が出れば俺の功績は霞んでしまうかもしれないけど。それでも戦力不足で人類が負けるよりはよっぽどいい。さあ増えろ使い手、強くなれ人類!


 マールさんは息を吐く。周囲が緊張で張り詰め、俺の心臓の音が大きくなっていく。


 そしてマールさんはついに地面を踏み締め木刀を振り下ろし。




「え……?」


 それはどちらの声だったのだろうか。マールさんの斬撃は途中で止まっていた。彼女の目と鼻、口からどろりと血が溢れる。肌に湿疹が現れて目が幾度もあらぬ方向に動き、止まったまま腕と足をぶるぶると震わせる。


「再現に失敗した……? 解析は完璧のはずです!」


 シグノーミさんも異変に気付き先程までとは違い顔色を変える。が、症状が改善するはずもなくマールさんは更に苦しそうに呻く。


「が、ぁぁぁぁ……」

「どうしましたか!?」

「何が起きているのでしょうか……」


 俺たちの困惑を他所に、遂にマールさんは木刀を手放し体を丸め。最後に一言呟いたのち、試合中にも関わらず大地に向かって嘔吐したのであった。


「……君自身が……擬似的なマジックアイテム……?」




 ……いやほんと、どうしてこうなった?



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