あのゲームで見極めさせてもらう!って何回聞いたんだろ
よくゲームとかでは「見極めさせてもらう!」なんてセリフと共に腕試しの戦闘が始まる時がある。まあ殺し合いの戦闘ばかりだと殺伐としすぎるし、戦闘することでキャラクター紹介も兼ねられるよね、と言う理屈は分かる。
でも現実だと不自然なんだよね。特にこの世界では魔術で殺傷能力が大幅に上昇した状態で手加減がどこまで効くかは術者の腕に大きく左右されるし、腕試しで魔力が減った状態で吸血鬼が来たらどうするんだ、と言う話もある。
というわけで俺は少しカマをかけることにしてみた。
「そちらの『目』に見せるためですか?」
「……っ!?」
それに反応したのはマールさんとシグノーミさん。特にシグノーミさんは自身の赤い杖を無意識にであろうが少し引いた。
なるほど、恐らくは観測系の魔術を宮廷魔術師のシグノーミさんが使い、それを人工勇者のマールさんが何か活用するってところだろう。ただ単純な連携なら吸血鬼相手にするならともかく俺相手に発動する必要がない。また、俺に直接害があるようなものなら万一発覚した時のリスクが大きすぎる。
となるとわざわざ俺相手に使う必要があり、そしてできるだけ早期に、吸血鬼と戦う前に行っておきたいという要素が重なるといえば。
恐らく再現魔術。いわゆるコピー系の能力を持っている場合だろう。
シグノーミさんは少しため息をつき、そしてこちらを睨む。
「つまらない詮索は辞めていただきたい。それに小生達は東アルニティコス帝国からの使者、一介の傭兵に断る権利はありません」
シグノーミさんの言い分にマールさんは顔を顰めるが口を挟むことはしない。というか断るって何だよ、勝手に話を飛躍させるな、単に何をしようとしているか確認しただけじゃん。それじゃあ後ろ暗いことがあるのを自白しているようなものだよ。
当然この言葉に対して、アンリエッタ様は食ってかかる。
「案内されていない場所まで勝手に踏み込んだ挙句、我が伯爵家の客人にそのような扱いをされるとは常識がないにも程があります」
「いえいえ、この戦時に民の苦しみを放置し色恋沙汰に夢中な方ほどではございませぬ」
シグノーミさんの暴言に俺とマールさんは顔を顰めた。そもそも、南方に逃げずこの地に止まっているだけで相当な勇気を持っている。それにいきなり押しかけた挙句民の苦しみを放置、などという言葉は明らかに度が過ぎていた。
「っ……!」
「……?」
が、シグノーミさんの暴言にアンリエッタ様は流石に怒るかと思いきや、押し黙る。それを見て逆にシグノーミさんの方が訝しげな表情をするに至った。
よく分からないがちょっと変な空気になってきたので、一旦リセットしようと俺は咳払いをする。三人の視線が集まる前で、俺は言った。
「私としては問題ございません。今後共同戦線を張るのですから、互いの戦力を知っておくことは信頼関係につながります」
「ですがミナト様、対価が……!」
「手合わせ程度なら問題ありませんよ。ルールは一分経過か、あるいはどちらかの頭、腕、胴体、足に木刀が当たるまで。ただし手合わせですので怪我を残すですとか危険な技は無しということで」
「OK、あたしはいいよ!」
マールさんは親指を立てて笑顔で頷く。そう、これには凄く大きな狙いがあった。俺の予測では、恐らくマールさんとシグノーミさんがやっているのは解析と模倣。再現魔術を使用した技のコピー。
ならば。是非俺の《《寿命を対価にする魔術をコピーして欲しいのだ》》。何故なら、俺みたいな凡人でも英雄になれる、最高の魔術なのだから!




