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自己犠牲英雄ロールプレイを満喫してたら何故か仲間たちが次々とヤンデレ化する件について  作者: 西沢東@『HAO』コミカライズ連載開始!


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お茶会への侵入者

 俺とアンリエッタ様がテントで犬猫と戯れながらとりとめのない会話をしばらく続けた後。少し早い夕飯の時間になる。日が沈み始めると吸血鬼狩りとして戦闘待機しなければならないため、デートはそれまで、という約束であったのだ。


 メイドの手によりペットたちの食事と俺たちの食事が運ばれてくる。パンと焼かれた骨付き肉にスープ、サラダ、水と紅茶とコーヒーと比較的質素な内容であった。まあそれは見た目だけで、実際には肉は柔らかく、野菜はみずみずしい。回らないすし屋と110円回転すしとの違いとでもいうのだろうか。見た目に特筆すべき要素がないのに口に入れると全然違って驚く。


 俺の表情を見てアンリエッタ様は頬を緩める。


「武器の輸入がてら南方より取り寄せた品ですが、お口にあったようで何よりです。しかしミナト様ならこれくらいの物は簡単に入手できるのではないですか?」

「お金はありますが、こういうのを毎日食べると長期の仕事の時に気が滅入ってしまいそうですから。……いや、この言い方は失言ですね、いつも料理を作ってくれている方を下げる意味にも取れてしまいます」

「料理人の方なら素材の違いによる味の差はよくご存知だと思いますので、そう思われて当然、とむしろ受け入れそうですが」

「私が口に出すべきではないという話ですね」


 英雄ロールプレイは難しい。正直本音で言えば傭兵ギルドの飯も携帯食料もビミョー!!!、なのだが、これを英雄ミナトが言ってはならない。いつも笑顔で「美味しかったですよ」じゃないといけないのだ。


 俺はスーパーの棚に機械で作られた食事が無数に並んでいるのに慣れている人間なので、出された食べ物にそれほどありがたみを感じず、ましてやお金を払っている時は対価を貰っているので当然じゃないか、と思うのだが。この世界だと全て手作りかつ戦時中なので二十一世紀的なその考えは全く通用しない。


 というわけで意識していらないことを言わないようにしているのだが、どうしても出てしまう時がある。そういう時はちょっと過剰に反省してる感を出してカバーをするのが俺の常套手段であった。まあそれを聞いてアンリエッタ様は「流石ミナト様……!」と感動していたのでまあ概ね正解なのだろう。


 時間は穏やかに進んでいく。


「しかしデートと言われた時は驚きましたが、いざ来てみれば非常に楽しかったです。お誘い頂きありがとうございました」

「どういたしまして。しかし驚いたとはどういう意味でしょうか、お父様の目をまだ気にされているのですか?」

「勿論です、伯爵家の一人娘に手を出したと思われたら、何が起きるか分かりませんので。まあ実際そのような事実はないわけですけれど、このペットたちが証人ですね」

「あら、これからそのような事実を作ってもいいのですよ?」


 そう言いながらアンリエッタ様は俺の手を掴み、そっと自身の胸に当てようとする。マズイ、セクハラで訴えられる! などと見当違いな焦りを覚えながら俺は手を引き剥がそうとするが、想像以上に力が強い。……この子、そんなに筋肉無いはずなんだけどな。


 アンリエッタ様は両腕で俺の腕を引っ張りながら、何故か泥のような濁った目でこちらを覗き込む。


「それに、デートの本番はこれからです。最後に、大事な相談がありまして。わざわざ依頼の条件にしたのも、こちらが理由です」

「……手を離して下さればお伺い致します、アンリエッタ様」

「……そんなにお嫌いなのですか、わたくしの貴族としての地位が。ミナト様のためなら、トレイター家の娘であるというつまらない経歴など……」

「アンリエッタ様、それ以上口になるのはお控えください。貴族という尊き地位と血を自ら蔑ろにしてはなりません」

「あのような勧告を送る国に、あのようにミナト様に負担を押し付けるような男の血に、どうして敬意を示す必要があるのですか!」


 いかん、地雷を踏んだっぽい。このままだと組長(比喩表現)の娘の胸を触ったという既成事実を作られかねない、かといって無理やり引き剥がすと反動で怪我しかねない。どうしてなのか見当もつかないが、アンリエッタ様は明らかに暴走していた。


 多分トレイター伯爵家で色々あって貴族の立場とかそういうのがどんどん信用できなくなってきたんだろう。まあ真に敬意を払っていない人間はアンリエッタ様ではなく、貴族を暴力団扱いしている俺なのだが。まあ二十一世紀庶民の感覚はさておくとして、この世界で貴族軽視はやばすぎるのでそう言った発言は勘弁してほしいものである。


 俺の抵抗が止まないのを見たアンリエッタ様は遂に立ち上がり、俺に抱きつこうとまでしてくる。彼女の香水の匂いが鼻に広がる。が、万一抱きついているのを見られたら色々やばい。俺も腕を掴まれたまま立ち上がり、不満げに頬を膨らませる涙目のアンリエッタ様から距離を取る。


 この状況をどうしようかと考えていると、ふとテントを叩く音がした。一体どうしたと二人で扉の方を見ると、そちらから先ほど配膳をしていたメイドの声が聞こえてきた。その内容は、俺たちの想定外であった。







「お、お嬢様! 『人工勇者』様と東の宮廷魔術師様が何故かこちらにお見えになりました!」


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