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自己犠牲英雄ロールプレイを満喫してたら何故か仲間たちが次々とヤンデレ化する件について  作者: 西沢東@『HAO』コミカライズ連載開始!


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IFバッドエンド1-A:誰もいないはずのその場所に

 ※今話についてはあり得たかもしれないIFの物語であり、本編には関わりありません。予めご了承ください。また、若干のR15描写がありますので苦手な方はご注意ください。





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『IFバッドエンド1-A:誰もいないはずのその場所に』

ブルック城塞都市付近の人間牧場討伐時に以下の条件を満たすと発生

・ケインの好感度12以上、強い精神変調発生済

・敵対吸血鬼からの警戒度27以上

・人間牧場の侵入時に探知判定に失敗

・仲間を見捨てず救援に向かってしまう





 結論を言えば、人間牧場は『罠』であった。設営中だと思っていた人間牧場は既に完成済みで、内部にはネームドや真祖まで潜んでいる始末。


 ケインたちを撤退させながら戦ったものの右腕に大怪我を負い、失血で朦朧とする意識の中真祖たちを撃退したところまで憶えている。


「ここは……」


 目を覚ますとそこは小さな小屋だった。ベットは上質で柔らかい布からは暖かい匂いがしたが、それ以外は正に山小屋。木で出来た壁に飾り気のない机、井戸から汲んできた水を貯める桶に小さな暖炉。


 まだ体が痛み、思考が上手く回らない。俺はなんとか身を動かそうとして、そして唖然とする。



 両手両足に全く力が入らなかった。




 記憶を蘇らせる。確かにひどい傷だった。しかし回復魔術がある以上、逃げれたのであれば少なくとも全てダメになったということはないはずだ。傭兵ギルドと提携しているトレイター伯爵家の治療魔術師の腕は相当だし、四本全てダメということはないはずだ。逃げ出せたということは少なくとも足は大丈夫なはずではないのだろうか。手足を見ると、確かに幾つもの痛々しい傷はあるが、そのどれもある程度塞がっていた。右腕も外見を見るにそれなりには治ってはいる。つまり、別要因があるということだ。


 服は定期的に着替えさせてもらえているのか、清潔であった。ただし何故か足元の方からは少し生臭い匂いがした。


 外からは鳥の鳴き声と木々の揺れる音が聞こえてくる。砦の中などではなく、相当な山奥のようであった。


「ここは……?」


 そう思っていると、外から足跡が聞こえてくる。小柄な少女のものだ。少女はノックもせず、扉を開ける。そして目を覚ましていたこちらを見て、以前とは異なる淀んだ声を挙げた。





「お、起きたっすか師匠パパ!」

「ケインさん……?」


 見覚えのある少女だった。あの日の撤退戦と同じく、弓矢に軽装の防具。手には狩りの成果である野鳥が握られていた。外見は一見、何一つ変化ない。俺の記憶そのままだった。


 だがその濁った目だけは違った。


「……あれからどうなり、ました、か?」


 まだ頭がぼーっとする。思考も体の動きもまるで1/10くらいの動きしかしない。ケインは少し困ったような顔で、ただそれでも隠すのは面倒だと思ったのだろう、真実を告げた。



「撤退戦は失敗したっす。吸血鬼達の猛攻で傭兵団の大半が死亡、私は師匠を抱えて城塞都市ではなく森に逃げ込んだっす。このあたりは私が昔、狩りをしていたところっすから吸血鬼よりも土地勘があって、無事に撒けたっす。……ただ、この小屋に辿り着いてから数日経った頃には、既に城塞都市は落ちていたっす」

「……」

「恐らく逃げ帰った傭兵の一部が吸血鬼側に寝返ったんだと思うんっす。何があったか実際のところは分からないんっすけど、結果として私が見たのはいくつも煙が上がる城塞都市だったっす」


 最悪であった。いつの間にか気を抜いてしまっていたのかもしれない。このような失態を晒すとは、と頭を抱えようとするがその手が動かないことを思い出す。


「どうして、私の体は……?」


 恐らくケインの答えは、「医療技術が無くて腱にダメージが」「脊髄に強い衝撃を受けて」あたりであるのだろう。外傷が塞がっているのに体が動かないのはそれくらいしかありえない。だが、ケインの答えは全く違った。





「一緒にいたいからっすよ、師匠パパ

「……え」


 ケインは自身の腹を愛おしそうに撫でる。どういうことか、と聞こうとするもまた思考がぼんやりして動かない。ケインは今日の狩りの成果を机の上に置き、手を洗い、そして張りぼてではない、本物の笑みを浮かべる。


 俺が動けない中、ケインは靴を脱いでベッドの上に覆い被さる。ケインは頬を緩めながら、濁流の如き勢いで語り出した。


「あの真祖は言ってたっす師匠が寿命を削る魔術を使ってるって、なら何っすか結局私はどれだけ頑張っても何をしても師匠が先に死んで無意味で無価値な自分に戻るっすか、それだけは嫌っす師匠の弟子という付加価値がないなら自分はただの出来損ないっす」

「……」

「でも知ってるっすよね魔術の原理、情報と対価。マジックアイテムの逆転性、例えば魔力で水を蒸発させるマジックアイテムは、蒸発した水と通常の水を魔術的に繋げる情報を持つから、蒸発した水を普通の水に戻すマジックアイテムとしての効果も持つっす。まあ効果はかなり低いっすし限定的で例外もあるっすけど。つまり、寿命を削って力を得るマジックアイテムは、力を大幅に削る代わりに寿命を伸ばす効果を持つってことっす。あ、大丈夫っすよ、「一部」は効果から外してあるっすから」


 照れくさそうに言うケインを見て俺はようやく今の自分の状態を理解する。ケインの腰には俺の愛用している魔剣『唖狼頑剣ネガディール』があった。あれを使い、俺の思考や身体能力を大幅に制限している、ということなのだろう。


 魔術は収支が取れると効果を発揮しやすい。魔力を使用し炎を生み出すように、肉体の性能を大幅に、それこそ体も起こせず思考もぼんやりになるくらい制限する代わりに寿命を引き延ばすのであれば、収支は十分取れるのだろう。


 俺は魔術に抵抗しようとするが、ぼんやりした脳ではそれも叶わない。ケインは愛おしそうに自身の腹と、そして俺の下半身を撫でる。


「ダメっすよそんなの、師匠パパにはもう子供がいるんっすから」

「……!?」

「私は思ったっす。置いていかれたくないっす、意味が欲しいっす、何か残したいんっす。そこで思い出したんっすよ、そういえばもう子供を産める年だなって。大好きな人と愛し合って、子供を作って育てて、それなら意味のある人生じゃないっすか」

「……そ、れ、は」

「既成事実が出来れば、もう師匠は拒めないっすよね? だっていい人っすから。あ、一人目の時は意識がない時でごめんなさいっす、でも許してくれるっすよね、師匠、いい人っすから」


 そう言いながら、ケインは俺の首元に手を伸ばし少しだけ力を加える。俺はそれだけのことで息が止まりそうになり、必死に抵抗しようとするが体は動かない。


「師匠、許してくれるっすよね?」

「……ぐ、ぅ」

「許してくれるっすよね!!!」

「がぁっっっ、、、ゆ、る、し、ま、……す」

「ああ良かった、師匠ならそう言ってくれると思ったっすよ! もう命を削って戦うのはやめて、一緒に楽しく暮らすっす!」


 ケインが俺の首元から手を離し、俺は荒い息を吐く。一体どうしてこうなってしまったのか。何があったらここまで歪むのか。あの明るい彼女はどうしてこうなってしまったのか。


 ケインは明らかに精神的に追い詰められて暴走している、歯止めが効かなくなっている。自身の立場に酔っている。


 だが。他人の意思を尊重しましょう、なんて言葉は成熟した社会の中で、様々な他者やシステムの元で成立するものであり、この山奥にはそのようなものは何一つない。


「じゃあ師匠パパ、二人目を作る練習をするっすよ!」


 俺の服がケインに無造作に脱がされていく。俺はケインの欲情した澱んだ目を見ながら、どうしてこうなったと深く後悔したのであった。

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