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日本人は働く必要が無くなりました。  作者: Katz
第1章 田舎暮らしに憧れて
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1-26. 申入

前話のまとめ:千尋と愉快な仲間達

 最強談義に花が咲く武術家3人に達成が声を掛けた。


「盛り上がっている所を悪いが、今日は折り入って相談があってな。この後時間はあるかな?」

「あら、タッちゃんからお誘いなんて嬉しいわ♡」

「そんなんじゃない。それとタッちゃんはやめてくれ」


 達成は苦虫を噛み潰したような顔をしている。どうやらいつもの光景のようだ。


「冗談よ♡ さて、今日の修行はここまでにしましょう。私達は汗を流してから行くから、タッちゃん達はお部屋で待ってて♡」


 結局タッちゃん呼びは直らない。文句を言おうとした達成を置いて、3人はさっさと勝手口に行ってしまった。


 溜息を吐く達成とそれを興味深く見ている克樹を、控えていた秘書ロボットの1体が案内する。客間に通されると達成はまた溜息を吐いた。


「はあ… あの婆様は…」

「主人が申し訳ありません」

「君が謝る筋じゃないさ」


 秘書ロボットまで思う所があるようだ。


 ☆ ☆ ☆


 お茶とお菓子を頂きながら待っていると、しばらくして3人の女性がやってきた。


 3人の、女性?あんぐりと口を開けて呆然としている克樹を見て、1人を除いて皆ニヤニヤしている。


 大きな胸を強調したピンクのフリフリワンピースに三つ編みお下げが可愛い荒くれ者のような真澄は特徴が目立つのですぐわかる。容姿の表現が矛盾するようだが事実なので仕方が無い。意図してやっている節もある。あるいは、自分に注目を集める事で秘密プロジェクトの成果である師匠から目を逸らせる目的の可能性もある。と、克樹は自分を納得させようとしていた。


 化粧とお洒落を決めた妙齢の女性が虎江であろう。土砂崩れを起こしそうな厚化粧では決してなく、ナチュラルメイクで上手に飾ったお姉さんにしか見えない。最初から20代と思って見るならば、ごく普通の若い女性だ。特徴が無い事こそが恐ろしい。


 3人目は初対面、…ではない。見覚えがある。恐る恐る克樹は聞いてみた。


「え~と、千尋さん?」

「うん。何か?」


 真顔で「何か?」と来たものだ。これはごく普通の事なのだろう、千尋にとっては。失礼にならないように克樹は言葉を選ぶ。


「え~と、その服、良くお似合いですね…?」


 疑問形になってしまった。


「ありがとう。似合うと言われたのは久し振りだ。嬉しいよ」


 千尋が綺麗な澄んだバスボイスで礼を言った所で、遂に3人が声を上げて笑った。


「いや~、千尋君の女装を初めて見る人の反応はやっぱり面白いね~」

「千尋君はね、女装趣味なんだよね♡」

「別に趣味という訳では… 自分に一番似合う服を選んだらこうなっただけです」


 千尋は澄ましてお茶を飲んでいる。女性的な美しい所作が、実に絵になっている。


 それから暫く続いた女装談議が一段落した所で、達成が本題を切り出す。


「実はな、タリ山の事なんだが」

「うんうん、あの山を継いでくれる人が現れてくれて本当に良かったわ。カッちゃん宜しくね♡」

「僕はカッちゃんですか…」


 自分より()()()()()の人に対して否定の言葉は言い難い。達成は眉をひそめてくれたが、克樹は諦めて話を進める事にした。


「タリ山の中に家を建てる予定なんですが、その過程をブログに載せようと思うんです。それでネタの1つとして、地面を覆う部分に関してはコンクリートではなくて三和土たたきを使いたいと考えまして」

「三和土と言うと、日本の伝統技術のアレかしら?」


 虎江も知っているようだ。


「そうです。土と石灰と苦汁を混ぜて叩いて締めるんです」

「そうね、私の実家でも使っていたから、良く知ってるわよ」


 虎江の言葉からハートマークが消えた。


「その、叩く作業に関して、武術の技を応用できないでしょうか?」

「う~ん…」


 虎江は腕を組んで唸った。


「不躾なのはわかっとるんだが… やっぱり難しいかな?」


 達成も言葉を添えてくれたが、虎江は難しい顔を崩さない。

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