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日本人は働く必要が無くなりました。  作者: Katz
第1章 田舎暮らしに憧れて
24/32

1-21. 構想

前話のまとめ:お兄ちゃん

 克樹は、もりではなくひなたを連れて、朝から映画を見に行った。選んだのは甘ったるい恋愛映画。克樹にしては珍しい、というよりも初めてだった。何となく気分で選んだが、何となく眺めている内に、何となく終わってしまった。


 陽を向かいに座らせて昼食を取り、食べ終わったらまた映画を見た。ラブコメだ。普通なら笑える場面で、克樹はぼんやりしていた。映画の後はクレープを食べて、そしてまた映画を見た。ドロドロの愛憎劇。夕食の後は、派手なアクションが売りの恋愛冒険活劇を見た。


 無茶苦茶な順番で恋愛映画ばかり梯子して一日を過ごした克樹はとても疲れて、夜はすぐに眠りに落ちた。


 そんな、何だか良くわからない過ごし方をして3日が経ち、克樹はようやく再起動する。


がみさんの事は、すぐには結論が出ないな。申し訳無いけどじっくり考えさせて貰おう」

「そうね。この手の問題は、先送りして忙しくしてる内に答えを見つける事も多いんじゃないかな」

「そうか、そう言う事もあるかもな… 陽にも心配を掛けたけど、とりあえず再起動するよ」

「再起動するならもう仮想デートの相手をしなくていいよね。私が家事で守が秘書の分担に戻って良いかしら?」


 陽は、かつての乳母ロボット(ばあや)をなぞって、砕けた口調に調整している。会話はずっとしていたはずなのだが、久し振りに陽の言葉を聞いたような気がする。僕はようやく正気に返ったのかな、と思いながら克樹は頷いた。


 ☆ ☆ ☆


 守がA2サイズの大型タブレットを出した。先日訪れたタリ山中腹の広場が、守の視覚記憶を元に地図化されて画面に表示される。克樹は守と相談しながら構想を練る。


「う〜ん、とりあえず丸太小屋の広さはおよそ20坪程度と考えると、ざっと5間四方、9m位か」

「そうすると、この位の大きさですね」


 克樹の呟きに合わせた正方形を守のAIが地図の上に表示した。克樹はそれを指で動かして広場の隅の方に移動させる。


「母屋は、倍の10間とすると100坪…ちょっと広いかなぁ。少し削って車庫をくっ付けて…」

「こんな感じになりますか」

「いや。建坪を半分にして、2階建てにしよう。50坪に隣接して車庫をくっ付けて、車庫の上はベランダにしたらどうかな」

「とすると大体この位の広さになります」


 そう言って守は地図の上に長方形を表示させた。克樹はそれを動かす。


「やっぱりももたり家の御先祖様にも庭を見てもらいたいな。墓は動かさないとすると、母屋はこの辺かな?丸太小屋はやっぱりこっちにした方がいいか」

「丸太小屋のトイレと風呂はどうしましょうか」

「露天風呂!露天風呂にしよう!小屋の外に作って、渡り廊下で小屋と風呂をつなごう!」


 露天風呂も憧れてたんだよな。湖に臨むように配置。これは譲れない!と叫ぶように、克樹は風呂を地図に配置した。丸太小屋も、それに合わせて少し動かす。


「風呂と言えば、選択肢としてはサウナもありますが、どうします?」

「サウナかぁ、それも捨て難いなぁ。う~ん」


 守の言葉に、克樹は腕を組んで唸った。


 例えば、十人は入れるように作って、村の人達にも利用して貰えるようにする。

 そうすれば村人との交流の起点になるだろう。

 となると露天風呂の大きさも合わせたい。

 燃料が多めに掛かるが、マグネシウムの備蓄小屋を大きめに作っておけば何とかなるだろう。

 しかしこうなると、設備として脱衣所やトイレも隣接して作りたい。

 トイレはともかく脱衣所については十人分の広さが必要だ。

 男女別に分ける必要もある。

 風呂上がりの団欒の場所もあった方が良いだろう。

 ……


 気付いたら結構な施設となっていた。


「なぁ、守… 夢を膨らませるのは良いけど、これ…」

「少々調子に乗り過ぎたようですね」

「うん。あの広場が、これだけで埋まりそうな勢いなんだけど…」

「克樹さん、どうします?」

「どうするもこうするも、なぁ。縮小せざるを得ないよなぁ」


 少々やり過ぎたようだ。

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