1-16. 出会
前話のまとめ:タリ山の中腹で本家の墓を見つけました。
更に上へ山道が続いていた。最後まで登ってみると、山頂に出た。結構な眺めだ。背中には山脈が迫ってきて、正面には湖が広がっている。右と左にはずっと田圃が続いている。
眺めを楽しんだ後は守に案内ドローンを呼んでもらって、山頂から真っ直ぐ日足家へ戻った。
縁側でお茶を飲んでいた達成が声を掛ける。
「おう、戻ったか。昼も食べるだろう?」
「でも朝御飯も御馳走になったのに…」
「はっはっは、良い若い者が遠慮なんかするな。いいから食べていきたまえ。それから午後、少し付き合って欲しいんだが、時間はあるかね?」
「はい、大丈夫です。どちらへ行くのですか?」
「なに、克樹君の歓迎会に来られなかった人がいてな。今日は居るようだから、挨拶にな」
雅美の手作りご飯に舌鼓を打った後、車で出発。10分程走った所にその家はあった。
車が停まると、ややあって女性が出てきた。
「あぁ、村長さん、いらっしゃい」
「おう、今日は。連絡した通り、村の新しい住人を連れてきたぞ」
「百目木克樹と申します。宜しくお願いします」
女性は克樹をじっと見詰めた。雰囲気のあるなかなかの美女、ではあるが、少し疲れたような表情をしている。
「克樹君、こちらが多母髪百合さんだ。ちょっと体調が思わしくなくてな、一昨日の歓迎会には出席できなかったんだ」
「…多母髪百合です。玄関先で立ち話もナンですし、中へどうぞ。お茶を出しますよ」
「うむ、いや、済まんが儂はこの後ちょっと用事があってな。克樹君はゆっくりさせてもらうと良い。それじゃ、また後でな」
達成はそう言って、百合のお茶の誘いを断って行ってしまった。いきなり置いてけ堀を食らって、何が何だかわからない克樹は呆然としている。
「うふ、村長さんったら気を使ったのかしら。え~と百目木君だっけ、どうぞ入って」
「済みません。お邪魔します」
克樹が謝る必要は全く無いのだが、ついつい謝りたい気分になってしまうのだった。
家事ロボットが出したお茶は、日足家とは違う味だ。克樹はしみじみと味わう。
「美味しい… ハーブティーですか?」
「うふ、お口に合ったようで良かったわ。カモミールとラベンダーとミントをブレンドしたのよ」
「ハーブのブレンドですか、あんまり見かけませんね。と言っても僕の知ってるのはファミレスのドリンクバー位ですけど」
「あら、ファミレスは良く行くの?」
思わぬ所に食い付いてきた。それからしばらく、ハーブティーを飲みながらゆっくりと話をした。百合は町の話を聞きたがった。克樹自身の事も色々聞いてきた。
「そう、百目木君は高校を卒業したばかりなの。それで、どうしてこんな農村に?」
「夢がありまして。蝶が好きなんですよ。蝶の舞う庭を作りたくて、土地を探したんです」
「あら、夢を追う男の子なのね。格好良いわねぇ」
「いやぁそんな」
美女に褒められて、克樹は照れた。
「ねぇ、私の事は村長さんからどう聞いているの?」
「いえ何も。そう言えばこないだ、村に馴染めなくて心配な人が居ると聞きましたが、もしかして多母髪さんの事でしたか?」
「そうね、それは私の事ね。そうかぁ…」
それから百合は、突然、予想外の爆弾を投げた。
「ねぇ、お付き合い、してくれないかしら?」




