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日本人は働く必要が無くなりました。  作者: Katz
第1章 田舎暮らしに憧れて
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1-8. 説明

前話のまとめ:克樹は蝶について熱く語っています。

 自分の夢を語り出すと止まらない克樹は、一人で喋り続けて既に15分も経っている。夢中になってしまって途切れる様子を見せない。後ろに立って控えていたもりが克樹の肩を叩いてそっと囁いた。


「克樹さん、克樹さん」


 我に返った克樹は、真っ赤になって謝った。


「あ、す、すみません。つい夢中になりまして」

「いやいや、いいんだ。君の思いは良くわかった。つまり、あの山に住んで、蝶を沢山呼び込めるような庭を作りたいと、そういう事かな?」

「はい!その通りです!」


 克樹の元気な返事を聞いて、達成は腕を組んで目を瞑った。雅美はゆっくりとお茶を飲んでいる。その様子に、克樹は段々と不安になってくる。


「あの…」

「…うん。君の真摯な思いは良くわかった。ただ、それとは別に、聞いておきたい事がある。君は田舎で暮らした事があるかね?」


 田舎暮らしの経験がある…とは言えない。しかし、毎年夏休みと冬休みの2回、1週間位は似たような農村で過ごしている。伯父さんが田舎で畑を耕す暮らしをしていて、いつも招待してくれるのだ。都会から離れた暮らしの良さと不便さ、人間関係の煩わしさと有り難さ、そう言った事を克樹は伯父さんから教わっていた。


 その話をすると、日足夫妻は少し安心したようだった。


「そうか。すると、田舎暮らしの悪い所も知っていて、その上で君はここに住みたいと?」

「はい。そのつもりです。ただ、僕は人付き合いが苦手でして、その点で色々ズレる所があると思いますので、そういう所は一つ一つその場ではっきり指導していただきたいと思ってます。抽象的な言葉で遠回しに言われても気付けないので、キツい位の言い方で上からビシッと言っていただいた方が助かります」

「ふぅむ。君も覚悟は出来ているって事か」

「あなた。いいんじゃないかしら?」


 湯呑みを受け皿に置いて、雅美が言った。売りに出していた山であり、真面目に山を管理してくれる人物なら否やは無い。達成が頷くと、今度は雅美が話し始めた。


「実はねぇ」


 3年ほど前、この村に、田舎暮らしに憧れた人が来た。

 別に訳アリとかそういう事では無さそうなので、軽い気持ちで引き受けた。

 しかし残念ながら、憧れだけではどうにもならない部分があったようだ。

 引き篭もりのようになってしまった。

 日足夫妻も心配して、話を聞いたりもしたのだが、やはり上手くいかない。

 事ここに至っては、町に戻って仕切り直した方が良いのではないかとアドバイスもした。

 本人もそれはわかっているのだが、憧れた暮らしを切り上げるとなると、何か切っ掛けが欲しい。

 そんな訳で、今は家に閉じ籠もってしまっている。


「そういう事があってねぇ。ちょっと心配だったもので、その辺のお話も聞きたかったの」

「なるほど、そうでしたか」

「それでね。申し訳無いんだけど、もし村に来るなら、その人の話を聞いてあげて欲しいのよ。解決するかどうかは別にして、新しく町から来た人と話せば気持ちが晴れるかも知れないし」

「わかりました。僕もまだ成人したばかりで、何が出来るかわかりませんが、世間話だけでいいなら」


 そんな話題に飛んだりしたが、ひとまず山は売ってくれる方向で話がまとまった。ただ、正式な契約の前に、来週もう一度来て欲しいと達成が言う。山をどうするのか、もう少し突っ込んだ話をしたいとの事だった。

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