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「イオリ……どうして?」
アヤが見えない声に向かって訊いた。
『あの時、命からがら逃げ出してな』
スピーカーからイオリの得意気な声が聞こえる。
イオリは爆破装置を一時停止させた。
だとしたらサキトが爆破装置を起動させた部屋にイオリはいる。
確か、あそこには監視カメラのモニター等があった。
「イオリ、今から助けに行くからな、待ってろよ!」
サキトが言った。
『来るな!』
イオリが言う。
「どうして?」
サキトが訊く。
『俺は、肩を噛まれてる。ヨウスケさんの件があるだろ。噛まれたらああなるんだ』
イオリが言った。
「そんな……」
サキトが呟くように言った。
『良いか?よく聞け。二人がいる部屋の前には『やつら』はいない、安心しろ。部屋を出て左に曲がれそして突き当たりまで行って次は右だ。そしたら非常脱出口がある。嬉しいことにこっちにある地図ではその脱出口から俺らが乗ってきた船は近い。二人が部屋を出て10分後に爆破装置を再起動させる。再起動させてからの残り時間は1秒だ』
イオリが説明した。
「でも……」
アヤが何かを言おうとする。
敷かし、イオリがそれを遮った。
『良いから行け!!俺が俺じゃ無くなる前に!!』
「行こう」
サキトがアヤの手をとった。




