ドッスン!ドッスン!
ギルドに行きそこで正式に依頼を受けた三人は木々が生い茂る山の中を歩いていた。
山の奥から金属を擦り合わせるような音が響いてくる。三人はその音がする方を目指していた。
音の主は直ぐに見つかった。
山の中を悠然と歩く巨大なトカゲ、そして何よりその鱗が金属の様な光沢を放っているのが特徴的であった。
「あれが依頼されたアーマーリザード?」
「そ、硬い鱗に覆われてて並の攻撃じゃびくともしない厄介な奴。その分報酬額も高いし素材も高く売れるしで美味しい魔物だ!」
アテムは楽しそうに解説しているがデイジーには懸念点があった。
「で?どうやってあれを倒すの?」
「本来は魔導士が倒すんだよ。雷落としたり、氷漬けにしたり」
「うーん、刀を持てたら装甲ごと真っ二つだったけど今はフライパンだからなぁ」
ムラマサは残念そうに腰のフライパンを見た。確かにあれをフライパンで倒すのは難しいだろう。
そんな発言を聞いてアテムはやれやれといった表情をしながらムラマサの肩に手を置いた。
「おいおい、ムラマサ……いや、ムラマサちゃんよぉ」
「なんだ?ムラマサちゃんって」
「君も成長しただろ?今の君ならフライパンでアーマーリザードくらい倒せるさ。なんてったって最強の武人になるんだろ?」
アテムはニヤリと笑みを浮かべたが流石にそれは無理があるだろうとデイジーは思っていた。しかしムラマサの反応は違かった。
「確かに!フライパンも手に馴染んできたし行けるかも!」
「そうだ!行ったれー!」
ムラマサはアーマーリザードに向かって走り出した。勝算は無い。ただ内に漲る根拠の無い自信だけがムラマサを突き動かした。
アーマーリザードはムラマサに気付いていないのかそれとも気にも止めてないのか分からないが微動にしない。
ムラマサは飛び上がりフライパンを抜いた。
「うおおおおお!!花鳥流!鷹百合!」
目にも止まらぬ速さでフライパンが振り下ろされた。最強の武人を目指すだけのことはある。
ガキキキーーンっと激しく金属がぶつかり合う音が山中に響いた。少し離れた位置にいたデイジーも耳を塞いでしまう程の爆音である。
そして肝心のアーマーリザードとはいうと全くの無傷であった。
「ギガガアアア!!」
イラついたのかちょっかいをかけてきたムラマサに向かって尻尾をブンブン振っている。
ムラマサは尻尾を避けながら手をプルプル震わしながら帰ってきた。
「やっぱ無理だわ!腕が痺れた!」
「当たり前でしょ!それよりどうするの!アイツこっちに来てるわよ!」
ムラマサの攻撃は効いていないがよっぽど不快だったのかアーマーリザードはこっちに向かって怒りながら突っ込んでくる。
デイジーは飛んでいるので問題無く木の上へ避難したがムラマサはアーマーリザードに追いかけ回されている。
「こっちに誘き寄せてくれ!」
木の上からアテムが叫んでいる。そういえばアテムは途中から姿を消していた。どうやら一人で木の上に登っていた様だ。
「何か考えがあるんだな!」
ムラマサはアテムを信用しているのか直ぐに指示に従った。
ムラマサがアテムが上っている木の下にアーマーリザードを誘き寄せ、それを確認したアテムは木から勢いをつけて飛び降りた。
「よし!喰らえ!」
アテムは指輪を一つ外した。するとアテムの体はみるみる内に石化して、一つの石像になってしまった。
「石になった!」
デイジーが驚いたのも束の間、石像になったアテムはアーマーリザードの背中に勢いそのまま突っ込んでいった。
森の中に激しい衝突音が響き渡った。
「グガガアアアァァァ!!」
アーマーリザードは悲鳴を上げた。アテムが突き刺さっている箇所は凹み出血が見られる。
「すげーぞアテム!そんな技があったなんて!」
傷一つ付けられなかったムラマサはアテムの攻撃に感動していた。
アテムは完全に石化しているがズズズと鈍い音を出しながらも少しづつ動けている。どうやらアテムの石化の呪いは全く動けなくなる訳ではなく、ゆっくりながらも身体を動かせるようだ。
そうして再び指輪をはめ直すとアテムの石化は解けて元の姿に戻った。
「よし!もう一回だ!」
アテムは木をのしのしと登り再びアーマーリザードの真上に飛び降りた。そして石になりアーマーリザードの背中に激突する。その度に鈍い音と悲鳴が山に響き渡った。
「いいぞアテム!その調子!」
「まだまだ!」
ムラマサもアテムもノリノリだかその様子を冷ややかな目でデイジーは見ていた。
——これがA級に最も近かった最強パーティの戦い方?
方法はともあれ依頼を無事に終えて宿に戻ってきた三人を宿屋の親父が笑顔で出迎えた。
「ありがとうよ!これで安心して山に入れる」
「こっちこそ報酬がたんまりでご馳走さんです!」
アテムは満面の笑みでパンパンになった財布を見せつけた。
「でもどうやってあの魔物を倒したんだ?見たところ魔導士じゃなそうだが。宿からでも凄い音が聞こえてきたぞ?」
「こう見えても一流の冒険者ですから」
キリッとカッコをつけるアテムとその後ろでうんうんと頷くムラマサ。自信たっぷりの二人を見る親父は明らかに二人に対しての態度が変わっていた。
「そうかいそうかい!やっぱりB級ってのは凄いんだな!」
「はーはっはっは!なんのなんの!」
高らかに笑うアテムにデイジーはあえて何も言わなかった。




