お金を稼ごう
ムラマサと無事に合流したアテムとデイジーだが他のメンバーとは相変わらず連絡が取れなかった。デイジーの依頼は期限があるので連絡は取れないが三人はメンバーの一人がおそらくいるであろう街に向かう事にした。
今はその街に向かう途中にある小さな村に着いたところである。
馬車から降りたアテムは身体をほぐす為に大きく伸びをした。
「ふー!さて、今日はこの街の宿に泊まるか」
「もう?まだ昼過ぎくらいよ?次の街に行きなさいよ」
デイジーが空を見ると太陽はまだまだ頭上にあり、この後直ぐに別の馬車に乗り次の街に行くつもりであった。
「次の街まで結構あるから今日はここまで。夜の街道は危ないからね」
「むー、それなら仕方ない」
デイジーを説得に成功し、三人は村をぶらぶら回り宿を探した。
「お!このフライパン良さそうじゃないか?」
「いいんじゃないか?イケてる!」
ムラマサは店先に出ているフライパンに目を奪われたがデイジーにしてみればフライパンの良し悪しなんて分からない。それはアテムも同じの筈なのに何がイケてるのか。
少し歩くとかなり年季の入った宿が目に付いた。三人はその宿に入ると受付には不機嫌そうな親父が座っていた。そんな親父にもアテムは気にせず話しかけた。
「こんちわー今って部屋は空いてる?」
「空いてるよ。宿代は一人銅貨二十枚だよ。夕食は別料金だ」
無愛想な接客だが冒険者は宿代の安さと屋根さえあればそれでいいので二人は気にしなかった。
アテムとムラマサはそれぞれの財布を見た。二人の財布の中には銅貨が数枚しか入っておらず、わざわざ数えるのが馬鹿馬鹿しいくらい見た瞬間から足りないのが分かった。
アテムはキュッと財布の紐を縛ると「野宿でもするか」と言い、爽やかな笑顔で振り返った。
「アンタ達仮にもB級冒険者なんでしょ?なんでそんなにお金が無いの!」
怒るデイジーにムラマサは堂々と答えた。
「俺は武人だからな。宵越しの金は持たない主義だ。金が必要ならその時になんとかする」
「じゃあアンタは?」
「僕はアクセサリーを揃えるのにこれまでの全財産を費やしたからすっからかんだよ。それにこんな状態だったから高ランクの依頼も受けれなかったしね」
「ぐぐ」
二人の言い分を聞いたところでお金が降って湧いてくる事はない。仕方なくデイジーはお金を稼ぐ事に同意した。
「それじゃあギルドの依頼を受けながらこの街に数日滞在するか」
さも当然の様にこの街に留まることを決めたアテムの発言をデイジーは聞き捨てならなかった。
「ええ!明日には街を出るんじゃないの?!」
「稼いだ金は食い物を買ったり宿代になったりするから。馬車代も必要だし。だからここで少し稼がないと」
デイジーはお金のない精霊の森で暮らしていたので金銭感覚が全く無い。
「人ってのはお金が随分と掛かるのね……仕方ないわね。じゃあ早く出ましょ」
三人が出ようとすると宿屋の親父が後ろから声を掛けた。
「アンタらB級冒険者なのか?」
「そうだよ?凄いでしょー?」
アテムは振り返り答えた。
アテムの姿を改めて確認した親父は本当にB級冒険者なのか訝しんだ。後ろのムラマサも見てみるが腰のフライパンが気になっているのか分かる。
相手を間違えたかもと親父は後悔したがとりあえず話してみる事にした。
「なら街の外に出る魔物を倒してくれないか?」
「それってギルドに依頼を出してる?」
「出してるんだがいつまで経っても誰もやってくれないんだ。何でもB級じゃないと出来ないとか何とか」
親父の発言に冒険者のアテムとムラマサは色めき立った。
「うひゃー、って事は報酬もたんまりか!いいじゃん!いいじゃん!」
笑いながら小躍りするアテム。
「もしかしたらその依頼だけで足りるかもしれねぇ、さっきの店でフライパンも新調しちゃうか!」
まだ報酬の額も分からないのに皮算用するムラマサ。
「じゃあその依頼を受けなさい!そこ踊らない!」
二人をせっつくデイジー。
そんな騒がしい三人を親父は面倒くさそうに見ていた。
「何でもいいからよろしく頼むよ」
「任せなさい!」
全く依頼の内容を知らないままデイジーは承諾してしまったが二人は特に反対もせず意気揚々と宿から出て行った。




