魔法都市にやってきた
細々と依頼をこなしながら旅をしてきたデイジー達は遂に目的地に辿りついた。
魔法都市マギリカ、大陸の全ての魔法が集まると噂される巨大魔法都市。多くの魔法使いが魔法の研究と研鑽をする為にこの街を目指してやってくる為、この都市の人間のほとんどが魔法使いか魔法に関係する仕事に就いている。
「ここが魔法都市……凄い大きな街ね」
デイジーは目の前にそびえ立つ建物の数々に圧倒されていた。これまで訪れたどの街よりも広大で建物も見上げなければ全容が見えないくらい大きかった。道行く人も多く、通りは魔法使いでごった返していた。
「俺も初めて来るがすげーな王都並みにでかいな」
これまで魔法に縁がなかったムラマサは初めてマギリカに訪れたのかデイジーと同じく感嘆していた。その様子をアテムは微笑ましそうにニコニコ眺めている。
しかし感心しているばかりではいられない。この街に来たのには理由がある。
「それでここにそのメンバーがいるんでしょ?」
デイジーの質問に
「多分」とアテムが「おそらく」とムラマサが端的に答えた。
「何で言い切らないの!ここにいるって言うからわざわざやって来たんでしょ!」
プリプリ怒るデイジーに二人は悪びれもせず淡々と答えていく。
「この街の魔法学園に在籍してるって話してたからいるとは思うんだけどねー」とアテムが信憑性があるのか無いのか不確か情報を言い。
「あれ?卒業したんじゃなかったか?それとも休んでいるとかだったか?」とムラマサがその情報の裏付けにならない不確かな記憶を披露した。
「何でそんなふわふわした答えなのよ。アンタ達仲間だったんでしょ?」
かつてのパーティメンバーの事をあまりにも知らない二人にデイジーはイライラを募らせていた。
そんなデイジーをまあまあと宥めながらアテムは弁明する。
「みんなそれぞれの目的があってパーティを組んでただけだから。あんまり自分の事を話さなかったの。それに冒険者に過去の事を聞くのは駄目だから。どいつもこいつも明るい道を歩いてきたわけじゃないからさ、特に冒険者になる様な奴は」
「アンタ達よくそれでパーティとしてまとまっていたわね」
「みんな実力者だってからね。それぞれの役割をしっかり全うしていたのさ」
形はどうであれパーティとして機能していたのらデイジーは文句はない。問題は本当にこの都市にいるのかだ。こんな大きな都市を闇雲に探しても見つかるわけがない。
「それでどうするの?ギルドに行くの?」
「いや、ギルドを通しても返事がなかったって事はそもそもギルドに顔を出してないんだろ?だから学園に行こう!」
「その方が手っ取り早いか!」
「ふーん、まあ会えるなら何でもいいわ」
アテムの考えにムラマサが乗っかりデイジーはそれを承諾した。
この時デイジーは勘違いしていた。アテムが学園で人を探す方法が何かある筈だと。
学園に着き三人は堂々と門を潜るとアテムは口に手を添え大きく息を吸った。
「ミネルバちゃんいますかー!アテムとムラマサでーす!会いに来たよー!」
学園の正門で突然叫び出した不審者に生徒達は蜘蛛の子を散らす様に一斉に逃げ出した。
突然大声で知らない人が叫んだら誰でも恐れるが更にやたらと派手な格好ときたもんだ。理由は分からないが何か触れてはいけない人物というだけは分かる。長いローブをバサバサ音を立てながら魔法使いは逃げていく。
そんな必死の形相で逃げていくのにムラマサは簡単に追いつき女子生徒の一人に声をかけた。
「君ミネルバって女の子何処にいるか知らない?」
「ひぃ!」
女子生徒は悲鳴を上げて全速力でその場から逃げ出した。ムラマサが周りを見ると目が合った生徒から次々に逃げ出していく。
そんな様子を笑いながらアテムは見ていた。
「みんなシャイだねー」
「そうじゃないでしょ!ちょっとアンタ!本当にそれで人探しするつもりなの!?」
「え?そうだけど?」
三人の周りには完全に人がいなくなり警戒するように遠くから生徒達が険しい目つきで三人を見ていた。
「ミネルバさんの知り合いかしら?」
「あの人に知り合いなんているの?」
「話してるとこ見た事ない」
「やっぱりどこかおかしい子なのよ」
ヒソヒソ話の割には随分と大声で生徒達が話しており、それを聞いたデイジーは心配になってきた。
「ミネルバって子も何だか問題ありそうね」
「問題あったかなー?強かったしどんな魔法も使えたし」
「冒険者としては優秀だったぞ!」
「アンタらと合うって事は何か問題あったんでしょ」
三人でワイワイ話していると学園の建物からワラワラと魔法使いの教師らしき大人達と警備員が出てきた。
三人の周りをぐるりと教師が囲み、その後ろで警備員がいつでも飛びかかれるように待機する。その雰囲気は三人を歓迎してくれるような優しいものではない。
「不審者を拘束します!」
教師陣が杖を構えて一斉に魔法を放つ。杖から出された光の輪がアテムとムラマサに襲いかかる。
「うお!あぶね!いや、ミネルバちゃんに会いにきただけだって」
「温い魔法だ。もう少し威力がないと」
アテムは魔法を避け、ムラマサはフライパンで魔法を次々弾き飛ばしていく。二人ともなまじ実力あるだけに教師は捉えることが出来ない。警備員も二人が拘束されずに魔法が飛び交うので手を出そうにも動けないでいる。
「ねえねえ、ミネルバちゃんって在籍してる?」
「うちの生徒に手を出すつもりですか!」
「いやそうじゃなくて」
教師も興奮しているのか話にならない。しかしこの場合悪いのはどう見てもアテム達である。
そんな不毛な攻防が繰り広げられていると周囲を取り巻く人集りが割れて一人の一際小さな少女が現れた。
「何の騒ぎですか?アテムさん、ムラマサさん」
その声を聞きアテムは声を上げた。
「ミネルバちゃんだ!」




