魔法少女ミネルバ
探していたミネルバが現れたことにより混乱していた場は一旦治ったがそれでも教師と警備員は少し離れた所で不審者を監視をしていた。
ミネルバは小さな少女にも関わらずその表情は驚くほど冷たく、全く感情が読み取れない。
「久しぶり!ミネルバちゃん!」
「元気にしてたか!」
「お久しぶりです。アテムさん、ムラマサさん。ですが学園で何をしてるのですか?」
そんな状況でもアテム、ムラマサ、そして渦中のミネルバでさえ全く気にせず会話を続けており、デイジーだけがアテムの後ろに隠れて周りをキョロキョロして落ち着かなかった。
「ミネルバちゃんを探してたの。パーティを再結成したくて」
「お断りします。私は冒険者を辞めました」
即答であった。話を聞かず考える素振りさえ見せない。
「でもミネルバちゃんの事だから呪いはどうにかしてんでしょ?学園にいるって事は」
「まあ、そうですね」
「じゃあまた一緒に冒険しようよー楽しいよー」
「何がじゃあなのかわかりません。それに私は楽しむ為に冒険者をやってた訳じゃありません。では忙しいので私はこれで」
知り合いとの久々の再会なのにミネルバは名残惜しそうな様子もなくさっさと帰っていく。去っていくミネルバに教師の一人が慌てて声をかけた。
「あのミネルバさん?あの人達は知り合いなの?不審者なら捕まえるけど」
「あの人達は限りなく怪しいですが安全なので放っておいても構いません」
ミネルバはそう言いツカツカと歩いて行ってしまう。その後ろからアテムが大声で呼び止めた。
「ミネルバちゃーん!この子を見ても冒険者辞めちゃうの?」
「この子?」
ミネルバが振り向くがアテムが言ったこの子が誰の事か分からない。辺りを見回しても二人のそばに子供らしき人影は見当たらない。
しかしよくよく目を凝らすとアテムの肩あたりに小さな何かが動いているのが見えた。
「……妖精?」
ミネルバそう呟き、正体を確かめる為に近付いた。
「ど、どうもデイジーよ」
「妖精ですね。珍しいですね」
「そう、この子が依頼主で精霊の森に来て欲しいって」
精霊の森と聞きこれまで無表情を貫いてきたミネルバの表情が僅かに変わった。
「なるほど……話だけは聞いてみましょう」
「流石ー!話が分かるー!」
四人は近くのベンチに腰を下ろした。教師達は帰っていったが数人の野次馬が遠くで四人の事をチラチラ見ている。
アテムはデイジーの依頼の事を話した。精霊の森の異変の解決。その為にA級冒険者にならないといけない事。そしてパーティーの再結成について。それをミネルバは先程とは打って変わって真剣に聞いている。
「なるほど、精霊王なら呪いが解けるかもしれないと……」
「どう?気にならない?気になるよねー?」
「確かに魅力的な話です。それに精霊の森には前から興味がありました」
「だから僕達とA級になって精霊の森に行かない?」
「分かりました。呪いの件を抜きにしてもいい話だと思います。またパーティに加わりましょう」
やはり即決であった。ミネルバは断る時も承諾する時も即決である。
「やったね!またよろしくミネルバちゃん!」
「よろしく頼むぜ」
「またよろしくお願いします」
喜ぶアテムとムラマサにミネルバは淡々と事務的な挨拶をした。
「依頼主のデイジーさん、ミネルバ・ヴィルゴーです。よろしくお願いします」
「よろしく、デイジーよ」
ミネルバはデイジーと優しく握手を交わした。ムラマサと違い乱暴ではないがミネルバの視線が研究対象を見るような目つきでデイジーは恐ろしくなった。
「ではさっそく休校の手続きに行ってきます。ここでお待ち下さい」
そう言いミネルバが立ち上がると一人の少女が立ち塞がった。
「ちょっと待ちなさい!」
少女は学園の制服を着ており、目つきは鋭く金髪ツインテールのいかにもキツそうな性格をしてそうな見た目であった。
デイジーはとりあえずミネルバに質問した。
「誰?」
「ツンディーラです」
「いや、名前じゃなくて」
「同じクラスの子です」
ツンディーラは偉そうに胸を張りミネルバに指を差した。
「ミネルバ!アンタまた冒険者になるですって!そんなの私が許さないわ!」
突然の宣言に何の事か全くついていけない一同であるがミネルバだけ慣れているのか動じていない。
「許さないも何も、あなたの許可は別にいらない筈ですよ」
「いるの!同じクラスのライバルだもの!」
「別にライバルとかではないです。一方的に貴方が絡んできてるだけでしょう」
「えっと!それに魔法を唱えられないアンタが冒険者に戻ってどうするつもり!」
この言葉にデイジーは反応した。それはあまりにも聞き捨てならない事である。
「え!アンタ魔法使えないの?」
「はい、喉に呪いを受けて私は魔法を唱える事が出来なくなりました。唱えようとすると喉が閉まって声が出せないのです」
デイジーは制服の襟を緩めると禍々しいオーラを放つ呪印が喉に刻まれていた。ムラマサの手に刻まれた呪印と同じ雰囲気を纏っている。
「そんなアンタが冒険者になっても直ぐに死んじゃうわ!だから大人しく学園に残りなさい!」
どうにも高飛車な態度のようだが言っている内容はミネルバを心配しているだけである。
そんな様子をアテムはニヤニヤしながら見ていた。
「なに?あの子心配してるの?モテモテじゃん」
「ご心配せず。私は強いですから。死にません」
「流石天才魔法少女!言うことが違うね!ひゅーひゅー」
「事実ですから」
ツンディーラを無視してアテムは盛り上がっており、ツンディーラは更に大声を出した。
「なら私と勝負しなさい!それに勝ったら冒険者になってもいいわ!」
突然の決闘宣言に一番テンションが上がったのが何故かムラマサであった。
「いいね!分かりやすい!武人の素質がある!」
「なんでそんな勝負に私が乗らないといけないのですか?」
「まあまあ、それで納得するならいいじゃない。それにデイジーちゃんはミネルバちゃんの実力を疑っているよ?」
アテムがそう言っているのでミネルバがデイジーを見ると不安そうな表情をしていた。なにせこれから旅する魔法使いが魔法を使えないと言っているのだ。誰でも不安になる。
相手の気持ちを無視するミネルバも流石に表情から読み取った。
「それもそうですね。依頼主の前で実力を見せましょう」
ミネルバはツンディーラとの決闘を受ける事にした。やはり一番喜んでいるのはムラマサである。




