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フライパン野郎との出会い

アテムはギルドを通して各地に散らばってしまった元パーティメンバーに連絡を取ってみた。

 しかし殆どの者が返信をせず生きているか死んでいるかも分からなかった。その中で唯一連絡が取れたメンバーと合流する事になった。

 アテムとデイジーは数日馬車に揺られて指定された街に着いた。

「街に着いたけどこれからどうするの?そんなに大きくない街だけど探すのは面倒よ」

「まずはギルドに行って伝言がないか確認しよう。入れ違いになると面倒だし」

「分かったわ」

 二人はこの街のギルドに向けて歩き出した。アテムはこの街に訪れた事があるのか迷う事なく歩いて行く。

 冒険者は何処にでもおりこの街でもギルドに行くまでの間に何度もすれ違った。

 デイジーはすれ違う冒険者の集団を見てアテムに質問した。

「ねぇ、いくら自称最強パーティと言ったって呪われてんでしょ?」

「そうだよ?漏れなく全員ね」

「それならその辺の冒険者と組んだ方が良くない?わざわざ呪われてる奴と組むより強そうじゃん」

 デイジーの意見は正しかった。しかしそれは正しいだけである。実情を全く理解していない。

「デジちゃんはこんな見た目の僕と組みたいと思う?」

 アテムは手をフリフリさせて身に付けているアクセサリーをジャラジャラ鳴らした。

「……ごめんね」

「いいって、だってデジちゃんはこんな僕を選んでくれたし。それにパーティを組めないのはアイツらも一緒だろうし」

「仲間思いなのね」

「うーん?どうだろう……冒険者の関係って淡白でね、利害だけで組んだり解散したりするから」

「そんなものなの?」

 デイジーは精霊の森から来たので冒険者についてそれほど詳しくない。パーティを組むならみんな仲良く固い絆で結ばれているものだと思っていた。

「だって呪われたならみんなで力を合わせて頑張ろってならない?同じ苦しみを共有してんだし。でも解散したんだよ?僕ら。それに殆ど連絡が取れないときたもんだ」

「それもそうね」

「まあ、あの時はみんな自分の事で精一杯だったし、呪われて役に立たない連中が集まったところで何もできなかったしね。しょうがないよ」

「でも今は違うんでしょ?」

 デイジーの言葉にアテムはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「そう、少なくともこれから会う奴は何とかなったらしい。今も冒険者として活動してるらしいからね」

「そいつはどんな奴なの?」

「ムラマサ、パーティでは前衛の剣士をしてた。刀で何でも両断する最強の武人を目指す男だった」

「だったって事は……」

「そう、呪いでね。それについては本人から聞いた方がいい。やっぱりデリケートな問題だから。知らない所で呪いについてベラベラ喋るのも気分は良くないからね」

 アテムの言葉には説得力があった。おそらくこれまでも陰である事無い事好き勝手に噂されていたのだろう。

 そんな話をしていると通りがザワザワとほんの少し騒がしくなった。街の人間がヒソヒソと何か話している。

 デイジーはアテムを通行人が見たからだと思った。ここ数日アテムと過ごしていると嫌でも他人の視線が気になり、チラチラこちらを見て話している様子を何度も目撃していた。

 デイジーは不快であったがアテムが何も言わないのなら黙っていようと決めていた。

 だが今回の騒ぎの発端はどうやらアテムではないらしかった。騒ぎはアテムより前方で起きていた。

 デイジーが目を凝らして前を見ると一人の男が威風堂々と歩いてきた。

 着物を着ている男の体格はがっちりとしており、服の上からでも鍛えられているのがよく分かった。

 この地域で着物を着ている人間は珍しい。ここから遥か東方の民族衣装だからだ。そんなのが歩いていたら多少の騒ぎはあるからもしれない。

 しかし周りの人間がヒソヒソ話しているのは男心着物を着ているからではない。男の帯にフライパンを二つ下げているからだ。それを見て街の人間は騒ついていたのだ。

「あれはどういう事?」「東方の料理人かしら?」「でも何でフライパンを二つも?しかも何で帯に下げてるの?」

 男の格好に街の人間は困惑して答えの出ない会話を繰り広げている。

 その姿を見たデイジーは思わず立ち止まってしまった。デイジーだけではない、アテムも立ち止まった。男の方もこちらに向かって歩いてくると、こちらと目が合い何故か立ち止まった。

 デイジーは心の中で叫んだ。

 ——何こいつ!どんな格好してんの!何でフライパンをぶら下げてんの?待って何でアテムもコイツも止まってんの?

 正直全部声に出して叫びたかった。しかしこの不審者に聞こえれば何をされるか分からない。その恐怖心だけがデイジーの口を閉ざした。

 ——何でそんな珍妙な格好をしてんの!そんな奴呪われているアテムだけで充分でしょ!なに?コイツも呪われてんの?!あっ……

 その瞬間、デイジーは最悪の想像をしてしまった。

 ——え?まさかコイツなの?マジで?やめて!他人であって!コイツじゃないよね?嘘だよね?そんなわけないよね!何でアテムもコイツも黙ってんのさ!何か言ってよ!お願い!

 そしてアテムはニッコリと笑い口を開いた。

「久しぶりだな!会いに来たぜムラマサ!」

「おう!アテム!待ってたぜ!」

——コイツだった!

 デイジーの最悪の予想通り、この男がアテムの元パーティメンバーであった。

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