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一角獣の角盗難事件

デイジーは先程別れたアテムを呼び出して事情を説明した。

「なるへそ!それで僕が呼ばれたんだのね!」

「アンタなら犬になって匂いを追えるでしょ」

「任せてよ!バッチリそのコソ泥のとこまでエスコートしちゃうから!」

 アテムは親指を立てて自信満々な笑顔でいる。そしてデイジーはその横に立っているムラマサを見た。

「で?アンタは何でいるの?」

「面白そうだから」

 ムラマサは役に立つが分からないが興味本位でノコノコやってきたのだ。勿論ギルドの依頼を受けていないので持ち金はない。

 そんな賑やかな会話を聞いていたツンディーラはミネルバに小声で話しかけた。

「犬になるってなに?」

 突然の質問である。

「アテムさんは犬になれます」

 それをミネルバは当然の様に答えた。

 ツンディーラが聞きたかった答えではないがミネルバはそれだけで説明は十分だと言わんばかりに黙ってしまった。ツンディーラはとりあえずことの成り行きを見守ることにした。

 アテムは腕輪を外した。すると体が淡く光出してみるみる小さくなっていく。そして光が消えるとそこには一匹のご機嫌な犬が現れた。

「ワフーン!!」

 犬は外した腕輪を器用に尻尾に潜らせた。これで腕輪を持ち運べ呪いは解けないらしい。

 元パーティーは見慣れているが初めて見たツンディーラは驚きの表情をしている。

「え!変身魔法!」

「いえ、違います。犬になる呪いです。その呪いを抑えていた腕輪を外して犬になってしまったのです」

「そんな……呪いを使いこなすなんて聞いたことない」

「私もアテムさん以外こんな事をやっている人知りませんね」

 優秀な魔法使いであるツンディーラとミネルバでさえもアテムがやっている事は常識はずれだと認識していた。ツンディーラは驚きの表情のまま犬になったアテムを興味深そうに見ている。

「ワフン!ワフフン!ワッフフン!」

 アテムは得意げに何か話しているがツンディーラは何を言っているか分からない。

「なんて言ってるの?」

「知りません。私は犬の言葉は分からないので」

 ツンディーラが質問するがミネルバも分からない。

 何故だかやる気満々のデイジーは意気揚々と犬の背中に乗っかった。

「さあ!アテム!泥棒の匂いを追うのよ!」

「ワフーン!!」

 デイジーが犬になったアテムの背に乗り外に向かって指を指すとアテムは機嫌よく遠吠えをして歩き出した。

 出だしの勢いはあったが臭いを追って進むのでアテムは床をスンスンしながらゆっくりと歩いていく。

 

 犬を先頭に怪しい集団が学園内を歩いて行く。

 地面の臭いを嗅ぎながら先頭を歩く犬、その上に乗っている小さな妖精。その後ろを歩く二人の女学生にフライパンを腰に下げた謎の男。

 アテム達が校門で騒いでいた時とはまた違う騒めきが周りでは起こっていた。

「あれ何?」

「ミネルバさんと犬?」

「何でフライパン持ってるの?」

 一人の生徒が教師に縋るように質問している。

「先生あれはいいんですか?何が駄目なのかはっきり分かりませんが。あれはここにいちゃ駄目な気がします」

「ミネルバさんが言うには安全な不審者らしい」

 不安がる生徒に教師は言われたままを伝えたが自分でも安全な不審者とは何なのか分かっていない。

 周りの騒めきを無視してアテムがミネルバの部屋から続く臭いを追い行き着いた先は学生寮とはまた別の立派な建物であった。

「まさかここだなんて……」

 それを見たツンディーラは何やら険しい表情をしている。

 どうやら只事ではないと察したデイジーはミネルバに質問した。

「これは何の建物なの?」

「教員棟です。教員の研究室があります」

 盗んだ犯人と思われる臭いを追ってここまで来て行き着いた先が教員棟、これはつまり。

「じゃあ盗んだ犯人は学校の先生って事!?」

「その可能性はありますね」

 この学園に生徒の部屋から盗みを働く教師がいる事にツンディーラはショックを受けていたがミネルバは別に何とも思っていない。

「中に入ろうにも入り口には警備員が立ってるわね」

「教員棟には機密の研究をしてますので」

「ムラマサ!アンタ暇でしょ?ちょっとそこらで騒ぎを起こして」

「俺?まあ、いいけど」

 デイジーに直々に指名されたムラマサはフライパンを出して一行から離れて行った。

 しばらくしてツンディーラが血相をかいて警備員に走り寄っていった。

「警備員さん!来てください!」

「どうしたんだ」

「向こうでフライパンを振り回している不審者が!」

「分かった!君はここで待ってなさい!」

 ツンディーラの演技に騙された警備員は急いで教員棟の裏手に走って行った。演技といっても嘘ではない。フライパンを振り回している不審者は確かにいるしツンディーラはムラマサな事を今なお不審者だと認識している。

 デイジー達は建物の影からそれを見ていた。

「行ったわね。じゃあ今のうちに」

 一行はムラマサを囮にして警備員がいなくなった教員棟に急いで入った。

「じゃあアテム!見つかる前に犯人のとこまで行っちゃって!」

「ワフン!」

 こうしてまたアテムを先頭に歩き出した。

 建物内をしばらく歩いているとアテムがある扉の前で足を止めた。

「ここの部屋でいいの?」

「ワフン!アフン!」

 デイジーが確認するとそうだと言わんばかりにアテムが鳴いた。

 この先に一角獣の角を盗んだ犯人がいる。

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