やっぱりまだ行かない
「さて!ミネルバちゃんとも合流出来たし!次の仲間を探しに行こう!」
「おー!」
アテムの掛け声にムラマサが手を上げて応えた。
「と言いたいところだけどお金も無いし連絡もつかない。なので少しここに滞在してお金集めと情報収集をしよう!」
「やっぱりそうなるのね」
魔法都市に来るのもギリギリお金が足りていた位なのでデイジーとしては分かりきっており、諦めがついていた。
「この街は金持ちが多いし魔法使いは魔物の素材を求めてるから実入りのいい依頼がいっぱいあるからさ、ここで稼げるだけ稼がないとね」
アテムはギルドに向かおうとしたがミネルバは動かない。
「それなら私は学園に戻ります。お金にも困っていませんし。目的地が決まったら教えて下さい」
これについてアテムもムラマサも何も言わないところを見るとこれまでもミネルバはこういう対応をしていたのが分かる。そしてこのパーティーはそれでも構わない個人の自由が保証されており、言い換えれば個人に対してとことん冷たいのである。
「さっきあんな別れ方したのにいいの?」
「別に気になりません」
「そうなのね」
先程ツンディーラと青春っぽい別れをしたばかりだがミネルバとしてはどうでもいいらしい。デイジーも本人がそれでいいならと納得した。
「デイジーさんも来ますか?精霊の森について詳しく知りたいので」
「じゃあ私はミネルバについて行くわ、どうせ私じゃ依頼はできないし」
デイジーはミネルバについて行く事にした。正直あの二人に振り回される日々が続いていたので少し距離を置きたかったのだ。
「じゃあねー!何か分かったら連絡するから」
「その時は受付を通して下さい。大声で騒ぎを起こされると迷惑です」
「はいはーい!」
ミネルバに釘を刺されたアテムだが理解しているのか分からない軽い態度で手を振っている。
こうしてパーティは学園に戻るミネルバとデイジー、ギルドに向かうアテムとムラマサに別れた。
「さて、ここが私の部屋です」
学園に通う生徒の寮に入り、ミネルバの部屋に案内されたデイジーはこれまで泊まってきた宿と比べて驚愕した。
「そこら辺の宿より綺麗じゃないの」
「学園には貴族も多く通うので必然的に豪華な寮になっているのです」
学生の一人部屋にしては広く、さらに奥には寝室まで備えられている。扉も照明も窓もどれも凝った作りとなっており一流のホテルの様であった。
デイジーがキョロキョロと部屋を見ていると扉の方から甲高い声が響いた。
「ちょっと!ミネルバじゃない!何でここにいるの!」
二人が振り向くとツンディーラが走って来たのか息を切らせて扉の前に立っていた。
「まだ目的地が定まらないので少しここにいます」
「そ、そうなのね!それは残念だったわね!」
「嬉しそうね」
ミネルバの言葉にツンディーラの頬は緩みまくっている。それをデイジーに指摘されると恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「それより貴方も何でこの時間に寮に?講義の時間では?」
「別にミネルバを見かけたから仮病を使って追いかけたとかそんなんじゃないわよ!」
「そう言うことね」
「とりあえず荷物を置いてきます」
ミネルバはツンディーラを無視して着ていたローブを掛けようとクローゼットを開けた。すると「ん?」っとミネルバは不思議そうな声を漏らした。
「どうしたの?」
ミネルバはデイジーの言葉に反応せずクローゼットをまじまじ見てから今度は部屋を彷徨き何かを確認していく。
そして「物の位置が違う」と呟いた。
「綺麗な部屋だと思うけど」
デイジーは部屋を見たがどれも整頓されており、不審な点は見あたらない。
「私、物の位置は同じ場所に決めているので場所がズレてるとすぐ気付きます」
「まさか空き巣!」
ツンディーラはズカズカと部屋の中に入り見回すが部屋は綺麗で何か不審な点があるか全く分からない。
「そうかもしれません。少し調べます」
そう言いミネルバは貴重品が置いてある棚を片っ端から調べ始めた。
デイジーもツンディーラも元の部屋の様子を知らないので下手に物に触らず、ミネルバの邪魔にならない様に部屋の隅っこで待っていた。
一通り調べたミネルバは確信した。
「予想通り盗みに入られたようです」
「そんな!ミネルバの物を盗むなんて羨ま……ゴホン!酷いことをするわ!」
ツンディーラは大きく咳払いをして言い直した。ミネルバは特に気にしている様子はないがデイジーは冷めた目でツンディーラを見ている。
「これはまずいですね」
ミネルバはこれまで見せたことの無い少し真剣な表情になって考え込んでいる。デイジーは心配そうに声をかけた。
「そんな大金を盗まれたの?」
「いえ、管理責任を問われかねない物です」
「そんな危ない物を部屋に置いてたの?」
「いえ、一角獣の角です」
「嘘!まずいじゃない!」
ツンディーラは突然大声を出し事の重大性を理解しているようだがデイジーにはさっぱりである。
「魔道具の性能を爆発的に上げる代物です。その為使用量を間違えると暴走します。それと一角獣はその効能から乱獲されて数を大幅に減らした歴史があり、所持と使用には資格が必要になります」
「そんな貴重な物なら盗みたくもなるわね」
「私が長く空けると知り盗みに入ったのでしょう。空けた帰還が長くなるほどいつ入った特定が困難になります。直ぐに戻って来れたのは不幸中の幸いです」
「さっさと犯人を捕まえちゃいましょ!私も強力するから!」
ツンディーラはフンスフンスと息巻いてやる気十分だ。
「それで?どうやって見つける?」
「地道に聞き込みをするしかないですね。入った時間は大体特定出来ますし」
ミネルバとツンディーラが犯人探しについて考えているとデイジーはある事を思い出した。
「あっ!犯人探しなら便利な奴がいるわ!」
デイジーは胸を張り得意げに笑った。




