表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『婚約破棄の手紙から始まる、辺境伯との再婚生活』  作者: はる乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/63

第五十六話「亡霊の終焉、真実の誓い」

リリエルの言葉が、冷たい広間に深く刻まれる。


「私は物ではありません」


その余韻が消えぬうちに、

アレクシスが迷いのない、はっきりとした口調で応えた。


「その通りだ」


静かだが、鋼のような強さを持つ声。


「誰も、お前自身の未来を勝手に決める権利などない」


彼は一度だけマキシムを見据え、

すぐにリリエルへと視線を戻した。


その瞳には、もう先ほどまでの揺らぎはない。


「……だが、リリエル。俺の本心を聞いてほしい」


逃げないと決めた男の声だった。


「最初、俺は後妻を迎えるつもりはなかった」


空気がわずかに張り詰める。

セレスティーヌの名は出さない。


だが、その場にいた全員が、

死んだはずの彼女の影を思い浮かべていた。


「あの事故の真相が分からないまま、俺の中では何も終わっていなかった。守れなかったのか、あるいは裏切られていたのか……何が真実だったのかも分からぬまま、次へ進むことなど到底できなかったんだ」


アレクシスは拳を強く握りしめる。


「震えておどおどしているお前を見て、『契約結婚』を提案したのは、ただの同情だった。お前に相応しい嫁ぎ先を見つけ、送り出せば、俺の役目は終わりだと思っていた。一年という期限を切ったのも、互いに情を持たぬための防壁に過ぎなかった」


自嘲気味な、苦い笑みがこぼれる。


「お前を愛することなど、万に一つもない……そう、思い込んでいた」


天井から差し込む夜明けの光が、彼の横顔を白く照らす。


「だが、今回のことで全てが明らかになった。事故の真相も、裏切りも……俺が抱え続けてきた疑念も後悔も、ようやく終わったんだ。けじめは、ついた」


ゆっくりと、長く、溜め込んでいた息を吐き出す。


「そして、気づいたんだ。俺の心の中に――」


一拍。


「いつの間にか、お前がいることに」


広間が静寂に沈む。


「サンルームで過ごす時間も、紅茶を淹れる何気ない仕草も。領地のために共に悩み、共に笑ってくれた姿も。そのすべてが、もう俺の中から消えない」


声が、微かに震える。


「契約があるからと、気持ちに蓋をしてきた。一年が終われば、また元の日常に戻るだけだと言い聞かせてきた。だが……思ってしまったんだ。この日常を、お前のいる日々を、終わらせたくないと」


その言葉は、重く、切実だった。

もはや損得勘定も、公爵としての体裁もない。


「俺はもう、後妻をどうするかなどという次元で迷ってはいない」


視線が、真っ直ぐにリリエルの魂を射抜く。


「お前だから、隣にいてほしいんだ。リリエル」


静かに、しかし確信に満ちた宣言。


「これは契約ではない。……俺の、一人の男としての意志だ」


広間に朝の光が満ち、塵が黄金色に舞う。

マキシムは沈黙を守り、下を向いた。


リリエルの胸が、大きく波打つ。


「物」として扱われ、翻弄されてきた彼女の前に、

一人の男が初めて「心」を差し出した。


今度こそ。


本当に、彼女が自らの足で選ぶ番だった。


アレクシスの告白。


マキシムは親友の告白を聞いて

どう感じたのか、


リリエルの答えは?


続きが気になる方は、ブクマ、リアクションして貰えると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ