第五十二話「夜明けと共に」
どれほど時間が過ぎただろう。
眠れないまま、ただ目を閉じていた。
うとうとしかけた、その時。
――ドン。
低い音が、遠くで響いた。
風ではない。
規則的な、硬い音。
――ドン、ドン。
門を叩く音だ。
リリエルは、はっと目を開ける。
まだ外は暗い。
夜と朝のあわい。
使用人たちの慌ただしい足音が、廊下を走る。
ざわめき。
押し殺した声。
「こんな時間に……?」
胸が、強く打つ。
嫌な予感ではない。
もっと、別の――
期待と恐怖が入り混じった鼓動。
遠くで、低い声がした。
はっきりとは聞こえない。
けれど、その響きに背筋が震える。
ベッドから降りる。
裸足のまま、扉へ向かう。
廊下に出ると、ひやりとした空気が頬を撫でた。
階下が騒がしい。
「お待ちください!」
「この時間は――」
制止の声。
そして。
「――通せ」
低く、短い一言。
空気が変わる。
リリエルの指先が震える。
その声を、知っている。
何度も、すぐそばで聞いた声。
胸が、痛いほど高鳴る。
階段の下。
見覚えのある、美しい横顔。
外套を羽織ったその男と、使用人たちが扉の前で押し問答をしていた。
夜をそのまま連れてきたような姿。
あのネックレスの石と同じ、濃紺の瞳が――
ゆっくりと、こちらを見上げる。
視線が、絡む。
「アレクシス様……!」
思わず名がこぼれた。
「……リリエル」
呼ばれた瞬間、
足が、動かなくなった。
夜が、終わる。
嵐が、始まる。
いよいよ、アレクシスの当時です。
この後、どんな展開になるのか
乞うご期待です!
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