表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『婚約破棄の手紙から始まる、辺境伯との再婚生活』  作者: はる乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/63

四十八話「マキシムの告白」

「……教えてください」


まだ本調子ではない体で、リリエルは上半身を起こした。


「今、何が起きているのか。どうして私はここにいるのか……知りたいのです」


マキシムは一瞬、目を伏せる。


そしてゆっくりと、彼女の肩を抱き寄せた。


驚くほど優しい腕だった。


「……少し長くなっても、大丈夫か?」


低い声。

迷いと覚悟が混ざっている。


「はい。聞かせてください」


リリエルは、まっすぐに彼を見つめた。


「その前に……俺の昔話からでもいいかな?」


「はい。

私は、あなたがどんな方なのか……まだ何も知りません」


その言葉に、マキシムはわずかに笑う。


「そうだな。まずは、そこからだ」


静かに語り始める。



「俺は伯爵家の次男だ。


兄のゾイドは、子どもの頃とても身体が弱かった。

今は元気に家督を継いでいるが、

当時は継げるかどうか分からないと言われていた位だ」


だから、と彼は続ける。


「兄と同じように学び、同じように育てられた」


幼い頃から、隣にはいつも婚約者がいた。


子爵家の次女――アイナ。


そして、兄の婚約者はアイナの姉、マーラ。


「……アレクシスとセレスティーヌのように、親同士が決めた縁だった」


マーラは滅多に人前へ出なかった。


身体が弱く、いつも奥で療養していた。


だが。


「……美しかった」


控えめで、静かで、優しくて。


妹に何でも譲ってしまうような、そんな少女だった。


一方のアイナは正反対だった。


野心家で物怖じせず、男勝り。


顔立ちは父親似で、お世辞にも華やかとは言えなかったが、


「あの笑顔は、不思議と人を惹きつけた」


マキシムは小さく息を吐く。


「だが俺は……アイナを女としては見ていなかった」


友として。

戦友のように。


尊敬はしていたが、恋ではなかった。


「俺の初恋は、マーラだった」


ぽつりと落ちる。


リリエルの胸が、かすかにざわつく。


「……兄上の婚約者だったのに。最低だろう?」


自嘲気味に笑う。


「だが、止められなかった」


やがて流行り病が広がった。


マーラは病を悪化させ、あっけなくこの世を去った。


その葬儀の後。


アイナは静かに告げた。


「私は、ゾイド様と婚約を結び直したい」


そこに愛はなかった。


「公爵家の女主人という立場が欲しい」

と、はっきり言った。


マキシムは何も言えなかった。


彼女にとって自分は、

通過点でしかなかったのだと知ったからだ。


「……簡単に割り切れる程度の存在だったのか、と」


拳を握る。


「尊敬していた。大切にしていた。そこに愛が無かったとしても……俺は、選ばれなかった事に深く傷付いた。」


やがてゾイドとアイナは結婚した。


兄は健康を取り戻し、家督も安泰。


すべては丸く収まった。


「俺だけを除いてな」


それから。


マキシムは、すべての縁談を断った。


結婚というものが分からなくなった。


信じることが、女と言う生き物が怖くなった。


「……だが」


彼はリリエルをまっすぐに見つめる。


「お前に出会った」


その視線は、どこか切実だった。


「初めて会った時、思った」


――マーラに似ている、と。


言葉はすぐには続かなかった。


リリエルは、黙って待つ。


「……重ねてしまった」


苦しげに吐き出す。


「最初は……マーラの亡霊を見つけたようで、嬉しかった」


その告白は、残酷なほど正直だった。


「だが」


息を吸い込む。


「会えない時間に、お前のことを調べた」


「過去も、境遇も、噂も……全部だ」


リリエルの指先が、わずかに強張る。


「知れば知るほど、違うと分かった」


「似ているのは外側だけだ」


声が、かすかに震える。


「お前は、全然違う」


震える手が、リリエルの手を包む。


「傷つきながらも懸命に生きる強さも」


「不平不満を言わない器の大きさも」


「……全部、リリエルのものだ」


顔が近い。


「気がついたら」


一拍。


「本当に恋をしていた」


「亡霊じゃない」


「お前自身に」


「……リリエル」


名を呼ぶ声が、低く震える。


「俺は、今度こそ選びたい」


「選ばれるのではなく」


「自分の意志で」


彼女を抱きしめる。


今度は、はっきりと。


「幸せにしたい。心から愛したい」


「この気持ちだけは、信じてほしい」


部屋は静まり返っている。


リリエルの胸の奥が、静かに揺れた。


彼は誠実だ。


嘘はついていない。


だが――


それでも。


「……私は」


その言葉は、まだ続かない。


過去と現在。


想いと現実。


すべてが、静かに絡まり始めていた。


マキシムの過去。

マキシムの告白。


狡賢い一面と、誠実な一面。

人にはそれぞれ、光と影があるのですよね。


マキシムの告白を聞いて

リリエルはどうするかでしょう?


次が気になる方は、是非ブクマかリアクションして

貰えると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ