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『婚約破棄の手紙から始まる、辺境伯との再婚生活』  作者: はる乃


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第二十四話「違和感」マキシム視点

(……何かある)


そしてその“何か”は、

リリエルにとって――良くない。


マキシムは、ルーカスと酒を交わしたあの夜から、違和感を拭えずにいた。


あいつは確実に、今もリリエルを愛している。

それは疑いようがない。


それなのに、彼女を手放した。

――婚約破棄までして。


だが、あれは本当に“手放した”のか?


切り捨てた男の目ではなかった。

未練でも執着でもない。


――今も変わらず、囲い込む者の目だ。


彼女を王都から遠ざけ、アレクシスの屋敷へ滞在させた。

あれは放逐ではない。

隔離だ。


まるで何かから守るために、

最初から用意していた場所へ移したかのような手際の良さ。


距離を置いたのではない。

距離を“管理”している。


何もかもが噛み合わない。


俺はリリエルに一目惚れした。

今すぐにでも連れ出したい衝動がある。


だが、ルーカスの不可解な行動を放置したままでは、

この先リリエルに降りかかる火種を見誤る。


感情で動けば――

守るどころか、危険の中心へ押し出すことになるかもしれない。


だから今は、調べる。


ルーカスが何を隠し、

何を恐れ、

何からリリエルを遠ざけようとしているのか。


真相に辿り着くまでは、軽率に動くな。

そう結論づけた。


――そして。


調査は、予想もしていなかった友の“名前”を浮かび上がらせた。


ビリー。


自分たちの幼馴染。

疑うという発想すら持たなかった男だ。


だが、断片が繋がった瞬間、背筋が冷えた。


ルーカスへの呪い。

事故の日に消えた男の影。

不自然なほど、重なる。


マキシムはアレクシスのもとへ向かった。


聞かなければならない。

ビリーとセレスティーヌの関係を。


そして、この二週間で掻き集めた事実も。


ひとつ。

事故当日から、ビリーは消息不明。


ふたつ。

アレクシス不在時に限り、ビリーとセレスティーヌが頻繁に目撃されている。


みっつ。

病院の前でビリーが泣き叫び、錯乱していたという証言。


――ただの悲嘆じゃない。


それは、何かを奪われた人間の崩れ方だと聞いた。

怒りでもない。告発でもない。

取り返せない未来を、目の前で断たれた男の絶叫。


決定打が欲しかった。

だから金を使った。


医師から引き出したのは、“確認”だけだ。


セレスティーヌは――

妊娠初期に、子どもをおろしていた。


アレクシスとの子どもでは無い。


その件でビリーが激昂し、医師と揉み合いになった事件もあったという。


それだけで、十分だった。


点と点が、線になる。


ビリーはセレスティーヌを愛していた。

間違っていると分かっていても、

それでも共に生きる未来を望んでいた。


子どもを――

彼女と一緒に育てたかった。


だが、その未来は永遠に失われた。


(ビリー……お前は、何をした?)


リリエルの周囲で起きていることは、

恋や嫉妬で片付く話じゃない。


もっと深い場所で、

静かに歯車が狂っている。


そして、その中心に――幼馴染の名がある。


(……急がないと)


守るために、まず暴く。


冷静でいると決めたはずなのに、

胸の奥だけが焦げるように急いていた。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


今回は、マキシムの「動きたい衝動」をあえて止めました。

好きだからこそ、すぐに手を伸ばせない。

守るために疑うという選択が、彼をさらに深い場所へ踏み込ませています。


浮かび上がった幼馴染の名。

それが偶然か、必然か。


次章で、点はさらに繋がっていきます。


引き続き見守っていただけたら嬉しいです。

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