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「な、何じゃ今のは……」
信じられないくらい凄いパンチ出たんですけど……プロボクサーどころじゃないパンチだった。
適当にパンチしただけで吹っ飛んでいったんだが……。
「これが俺の力ってわけか? 身体能力が馬鹿みたいに高いってことか? まぁなんだっていい、とにかく窮地は脱したんだ! にしてもなんだったんだあいつ。ガチで死んだと思ったわ」
どうやらこの森はかなりやばい森だったらしい。
俺の身体能力がなければマジで死んでた。
「でもどっちかと言えば魔法使いたかったな。使い方が悪いのかな? エレクトリカルサンダーストーム!」
俺は雷光をイメージし両手を突き出した。
「…………」
やはり何も起きなかった。
がっかりだった。
「くそ、俺に二度も恥を欠かせやがって。もういい、こうなったら身体能力だけで無双してやるよ。異世界と言えば魔法だと思ってたんだが、まぁこれでもいいだろう。魔法はまたおいおいだな、とう!」
俺はその場で飛び跳ねた。
足に渾身の力を込めた跳躍は、樹木の枝葉をゆうに突破し、上空へと踊りださせた。
「ははは、マジでエグいって。この身体能力だけでどこまでもやっていけそうだわ!」
俺はしばらく浮遊したあと、重力に引かれ地面に着地する。
どがあああああーん!
地面に大きなクレーターが出来た。
「よーし、何か標的はいないかな? 俺のこの力を見せつけたくてしかたねーぜ!」
調子に乗っているのは自分でもわかってはいるが、これが乗らずにいられるだろうか。
俺は再び跳躍した。
上空から何かないかと探りを入れてみる。
「ん? あれって……煙?」
俺ははるか先から狼煙のように煙が立ち上っているのを発見した。
「なんだろ、SOSってやつかな? 分からんがせっかくだ、この俺様が助けてやろう!」
俺は再び地面に着地すると、その場所に向かってひとっ飛びした。
現場に到着し、目に映ったのは古めかしい家の数々だった。
いわゆる村とかだろうかと推測が立つが、どうも様子がおかしい。
「え……家が燃えてるんですが」
そう、全てと言うわけではないが、何件かの家が燃えていた。
山火事ならぬ村家事というやつかな?
「あ、人がいた」
そしてやはりというべきか人間の姿を発見する。
かなり遠くの方だが、一人の男が二人の男に取り押さえられているのがわかった。
「どういう状況だろう」
俺はひとまず近づいてみた。
「や、やめてくれよおおお」
「はーい、ざんねーん」
「けひゃひゃひゃ! 逃げ出そうとしたって無駄だからなぁ!」
物陰から隠れて観察すると、そんな声が聞こえてくる。
まだ少し距離があるけどやけにはっきり聞こえるな。
もしかして聴力も強化されてたりするのかな?
「ど、どうか嫁と娘だけは……っ!」
「は? お前なんも分かってねーな。お前らに選択肢なんざねーんだよ」
「安心しろ、女どもはたっぷり可愛がってやるからよ。ひゃひゃひゃひゃ!」
……あー、どうやらこれはあれだな。
パッと推察する感じ村がならず者に襲われてるとかそんな感じなのかな。
言われてみれば取り押さえられてもがいている方は村人っぽい服を着ているし、取り押さえている側は皮鎧の盗賊っぽい服装な気がする。
バキッ!
どうしようか考えていると、村人っぽい男の方から嫌な音が聞こえた。
見てみれば右腕があらぬ方向に曲がってしまっている。
「ぐぎゃあああああああああ!!」
「おお、いい声で鳴くじゃねぇか」
ああ、完全に弄ばれてますわ。
許せないな。
まぁせっかくの機会だ。元々対戦相手を探していたところだし、もうこいつらでいいや。
「待てよ、悪事はそこまでだ」
俺はニヒルな雰囲気を漂わせながら、現場に突入した。
ぽっけに手を突っ込んでもう完璧に決まったな。
「あ? なんだこいつ」
「生き残りか? はん、馬鹿かこいつ。とっとと逃げちまえばいいのによぉ」
男の一人がニヤつきながら俺へと歩み寄ってくる。
手をパキパキと鳴らしていた。
「おうおう、勇気ある坊主、お前、地獄を見たことがあるか?」
「地獄? さぁ、天界には行ったことあるけどそっちはどうか分かんないな」
「訳わかんねぇこと、言ってんじゃねぇぞッ!」
男は俺に向かって拳を振りかざしてきた。
拳がゆっくりと俺に迫ってくる。
なんだ? 手加減してるのか? そんな攻撃避けれるに決まってるけど……
「ひょい」
よく分からなかったが、男のパンチを軽く体をひねって回避してみた。
「おっと」
男は反動で少しよろめいている。
なんだ? ふざけてるのかこいつ……
「ちょこまかと、舐めんじゃねぇ!」
再び殴ってくる男。
やはりスローモーションにしか見えない。
男から繰り出される攻撃を次々に回避する。
なんだ? 何がしたいんだ? 結構マジ顔には見えるけど……え? もしかしてこれが本気なのか? ちょっと待て、もしかしてこれってアレじゃないか? 両者の間に力の差がありすぎてめちゃくちゃ弱く見えるっていうやつ……
「な、なんで俺の攻撃が……ッ」
「でりゃ!」
俺は流石に鬱陶しくなり、男に蹴りを放った。
男は錐揉みしながらどこかに吹っ飛んでいった。
「うおー、すごいシュート……サッカー選手も夢じゃないかも」
男の行方を眺めながらそんなことを思った。




