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「やばい最強になりてぇなぁ」


 俺は自室でひとりごちた。

 なんでもない呟きだったが、本当に望んでいることでもあった。


「こんな生活になんの意味があるんだ、こんなことなら異世界にでも転生したい」


 俺は本当にろくでもない生活を送っていた。

 入学した近所の高校も半年も持たずに不登校になり、それからの約一年本当に虚無だった。

 何をしていたかすら思い出せない。

 そのくらい自堕落な日々だった。

 流石に進路のことも考えないとという焦燥感もあるにはあったが、全くやる気が起きないのだ。


「はぁ、リアルなんてつまんないよ。いや、全部わかってるんだけどな。俺が悪いってことくらい。でもこの性格は俺が望んでも変えられないし……もうこんな人生ってことでもいいのかな」


 俺はベッドに横たわり虚空を見つめていた。





「――諦めるのはまだ早い」





 どこからか声が聞こえた気がした。

 なんだろう。男の声のような気がしたけど……流石に俺も動かさすぎてボケてきたかな。



「――お前を、救ってやろう」



 その言葉とともに、唐突に俺の部屋中に光がほとばしる。

 うぅ、眩しい…………








「はっ!」


 気づけば俺は白い部屋にいた。

 全てが恐ろしいほどに白い、ザ・シンプルな部屋だ。


「ふむ、はじめましてじゃな」


 声がした。

 顔を向けると、そこには一人のしわがれた老人が立っていた。


「あ、あなたは……」


「儂は神じゃよ。お主は高岡流星たかおかりゅうせいと言ったな。ここは天界といっての。今回特別にお主を呼び出させて貰ったんじゃが、まぁ流石に簡単には信じられんとは思うが――」


「神様なんですか!?」


「え」


「ここは天界なんですね! ということは僕は死んじゃったってことですか? こうして呼び出されたってことは絶対何かあるんですよね? もしかして異世界転生って感じですか!? はい! だとしたらチート能力がいいです! 何もかもを凌駕するようなチート能力で、美少女を負かして仲間にしたり、偉そうな貴族を返り討ちにして気持ちよくなったりして――」


「やかましいわッ! 急に喋りだすでない何なんじゃお主。要領が良すぎるを通り越して気持ち悪さしか残らんわ」


 いやいや、これで黙ってられるかって話ですわ。だって神様、そして天界とくればもう異世界転生しかないでしょ! 男ならときめかないわけねぇよ!


「それで、どうなんですか!?」


「まぁお前さんの言う通り異世界に転生させてやろうとは思うとった」


「やったぜ! マジで、本当にこんなことってあるんだ……」


「やかましいのう……まぁこれでこそ救う価値も出てくるというものか、はぁ」


「それで、どんな能力をくれるんですか! 最強の能力がいいです!」


「まぁ落ち着かんか。色々説明することもある」


「早くしてください! もう待ちきれないんですよ」


「大丈夫じゃ、時間はゆっくりある」


「分かりました。ではなるべく早めにお願いしますね」


「そうじゃな、まずは」


「もう終わりでいいですか!? じゃあ早く能力決めの方を――」


「ええい! なんじゃお主は! 落ち着きがないのう! ガチでキチガイじゃろう! もういい! お前さんとは話したくない。とっとと異世界に堕ちて勝手に暮らしておけばよい!」


 その言葉とともに俺の周囲が再び発光し始めた。


「ええ、能力は、俺の能力はどうなるんですか」


「一応は餞別で本来授ける予定だった力は授けてやる。その力で魔王を倒せ、儂から言えることはそれだけじゃ」


 その言葉を最後に、俺の意識は途絶えた。








「う、うぅ……あ、あれ」


 小鳥のさえずりが耳に響く。

 目が覚めた俺は上体を起こし周囲を伺ってみた。


 思いっきり森の中だった。


「え、ええ……ガチでどうなってるんだ? もしかして夢の中? いや、違う、そう言えば何か重大なことがあったような」


 ズシン。


 そばから何かが聞こえた。

 そちらに顔を向けてみる。

 そこには体長三メートルを超えるであろう人形のモンスターが立っていた。

 鬼の目でこちらを睨んでいる。

 そして……持っていた棍棒を俺に向かって振り上げた。


「ぎゃあああああああああああああああ!! 異世界に転生したんだったあああああ!!」


 全てを思い出した。

 やばい、異世界、ということはコイツは魔物かなにかか? いや、そんなことは今はどうだっていい! 誰か助けて殺される。


「どわああ!!」


 棍棒が振り下ろされ、それを辛うじて回避する。

 やばい、どうしよ。


「そ、そうだ! 俺には能力があるとかなんとかいう話だった。それを上手いこと使えばどうにかなるんじゃ!」


 俺は体勢を立て直す巨人に向かい、手のひらを向けた。

 こういうときの相場は魔法と決まっている! 異世界なんだ! 魔法だって使えるはず!



「でりゃああああああああ! でろおおおおおおお、俺の魔法! ファイヤーエターナルスターストロングしゅうううとおおおおおお!!」



 俺はデカい声で技名を叫んだ。



「…………」



 しかし何も起こらなかった。


 お、おい、嘘だろ! 何でなんにもなんないんだ! 何か体に変化が起きた様子もないし、違和感も何も感じない。生前と何も変わってないように思える。あれ、俺ってもしかして……雑魚?



「ぐおおおおおおおおおおおおおおッ!!」



 巨人が雄叫びを上げながら俺に突っ込んでくる。

 ああ、無理だ……こんなのどうにもできっこない。今度こそ敷かれておしまいだ。


「いやだ……いやだいやだ、諦めたくない。だって……異世界が好きだから!」


 俺は最後の力を振り絞り、やけくそパンチを繰り出した。



 ずごおおおおおおん!!



 パンチは凄いスピードで放たれ、巨人を空の彼方に吹き飛ばした。

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