13.消えた断罪
あれから、生徒会へのチルチェリアに関する苦情は無くなったが、他の苦情自体が無くなることは無かった。
所詮、誰もが、何らかの苦情を抱えているらしい。
私達は振り回されながらも、一年間の任期を無事に終え、最終学年になった。
兄のムスタファは、婚約者のリリアーナと結婚式を挙げた。リリアーナは本当に綺麗だった。
彼との店の準備に走り回っていたマリーは、まさかのおめでたで、大急ぎで結婚式を挙げ、学園を中退した。
本人は全く気にしていなくて、かえって嬉しそうだった。
お馬鹿で頼りなかったマティアスも、しっかりしてきて、先日、相手方からの是非にとの申し出があり、婚約した。
婚約者は可愛らしい令嬢で、私が夢に見た妹そのものだった。
それに剣の腕も今では、私達全員を抜いて、一番になった。
最近では剣聖の名で呼ばれるのは、彼だろうと言われるようになった。
マティアスに、婚約を申し込んだのは騎士団長の家系であるラザニア侯爵家。弟はいずれ、彼の跡を継いで立派な騎士団長になるだろう。
私はと言えば、断罪とは全く縁がないぐらいダニエルと仲睦まじくしている。
大人しくしているかと言えば、そうでも無い。
秋にヨルムンガンド領に遊びに行った時に、米を見つけてしまい、勢いに任せて、マリーの店で売り出してしまった。
親子丼と、カツ丼がヒットして、マリーの店はあっという間に人気店になった。
元々そんなに多く栽培していなかったので、春には作付けを増やして貰うことになった。
別の領から、米に合うからと海苔を貰った時には、私の中のゆきえが大喜びした。でも、大喜びしたのはゆきえだけじゃなかった。
マリーの店の隠れファンとなっていたチルチェリアが、おにぎりおにぎりと叫んで形の良い三角形のおにぎりを作ってくれた。
あのチルチェリアがだ。
彼女はあの騒動の後、一学年上の人と付き合い始め、彼と彼女の恋愛は、栄光から挫折、そして真実の愛と言うコンセプトで小説化され、---書いたのはチルチェリアらしいが、覆面作家となっている---、舞台化もされて、大評判になった。
お相手は穏やかな人で、彼女を見ては幸せそうに微笑んでいるのが印象的。聞くところによると、初恋で一目惚れだったらしい。
チルチェリアの作るおにぎりとおにぎらずは、どちらもランチタイムの人気商品になった。今度、おにぎりの専門店を二号店として開くつもりらしい。
そして、チルチェリアは、その店のメニューを担当している。
「ケイシー、支度はできたの?」
「もちろんです。お母様。」
今日は、私とダニエルの結婚式。色々あったけど、楽しかった。これからは二人でもっとずっと楽しく過ごす。
新緑の中、私達は永遠の誓いを立てた。真っ白な生地に私の瞳の色で繊細な刺繍を施した服を着たダニエルは今までで一番素敵だった。
そういえば、過ぎた力を持つおまじないは少し怖いけど、最近気に入ったおまじないがある。
彼と共に外国に行く機会が増えたので、これ。
【何を食べてもお腹を壊さない】
このおまじないのおかげで、私達一行は、どこでも、何でも美味しく頂けるので、色々な国から、招かれる。
さて、次はどこの国へ外交に行こうか?
ダニエルの腕に手を絡め、海風に髪をなびかせる。最近少し膨らんできたお腹をさすると、その手にダニエルが手を重ねてきた。
健康にこの子が生まれるようおまじないをしよう。
私とダニエルの子ども。
断罪は起きず、幸せしかない。私は幸せを噛み締めながら、ダニエルの肩に頬を寄せた。




