第二十二話 「ふれっしゅごーれむ ろく」
「ジョナス?!」
仲間の名前を呼ぶことによって集中が乱れ【ファイヤーウォール】の一部が解除された。
しかも二人も抜けた穴は大きく、戦士たちに多大な負担を強いた。
一部の戦士に至っては手傷を被って後ろへ下がり始めていた。
「クソッ! 後ろは何してやがる!」
戦士たちは口々に文句を言うも戦いを継続していたが。
剣を振り盾を鳴らして、ゾンビ達の注意を懸命にそらし続ける。
「グハァ!」
しかしその魔法使い達には虐殺に等しい戦いが繰り広げられていた。
また一人フレッシュゴーレムによって心臓を抜き取られた死体が一つ作成された。
ただ一体の敵の名は敵はフレッシュゴーレム、それも魔法耐性を持つ特別種だ。
絶望的に過ぎる戦いをしながらも彼らの目には闘争本能が溢れている。
「フッ――フレッシュゴーレム!」
「リリーシャ殿を呼べ! そうじゃなきゃ全滅するぞ!」
あわてる魔法使いが持っていた笛を鳴らそうとする。
させまいとフレッシュゴーレムが剣を下ろす、その瞬間――。
腕を切られ、情けない音を出して笛が吹かれる。
その瞬間突風のようにリリーシャが現れた。
「待たせましたか?」
爆音と共にリリーシャが弾丸のように突っ込んできてフレッシュゴーレムを吹き飛ばしす。
「失礼」
と言って、怪我を負ったみなを【エリア・ヒール】で癒やしていく。
吹き飛ばされたフレッシュゴーレムはゾンビを巻き込みながら、縦横無尽に跳ね回る。
なんとか着地したフレッシュゴーレムは、大声で叫びだした。
「ゼイイン!マエヘ!」
フレッシュゴーレムの声に驚きを隠せない。
まさかこいつに喋るだけの知能が合ったのかとみなが思った。
ゾンビ達は声に従い、突撃を掛けるように走って来る。
「だから言ったろ全滅コースだって!」
戦士の一人が情けない声を出して逃げようとすると。
襟首を掴むものがいた。
「あいにくと数が少ないんでな。お前達も手をかせ」
マルク・ハーマン、その人であった。
「地上は?!」
「全部潰した」
そのあっさりした声に驚きを隠せない戦士たち。
「マジかよ……」
マルク・ハーマンがゾンビを倒し始めると周りの戦士や魔法使いも参戦して激戦になっていく。
「うまく行きませんでしたわね。あのまま魔法使いを葬っておけば、私に対してもかなり有利になったかもしれないのに」
「マケナイ!アルジサマノタメニ!」
「これがフレッシュゴーレム……中々早そうですが決して切れない相手ではありませんね」
怒りに満ちた顔で足元の砂を踏みにじり、リリーシャへと突進するフレッシュゴーレム。
「スキル【ファング】」
剣技の基本技の一つ、それが常人をはるかに上回る速度で放たれた。
フレッシュゴーレムの腕が飛ぶ、彼自身もまさか一撃で腕を刈られると思わなかったのか、驚愕の表情を貼り付けていた。
雄たけびを上げるフレッシュゴーレムは、残った片手を振り回すが。
「それは悪手ですよ」
リリーシャの容赦のない連続攻撃によって残った手を刈られ首も同時にはねられた。
フレッシュゴーレムは残骸になりここに屍を晒すだけになった。
だが瞬時に回復したのか、また起き上がり、攻撃を加えてきた。
「私、貴方と同じようなタイプと戦った経験があります」
再度ぶつかり合う、リリーシャとフレッシュゴーレム。
リリーシャの剣がフレッシュゴーレムに触れるとそこが抉れるように粉砕されていく、そして瞬時に回復していくのだ。
リリーシャは舌打ちをすると強化されたスキルで【雷神波】を放つ。
これはダメージ回復率を限りなくゼロにする特殊攻撃系スキルである。
「ギャャャャ!!」
「スキルの熟知が貴方にはなかった、私これでもプロでして」
エスペランサで一振りするとゴーレムは四肢をバラバラにされて行きながらさながら弾丸のように飛んでいった。
ついにはダンジョンコアにぶち当たりダンジョンコアを破壊してしまう。
ダンジョンコアが破壊されたのをきっかけとしてゾンビやスケルトン、アンデッドウーリアが行動を停止する。
あっさりとフレッシュゴーレムを倒したリリーシャを魔法使いはぽかんとしてみている。
残ったゾンビたちを掃討し始めたのを見て自分達も参加していく。
ほぼ棒立ちとなったゾンビ達は彼らの敵ではなく、あっさりと土へと帰っていく。
「結局、死霊使いはいなかったなぁ」
魔法使いの一人がぼやき、何人かが頷いた。
「ああ、リリーシャ殿の強さに恐れをなして逃げ出したに決まっているさ」
口々に死霊使いに文句を言う彼らを止めるものはいなかった。
仲間が死に、少しでも気分を盛り上げようとする彼らに悪感情は無かった。
・
「どどーして失敗する! お前の言うとおりにしたではないか! その為にスラムの連中もやった!
私が帝国に寝返ることが出来ないなんて馬鹿な話があるか?!」
地下室で大声を上げているのはこの街の領主である。
黒ずくめの子供に食って掛かり、目は血走り、今にも呼吸困難で倒れそうな顔をしていた。
「そりゃあんた。プレイヤーにぶつけたのがアレだけの戦力なんだから、仕方がないだろ。
現にマルク・ハーマンが居たのが悪いね。あれで戦力二分しちゃった」
「しちゃったじゃないだろうが?! 私は王国などもう居たくは無いのだ、戦争ばかりしおって、「ウルグス伯爵は屈強な武人であるから前線を任せましょう」と言われる身にでもなれ!」
完全に見た目のせいである。しかも指揮も人並みより才能があったため、最前線に送られること数多く。
戦争になればすぐに最前線コースと言うのが彼の悲哀だった。
「あーいわれたいねぇ。それってあれだろ、信頼されているってことだろ」
「信頼ではないわ! 私にとって悪夢だ! 何が悲しくて矢が飛び交う最前線の指揮をせにゃならんのだ! 私に死ねというのか?!」
それでも生きているのが指揮のうまさと、運のよさに定評があるこの男のすごさだった。
そんな中、地下室の階段を下りてくる音が聞こえた。
「ここって誰かに教えた?」
殺気混じりの怒りの表情の子供。殺気に当てられたのか、ぶんぶんと顔を振る領主。
「きみ何者?」
黒ずくめの子供が質問する。
「吾輩、由緒正しき吸血鬼からして」
子供は「じゃあ敵じゃん」と言って興味を一気になくした。
「そう、じゃあ、死ね【ジャッジメントボルト】」
子供の腕から超高圧の電流が流れ、吸血鬼にとびだす。
「【バッシュコート】」
吸血鬼がマントを広げると吸い込まれるように電撃が掻き消えた。
「うそ。そんなのあり?」
「吾輩、防御には自身があるからして」
「じゃあ逃げるよ、さようなら」
バッシュと音がして転移系の術で強制的に逃げられた事を知ると舌打ちをした。
「ちっであるからして、転移系の結界封じを施して置けばよかったからして」
目標を失った怒りで真っ赤な目が更に真紅に染まっていく。
その目の前に震えて涙を流している領主を見つけた。
「責任の一旦はこやつにもあるからして、自業自得とも言う」
吸血鬼は大きな口を広げて何かを考えるように頭をひねった。
領主が抵抗するも怪力で抑えて抵抗できないようにする。
啜り泣きと命乞いが耳を打ったが吸血鬼にはなんら感傷は無かった。
「食事であるからして、いただきます、とも言う」
早く完結させたい!




