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第十六話 「てんしょく」

ちょっと実験作品を投下します。短いです。


ここはギルド付きの酒場、カウンターには十人はゆうに座れる席と、それを上回る広い店内ではテーブルと椅子が置いてあった。宴会なども開かれるため大きく余分に取るのがギルドの流儀だった。


そんな酒場で三人だけがテーブルを一つ占拠し酒瓶を次いでいた。

皮の鎧と剣を装備した、見れば冒険者と言うことが分かるだろう格好をしていた。


「『五剣のリリーシャ』か」


ギルドの酒場で一人の冒険者が口に出した言葉を残りの二人が反芻するように言う。


「前は『白銀の乙女』だった気がする」

「『紅の戦乙女』はお気に召さないようだ、言うと怒るからな」

「そりゃお前、臓物まみれで戦っているところを見られたからに決まっているだろう」


あの強さで美人とくれば、二つ名ぐらいいくらでも付くのが冒険者である。

リリーシャも例に漏れず二つ名をもらっていた。


「では『五剣のリリーシャ』に乾杯」

「あわれな冒険者に乾杯」

「復帰不可能の冒険者に乾杯」


それぞれ真相を知りながら、やぶの中へ置き忘れたかのような冒険者達である。

誰のせいで数十人の若い命が失われベテランがいなくなった、というのが身にしみて知っているものたちだ。


「次は若いものの時代だと思ったんだがな、あれのお陰で現役復帰しちまった」

「まだ止めてねぇだろうが」

「やめようと思ってたんだよ。俺も年だしな金もたまったし」

「それ去年の酒やめるとかいってたときにも言わなかったか」

「俺も聞いたなそれ」


手に持った酒のカップを凝視されて、冷や汗を流す冒険者。


「俺のことはどうでもいいんだよ。で、期待の新人さんはどこ行った」

「さあて、クエスト討伐に行って帰ってきたまでは記憶にあるんだが……宿じゃないのか?」


話しそこそこに料理が運ばれてきた。

中々にうまそうだ、早速手を出そうとするが。


「ほう、感心だ。ここでグダをまいているお前達よりも遥かにいい」

「げぇ!マルクの旦那!」


マルク・ハーマンが話しかけたことで冒険者達、三人組のロンカス、マルタ、イルホンは縮み上がった。若い頃に散々に叩きのめされたことが、この年になっても尾を引いていた。


「なにが『げぇ!』だ。いい加減お前達も働け、人手不足なのは知っているだろう?」

「へぇ、それはもう」


三人はぺこぺこしながらクエストを受けに走った。


「さてリリーシャは何処に行ったのやら」


人の料理をつまみ食いしながら言った。



リリーシャ・エル・アルマータはある決意ををしていた。それは――


転職。


である。

別に冒険者から足を洗おうなどと考えてもいない。ただシステム的な転職の話である。


グレーターゴブリンリーダー程度に苦戦するようじゃ、たかが知れている能力値だ。

悔しいが、そろそろ職業を決定するときだろうと考えた。

職業を決定すればそのぶんステータス値にボーナスが入る。

しかし職業を決めるともう二度と職業を変えられないし、スキル経験値効率が職業によって変化する。

そのため職業なしの人がかなり多いのだ、二次職業を選ぶにはレベルが60も必要ともされるから余計に職業を選びにくいだろう。


旨く自分の好みの職業をつかないと、魔法やスキルが覚えられない事態に陥ることもある。


「神官戦士。なんていいじゃないかしら」


回復魔法を唱えることが出来る戦士である。魔力も高く攻撃魔法も使える。

ただ魔法の才能がないと「ヒール」を唱えることも出来ずにやられてしまうほど、運用が難しい。

俺は眷属特性によって無制限に近い魔力を持っているため、「ヒール」が連続で唱えられる。


(と言うか何故戦士などやっているのだ?)


魔法を撃ちたい、俺もピコピコしたい、どうやら最初の選択肢を間違えたらしい。


思い立ったが吉日と言う、宿を出て神殿に行くと。


宿から暫く行くと、石作りの神殿が見えてきた。

20メートルぐらいの神殿の前には人だかりが出来ていた。

どうやら転職希望者らしい。案外多い。


この街では十三歳の誕生日に神殿に行くことが義務ずけられている。ほとんどの人間が十三歳なのだろう。


ただ一様に転職希望者が暗い。一生モノの転職で、はずれを引いたらどうしようということなのだろう。

NPCにとって転職とはランダムで選ばれることになる、農家の三男坊が騎士になったときは爆笑の渦だった。

神官長に詰め寄られていたし、本人は笑い事じゃなかったけど。

というか連れて行かれたな、神殿騎士コースにでも入るのか、強制的に。


今度は俺の番だ。

列からはずれ名前も知らない神の像の前で祈りをささげる、「神官戦士がいいです」と祈っておく。

ふわりと何かが降りてくる気配がしたのでステータスチェックをする。

しっかり職業が神官戦士になっていた。神官長に言う。


「神官戦士です」

「素晴らしい、神への教えに準じた貴方へのご褒美なのでしょう。神官戦士は回復や攻撃魔法を両方覚えられてなおかつ戦うことも出来る職業です。どうです、わが神殿騎士団に入ることを考えられては?」


冗談ではない。俺の知るところによると神殿騎士とは清貧をこよなく愛する、ローカロリー部隊だ。

安い賃金で働かされ、監獄のような暮らしを味わい、モンスターと神の名の下に戦いを繰り広げる。

誰が好き好んでそんな所に入るものか。


「私は冒険者なので、ご遠慮させてもらいます」

「そうですか……ざんねんです。貴殿の前途に幸多からん事を」


あっさり引き下がる、神官長。

さっきの騎士と扱いが違うのは冒険者組合と揉めたくないからだ。冒険者になっていなければ即座に神殿騎士団に放り込んだだろう。それだけ人材と言うのはのどから手が出るほど欲しいものなのだ。


ふと妙な気配を感じた。

見られているようなそうでないような曖昧な気配だ。


(この感じ、気のせいか)


嫌な感じを振り切り、今日は宿に帰って、休むことにする。

この転職とて馴れるのに時間が掛かるのだ、クエストなど行っていられない。


明日も休みにして雑貨でも買いに行こう。

俺は上機嫌で歩き出した。



路地裏、闇の中に一人ぽつんと不可思議な人間が立っていた。

男でもあるような女でもあるような不思議な姿、いや認識できなかった。

背は高いのか低いのかすらも認識できない。それが闇の中にいた。


「間違いない」


闇の中で誰かが、囁いた。


「プレイヤーだ」


誰かの囁きが風に消えるまで時間は掛からなかった。


名前リリーシャ・エル・アルマータ

種族エンシェントヒューマン(眷属)

性別女

年齢17

LV16

職業 神官戦士

※固有能力

【創造神の加護】

【鑑定】

※スキル

【剣術Ⅳ】

【身体能力強化Ⅳ】

【危機察知Ⅱ】

【隠密Ⅰ】

【投擲Ⅱ】

※魔法

【ヒール】

【ウィンド】

【ウォーター】


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