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EXもーど 「やまねこのぼうけん ぜろ」

この適当さが山猫クオリティ。

8/13 修正しました。

"山猫"が、この世界に来て二週間が経過していた。

その間プレイヤーと出会わなかった。

つまるところ山猫に敵は居ないのだ。

きっとNPCだけがこの世界の全てなのだろう。

ならばなんの脅威がある!"山猫"はそう思った。


(旅立ちのときじゃ!)


そして我慢の限界だった。

もとより堪え性のない人間(神)なのだ。


宿の窓から飛び出した、"山猫"の姿で。


「自由への逃避じゃー!」


これよりご近所への冒険が始まる。



夜勤明けの、受付嬢シリウル・グリンセンは本日ただ今を持って奇跡と神への信仰に目覚めた。


それは十歳ぐらいの少女だった。

足首まで届く白い髪、触ればふにゃと曲がる髪と同じ色の猫耳、そしてキラキラとした瞳と興奮したような笑顔。

珍しくギルドが浮ついている。いや、リリーシャ殿の居たときも同じような様子だったか?

と回転が鈍くなった頭で考えた。


「おや見たこと無い子ですね、ギルドに用ですか?」


そう口にするが、頭の中では。


(なにこれ、可愛い!お持ち帰りしたい!今日はついているわ神様、ありがとう!

テイクアウト可能な少女と出会えるなんて!)


しかし彼女は、危ない思考を、表情には出さないで抑えることが出来る天才だった。


「なんなんじゃー!?」


ただ行動は抑えられなかった。

シリウルは"山猫"を、頬づりし、キスの嵐を降らせ、体をまさぐり、耳をあまがみしていた。

一発アウトである。


それを本日出勤してきた後輩が見つけて、息を吸い込んだ。


「衛兵よんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


奇声女と呼ばれた少女の本日一発目の言葉がそれだった。



衛兵より先にマルク・ハーマンによって助けられた"山猫"はギルド室に預けられていた。

ちなみに託児所代わりに使われたオスマン・ギルド長、子供の数が多いことに比例して威厳がとことんまで落ちていた。

この諸行も止むなしである。また。


「手を出したら殺すからな」


マルク・ハーマンの言葉に震え上がったのは言わずもがなだろう。


オスマン・ギルド長は、いかに自分が男として優れているか年端も行かぬ少女に語った。

爺の冒険譚である。しかもアウトな表現を多分に盛り込んだ冒険譚であった。


しかし"山猫"にとってその話は、男同士の猥談に等しい行為であり結構楽しかった。

あとから他の職員が聞けばドン引きの内容である。


「面白かったぞ、オスマン。これは褒美じゃ受け取れ」


山猫はオスマンに超高級酒【龍殺し】を進呈した。


その日の晩、オスマンは物理的に火を吐いて小火を起こし、治療院に担ぎ込まれた。

また威厳が落ちたのは言うまでも無い。



アーゼは菓子作りをしていた。リリーシャによって手渡されたクッキーの味に近づけるために。

砂糖は高級なものであったが、パン生地に油と卵を混ぜ込む方法で格安クッキーを創りだした。


これでプレミア価格が付いたリリーシャのクッキー(銀貨一枚)、の隙間を付くのだ。

リリーシャの助言とアーゼの度重なる努力によってクッキーの質は向上していた。

しかし、このクッキー作りすぎた。

誰か食べてくれるものは居ないかと孤児院に寄付したりしたが、それでも余った。

寄付する側から作っているので当然である。


(美味しいし安いから売れる……けど作るのが面倒)


一枚、石貨10枚という超格安価格のクッキー。

薄利多売といえどもこれほど薄利な物はないだろう。

街のパン屋に作り方だけ売って、あとはお任せにしようと考えるのも無理ないことである。


そして今日、近所の子供を集めてクッキーを振舞った。


そこに白い少女が居た。可愛すぎる少女だったが近所に居ただろうか、いや、構わない私の最高傑作をとくと味わいなさい!


観察していると、懐から出した白いモノを塗って、重ねて食べていた。

回りの子供達も真似して、少女から白いモノをもらっている。


「ねぇ、私にもくれない?」

「よいぞ、まだビンはたっぷりある」


塗って、挟んで食べてみた。程よい酸味が駆け抜け、クッキーのサクサク間が歯ざわりを楽しませた。


「この白いの何からできてるの?」

「牛の乳じゃ」


なんてこと、牛の乳って平民が飲む奴じゃない。そんなモノがこんなに美味しいなんて。


「負けない、負けないわ!」


私のクッキー道は始まったばかりのようだ。



マルク・ハーマンはちょっと目を放した隙に少女が居なくなっていることに気が付いた。

あの爺のせいである。少女に猥談など持ちかけたことが(じんもん)で分かったからだ。


さりとて教官の地位にいる、自分が少女を探しに行くわけらも行かず。

見たら親の元まで保護してやってくれ、と冒険者仲間や職員に言うことしかできなかった。


あの可愛い少女である、さぞ親も心配していよう。


「教官、本日のランク判定員に指定されました」


そんな時、一人娘であるマールがやって来た。

自分の娘であるが美人である。リリーシャには及ばないがな。


「何か?」


睨まれた。何故女はこうも勘が鋭いのだろうか。


「男が思っているより、男は顔に出る生き物なのです」


知りたくない事実を聞かされた。

マルク・ハーマンは今日よりポーカーフェイスの練習を始めた。



グレンは唸っていた。インゴットを前に、さきほど少女が来て置いて行ったインゴットだった。


「ヒヒロイカネをやろう、これでリリーシャに一振り作ってくれ」


リリーシャの関係者かと思ったが、何も言わずに去っていたところを見るとファンかもしれない。

しかし、白く輝いた少女だった。あと五十年若ければ結婚を申し込んだであろうほど、美人である。


グレンは再度頭を振りかぶった。馬鹿な事を考えている。

このインゴットの前に出ると馬鹿な事を考えてしまうのか、先ほどの少女に魅了されたのかは分からなかった。


「かあちゃん、ごめん」


幼女趣味に目覚めたのなら唯一無二の愛した女性である妻に申し訳が立たなかった。

グレンは唸る、これは恋ゆえに悩むのか、インゴットの使用目的で悩むのかも分からないまま。



ギルドへ再突入を果たした、"山猫"はクエストが張っている掲示板の前でクエストを受けたがっていた。

しかしクエストを受けるためには冒険者として登録しなければならない。

少しどころか大分面倒だった。

リリーシャの登録証を使う手もあったが、即バレ、盗難届けを出されて、衛兵にしょっ引かれることは目に見えていた。

よって"山猫"はSSO時代の楽園でしていた事をする。


「わしを冒険に連れて行ける猛者を募集中じゃー」


さすがにSSOの集まりより少ないがそれなりに集まった。"山猫"は満足した。


「このハイスキュラを狩りたいのじゃ!」


全員逃げ出した。ハイスキュラとはA級モンスターだ。

女の上半身に蛇の下半身を持った、このモンスターは毒と麻痺を起こす。

そのクエストは、それが集団で現れたという理由から村に居座るハイスキュラの討伐である。


だが今現在、マルク・ハーマンが討伐を繰り返し数が減ってきた最中だった。

あの男が討伐を繰り返すのだ、誰が好んで死にに行くものか。全員の考えは一致していた。


ただ下心のある奴だけは別だった。


「いくぞ、ジャン!気合を入れろ!」

「ああ、オリオテ!俺達の冒険は始まったばかりだ!」


二人の若者のリビドーが死への恐怖を克服させた。


その日、ハイスキュラが村から消えた。

それこそ討伐証明部位も残さず殺戮されたため、誰も信じなかった。

しかし二人は危険を犯して村の調査をしたということで報奨金をもらえることとなった。

ほとんど酒代に消えたという。



旅の終わりは直来る。もうすぐ夜なのだ。

"山猫"は朝と同じく窓から侵入し、部屋へと戻った。

そして日記を書く。今日の出来事を。何処にいって何をして何があったか。

これが後に、第一級歴史資料「やまねこのぼうけん」の始まりだった。


すみません。バトルを書きたかったんですが、本編に残しておきます。

次回の「やまねこのぼうけん」も今度書きますのでお楽しみください。

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