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両腕を失った英雄に「死ぬための剣をくれ」と頼まれた女鍛冶師は、生きるための手を作る  作者: 他力本願寺


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第42話 腕のある英雄像

王都中央広場の石畳の真ん中に、二本の剣を構えた男の像が立っていた。


完全な両腕。張り詰めた双剣。台座には、レオル・アシュベルの名が彫られている。


ノエラが出発前に告げた「腕を失っていないアシュベル氏」とは、この像のことだった。実在の別人でも、生き残った誰かでもない。石で作られた、腕のある自分だった。


証人団は監査院の宿舎と手続先へ散り、レオルとミレーネは、監査院の書記に案内されて宿舎へ向かう途中、この広場を通った。


レオルは、継火工房の煤染みの作業着を着ている。失った腕の長さに合わせて、両袖は短く畳んであった。右の装着部は、まだ休養の途中だ。継火も、保持具も、署名補助具も着けていない。荷は同行者へ預けていた。


像を見上げて、レオルは動かなかった。


行き交う市民の何人かが、台座の名を読み、それから作業着姿の彼を見て、また像へ目を戻した。同名の別人だと思ったらしい者もいた。本人だと気づかない者が、大半だった。石の腕と、畳んだ袖。二つは、市民の頭の中で、つながらなかった。


嘲る声があったわけではない。指を差して笑う者もいなかった。それでも、レオルの喉の奥が、静かに詰まった。問題は、誰かの悪意ではない。この像から、腕を失ったあとの人生が、まるごと消されていることだった。


書記は、王都営造局から受領した制作命令の真正な写しと、式典記録院から借りた公開式典の記録を持っていた。資料番号、貸出日、受領者が、表紙の控えに記されている。


「日付を、確かめましょう」ミレーネが言った。


レオルは、まず銘板を目で読んだ。次に、書記へ制作命令を読み上げてもらう。発注日と公開日。どちらも、レオルが両腕を失ったあとだった。制作命令には、公式の戦時画をもとに、双剣と両腕を備えた姿で作るよう記されていた。


なぜその姿を選んだのかは、書かれていない。だが少なくとも、腕を失った後の日付で、腕のある像が発注され、公開された。銘板の印象ではなく、出所と日付の異なる記録が、その事実を裏づけていた。


式典記録には、美しい言葉が並んでいた。西の砦を守った双剣の獅子。不屈の帰還。


だが、両腕を失ったことは、一行もない。式典で英雄として使われ、そのあと恩給を止められたことも。今、継火工房で給金を受け取り、救助員として働いていることも。


過去の戦いが嘘だとは、レオルは思わなかった。あの砦で人を守ったのは、確かに自分だ。だが、記録はそこで止まり、そのあとの人生を持たない英雄だけが石へ固められている。


壊したい、と思った。


石の剣を、根元から折ってしまいたい。だが、腕がないから壊せない、とは考えなかった。英雄の名で群衆を焚きつけて壊させることも、警備を退けることもしない。それをすれば、また別の物語を、力で作るだけだ。


「壊しますか」ミレーネが尋ねた。「記録しますか」


彼女は、代わりに決めなかった。選択を、レオルへ返した。


レオルは、しばらく像を見上げた。壊せば、記録に残った欠落まで消える。砦で戦った過去を否定したいのでもない。腕のある姿だけが自分だと決められることを、拒みたいのだ。


「記録する」


右の装着部は休養中で、自分では筆を使わない。レオルは銘板の一語、制作命令の一項、式典記録の一行を、目で追って読み上げた。書記が筆を走らせ、書いた内容を読み返す。レオルは一語ずつ聞き、日付と文言に違いがないかを確かめた。


記録することを選び、何を残すか確認したのは、自分だった。


「現在の姿も記しますか」と書記が尋ねた。


レオルは、記す範囲を自分で決めた。両上腕から先を失っていること。今日は装具を着けていないこと。継火工房の有給工房員兼救助員であること。装着部の細かな診療内容までは、この像の記録に要らない。書記はそのとおりに書き、レオルが読み返しを確かめた。石から消された後の時間を、今の自分の同意で一行、つなぎ直した。


広場を離れたところで、裏通りの一角へ人が誘導されているのが見えた。表の通りからは、布張りの囲いで入口が隠れている。


掲示には、国家支給義肢の定期整備、安全確認とあった。対象者は指定の日までに受付を済ませるよう書かれている。受付台には名簿があり、呼ばれていく者たちの腕や脚には、国家支給の義肢があった。


レオルは、噂だけで決めなかった。掲示の発行元と日付を読み、書記に写してもらった。それから、国家支給の脚を着けた年配の男が列を外れたとき、正面から声をかけた。


「尋ねてもいいか。これは、断れる整備なのか」


男は周囲を見てから、通知を見せた。本人の名と整備日があり、拒否する欄はなかった。


「窓口では、来なけりゃ次の支給と恩給の審査に響くかもしれん、と言われた」男は言った。「本当に響くかは、俺には分からん。だが、試す余裕はない」


窓口の言葉を、制度上の決定とは断定できない。それでも、男がそう説明され、断る選択を取りにくくなったことは、本人の証言だった。許可を得て、書記が通知の発行番号と、その言葉を記録した。


目の前の誘導、掲示、受付名簿、通知、本人の話。国家支給義肢の使用者が、整備の名目で、人目につかない裏通りへ集められている。監禁だ、強制だ、とまでは断じない。受付の職員全員が悪人だとも思わない。ただ、市民の目から外された場所と、本人が断りにくい運び方が、そこにあった。


広場の端へ戻ると、小さな子どもが、銘板の名と、レオルの顔を交互に見ていた。


「これ、あなた?」


レオルは膝を折り、目の高さを合わせた。武勇伝は話さなかった。


「昔、剣を使った。今は、腕がない」


そして、今していることを短く話した。ふいごの風を送り、鍬を固定具で押さえ、救助の道を仲間と組み、工房で給金をもらって働いていること。


「昔の英雄だけが、俺じゃないんだ」


子どもは、石の剣と畳んだ袖を、もう一度見比べて、うなずいた。どこまで分かったのかは、レオルには分からない。それでも、腕を失った後の仕事を、像の前に一つ残せた。


ミレーネは、そのあいだ、少し離れて立っていた。並んで歩き出すとき、肩が触れるほどの距離になった。


「記録は、残りました」彼女は言った。


「ああ。まだ壊したいとは思う」レオルは像を振り返った。「だが、残してよかった」


宿舎へ戻る手前で、ノエラが待っていた。監査院の正式通知を手にしている。


「明日の公開審問に」彼女は前置きなく告げた。「復興大臣グレゴール・ヴァイル本人が出席します」


レオルは、畳んだ袖の下で肩の筋を静かに引き締めた。


石の像が消したものと、裏通りの整備召集。明日、それらを記録の上で問う相手が、同じ部屋に座る。

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