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両腕を失った英雄に「死ぬための剣をくれ」と頼まれた女鍛冶師は、生きるための手を作る  作者: 他力本願寺


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第24話 今夜の最初の踊りを

帰還祭の広場に、篝火が並んでいた。


休戦後、初めて開かれる帰還祭だった。帰った者を祝い、帰らなかった者を悼む日だ。


村長が台へ立ち、名を読み上げていく。


生きて戻った者の名が呼ばれると、本人や家族が手を挙げた。帰らなかった者の名には、広場のどこかから低い声が応える。


返事があっても、本人は戻らない。


祝いと悼みが、同じ篝火の周りにあった。


ミレーネは、呼ばれる名の一つずつを聞いた。両親と弟の顔が浮かんでも、仕事へ逃げるように槌を探さなかった。今日は煤のついた前掛けも外し、ただ村の一人として立っていた。


レオルも広場にいた。


英雄の帰還として台へ呼ばれることはなかった。継火工房で働く一人の村人として、ミレーネの隣で名を聞いている。


それでよかった。


帰らなかった者の名が呼ばれるたび、レオルは灰緑の目を伏せた。誰を思い出しているのか、ミレーネには分からない。分かったふりで慰めず、最後の返事が終わるまで、同じ場所に並んでいた。


名の読み上げが終わると、広場へ笛と弦の音が戻った。露店の鍋から湯気が立ち、子どもたちが篝火の間を走り始める。


工房の客たちも、祭へ来ていた。


片腕を失った母親は、身体支持帯で赤子の重みを肩、背、腰へ分けている。空いた手で露店のパンを受け取り、赤子の顔を見ながら歩いていた。


広場脇の集会所では、公開試験で扉を開けた男が、肩帯の鉤を取っ手へ掛けていた。一度は浅く滑り、掛け直してから、自分で重い扉を引いた。中へ皿を取りに入り、また祭へ戻ってくる。


エッダは車輪付きの作業椅子で、広場の轍を避けて進む。板を渡した通路では車輪をゆっくり回し、酒樽の前へ着くと、値付けが高いと売り手へ文句を言った。


誰も、以前の身体へ戻ったわけではない。


こぼす者も、途中で休む者もいる。それぞれが選んだ道具と動き方で、同じ祭へ参加していた。


「ヴァルカさん」


呼ばれて振り向くと、村の男が三人、運搬台と農具の相談に来ていた。


「この前の台、坂で車輪が滑ってな」


「うちは荷台の縁を、もう少し高くしたい」


「鍬の柄を挟む具は、次はいつ頼める」


ミレーネは小さな控えを出し、一人ずつ用途を聞いた。


「坂の傾きと、濡れていたかを見ないと、溝だけで足りるか決められません。台を工房へ持ってきてください」


一人目の返事を記す。二人目には、運ぶ袋を持参するよう頼んだ。縁を高くしすぎれば、荷を下ろすときの邪魔になる。


三人目には、現在の正式受注枠を確認してから日を返すと伝えた。祭の場で、守れない納期を約束はしない。


男たちは控えを覗き込み、肩を寄せて自分の道具の形を説明した。仕事の話で、口説く者はいない。


少し離れたところに、レオルが立っていた。


こちらを見ている。男の一人が身振りを大きくするたび、レオルの残った肩がわずかに上がった。呼吸も、いつもより短いように見えた。


それでも、割り込んではこなかった。


客を押しのけず、英雄の名も恋人の立場も使わない。ミレーネが最後の相談を終え、三人が露店へ戻るまで、篝火の脇で待っていた。


「車輪台は、休養日明けに持ってきてもらいます」


ミレーネが控えを閉じると、レオルが近づいてきた。


「今のは、少し妬いた」


正直な声だった。


「割り込む理由はなかったが、早く終われとは思った」


「思うことまで、止めなくていいです」


ミレーネは答えた。


「仕事を止めなかった。それで十分です」


レオルは一度、息を整えた。それから、命令ではない声で尋ねた。


「今夜の最初の踊りを、俺にくれないか」


昨日の「踊りたい」とは違う。いま、ミレーネの返事を求める問いだった。


篝火のはぜる音を一つ聞いてから、ミレーネは答えた。


「はい。あなたと踊ります」


広場の隅で、ゆっくりした曲が始まった。速く回る踊りではない。足を運び、相手の拍を確かめるような曲だった。


二人は、踊りの輪から少し離れた場所に立った。


「どこに触れていいですか」


ミレーネは先に尋ねた。


「左肩ならいい。右上腕の装着部は避けてくれ」


「近さは、これくらいで」


ミレーネが半歩の距離を取ると、レオルがうなずいた。


「速すぎたら、声で止める。合図は『待て』でいいか」


「はい。私が足を踏みそうなときも言います」


許可を得て、ミレーネはレオルの左肩へ手を置いた。残端へ重みをかけず、触れるのは肩の上だけにする。


手を取り合うことも、腰を抱かれることもない。


レオルは足と重心、肩の向きで拍を示した。ミレーネは、その呼吸へ自分の歩幅を合わせる。


昔の騎士の型ではなかった。完全な舞踏でもない。二人の現在の身体で作る、歩くような踊りだった。


一度、ミレーネの爪先がレオルの靴へ触れた。


「待て、ですか」


「いや。痛くない。続けよう」


レオルの口元が動き、ミレーネも笑った。次の一歩は、二人とも少し小さくした。


曲が終わりに近づいたころ、赤子を抱いた母親が通りかかった。二人を見て足を止める。


「お二人は、恋人だったのですね」


ミレーネは、レオルを見た。代わりに答えてもらう必要はなかった。


「はい。恋人です」


「そうだ」


レオルも続けた。


母親は「そうでしたか」と笑い、赤子をあやしながら露店へ戻った。広場から拍手が起きることも、英雄の名が呼ばれることもない。


ただ、二人が恋人として踊ったことを、一人の客が知った。それで十分だった。


曲が終わり、ミレーネは左肩から手を離した。


篝火のそばで、レオルが声を落とす。


「口づけても、いいか」


ミレーネは、自分の呼吸を一つ確かめた。


「はい」


二人は互いに半歩を詰め、短く唇を合わせた。腕で抱き寄せることも、頬へ指を添えることもない。


交際を決めた朝以来の、二度目の口づけだった。


すぐに離れると、篝火の熱とは違う温かさが、唇に残った。


「残ってほしいと、思っています」


ミレーネは、篝火を見たまま言った。


「でも、それは私の望みです。騎士団への返事は、あなたが選ぶこと。祭も、今の口づけも、答えを決める重しにはしません」


「分かっている」


レオルは言った。


「明日の夕鐘までに、俺が決める」


二人は、しばらく広場の音を聞いた。名を読む声は終わり、笛と弦が夜へ流れている。


祭がひけ、人々が家路につき始めたころだった。


村の入口から、若い男が駆けてきた。息を切らし、村長へ何かを告げる。残っていた笑い声が止まり、広場のざわめきが別の色へ変わった。


「何があったんです」


ミレーネは、近くの男へ尋ねた。


「輸送隊だ」


男は青い顔で答えた。


「復興物資を運んでいた隊が、灰の旗を掲げた連中に襲われた」


ミレーネはレオルを見た。


レオルは村の入口へ身体を向け、短く息を吸っていた。祭の残り火が、その横顔を照らしている。


襲った者が誰か、何を奪ったのか、被害がどれほどか。まだ何も分からない。


分かっているのは、復興物資輸送隊が襲われたということだけだった。

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