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3-1 りこ視点 カバン越しの安心

次の日の朝。


りこは昨日のことを反省していた。


(カバン前にするの忘れない)


ちゃんと意識できるようにもなっている。



電車が来る。


ドアが開く。


人が流れ込む。


りこもその波に合わせて乗り込む。


今回はちゃんと、カバンを前に抱えている。


(よし)


少しだけ安心。



けれど、混雑は変わらない。


体の向きが安定しないまま、奥へ押し込まれていく。



そして、少し奥の位置に――桧山悠星がいた。


同じクラスの、あの男子。


りこはその瞬間に「あ」と思う。


でももう遅い。



電車が揺れる。


人の圧で、距離が一気に詰まる。


ただし今回は違う。


カバンが間にある。


完全な接触にはならない。



それでも近い。


肩と肩の距離はほとんどない。



「……」


りこは一瞬だけ固まる。


(またか……)



でも前回よりは落ち着いていた。


カバンがあるだけで、心理的な逃げ場ができている。



ふと顔を上げる。


悠星は前を向いたまま立っていた。



一瞬だけ目が合いそうになって、


りこは慌てて視線を逸らす。



(カバンあってよかった……ほんとに)


小さく息を吐く。



悠星は何も言わない。


りこも何も言わない。



ただ電車の揺れに合わせて、


少しだけ距離が近づいて、


少しだけ離れる。



数駅だけの時間。



やがて人の流れが緩む。


少しだけ距離が戻る。



前よりは落ち着いている。


でも――


完全に何も感じないわけではなかった。

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