2-1 りこ視点 満員電車のあと、残った動揺
電車が駅に滑り込む。
ドアが開いた瞬間、人の流れが一気にほどけて、さっきまでの密度が嘘みたいに消える。
りこは少し遅れてホームに出る。
一度、深く息を吐いた。
(……やばかった)
まだ心臓が少し早い。
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少し前を歩いていた男子の姿が見える。
同じ方向に歩いているだけで、もうさっきの距離感はない。
普通の同級生に戻った空気。
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りこは少しだけ迷ってから、足を早める。
「あの」
声をかけると、相手が振り向く。
「ん?」
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りこは一瞬だけ視線を外す。
「さっきは……ごめんなさい」
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少しの間。
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「別に」
短い返事。
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りこは少しだけ続ける。
「ちょっと、びっくりしたっていうか……」
言いかけて、やめる。
うまく言葉にならない。
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相手は軽く肩をすくめる。
「満員電車だし、ああなる時もあるだろ」
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その言い方は淡々としている。
でも責める感じもない。
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りこは小さく息を吐く。
「……うん」
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少しだけ間。
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「上り電車、こんなに混むんだね。びっくりした」
「まあな」
「引っ越してきて初めて乗ったけど、ちょっとびびった」
「うちの学校、下りで来るやつ多いからな」
りこは少しだけ納得した顔になる。
「そっか」
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「じゃあ、こっち乗る人ってあんまりいないんだ」
「……まあ、そんな感じ」
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会話が途切れる。
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でも、不思議と気まずくはない。
同じ方向に歩いているだけのはずなのに、
さっきより少しだけ距離が近い気がした。
2人はB県よりの、A県の県立高校に通っていて、2人とも、入学後にA県からB県に引っ越してきたため、上り電車に乗って通学してますが、みんなA県民なので、下り電車で通学してる人が多い、という設定です。




