11-1 りこ視点 うまく話せなくなった理由
電車を降りたあと。
いつもの通学路を並んで歩く。
りこは何度も言葉を探していた。
だけど、うまく見つからない。
(なんか変だな……)
今までは普通に話せていたはずなのに。
今日は何を話しても変になりそうで、言葉が出てこなかった。
隣では悠星がいつも通り歩いている。
しばらく沈黙が続いたあと、不意に声がした。
「……鈴木」
りこは顔を上げる。
「え、なに?」
「今日、静かじゃないか」
思わず足が止まりそうになる。
(気づいてたんだ)
「そう?」
なんとか笑おうとしたけれど、少し声が上ずった。
悠星は少しだけこちらを見る。
「なんかあったか」
ぶっきらぼうな言い方。
でも、心配してくれているのが分かった。
その優しさが、余計に胸を苦しくする。
りこは視線を落とした。
言わない方がいい。
そう思うのに――
「……なんかさ」
気づけば口が動いていた。
「桧山くんといると、ちょっと変で」
一度息を吸う。
そして、小さく続けた。
「うまく話せなくなった」
言った瞬間。
頭の中が真っ白になる。
(なに言ってるの私!?)
恥ずかしさで逃げ出したくなる。
「ごめん、忘れて」
慌ててそう言う。
すると。
「……俺も」
りこは顔を上げた。
悠星が前を向いたまま続ける。
「前から、意識してる」
心臓が跳ねる。
言葉の意味を理解した瞬間、胸の奥が熱くなった。
何も返せないまま歩いていると、校門が見えてくる。
そのときだった。
悠星が足を止める。
りこも立ち止まった。
振り返った悠星が、まっすぐこちらを見る。
「鈴木」
その声だけで胸が苦しくなる。
「ちゃんと言う」
一拍。
そして――
「好きだ」




