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6-1 りこ視点 守られる位置が当たり前になる朝
朝の電車。
5月に入って、混雑は少しだけ落ち着いたけれど、油断できるほどではない。
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ドアが開く。
人の流れの中に混ざって、りこも車内へ入る。
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最近、気づくことがあった。
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いつの間にか、
桧山くんが前にいる。
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偶然だと思っていた。
最初の数日は特に気にしていなかった。
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(今日はちょっとマシかも)
そのくらいの認識だった。
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でも、それが何日も続く。
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電車が揺れたとき。
後ろから押されても、前に壁があるみたいに動きが止まる。
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視線を少し上げる。
そこには悠星の背中がある。
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(……あれ)
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次の日も同じ。
また、その位置。
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りこは少しだけ様子を見る。
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人の流れに合わせて、
悠星がほんのわずかに立ち位置を変えているのが分かった。
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後ろから人が押してくる。
でも、その圧力は不思議と直接伝わってこない。
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(これって……)
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何日か続いて、
ようやくひとつの考えが浮かぶ。
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(……守ってくれてる?)
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もちろん確信はない。
聞いたわけでもない。
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でも、
そう思うと色々なことの説明がつく気がした。
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悠星は何も言わない。
今日も前を向いたまま立っている。
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りこも何も言わない。
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ただ、
カバンを握る手に少しだけ力が入る。
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不思議と安心する。
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その感覚だけが、
言葉より先に二人の距離を変えていった。




