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11・知識は伝達がもっとも難題

例えば、小学生が大学の講義を聞いて十全に理解できるだろうか。

もちろん、小学生にも伝わるように分かりやすい説明でなく、専門用語が飛び交うちゃんとした講義だと仮定して、だ。


大多数は無理だ。

極僅かな天才とも呼ぶべき少数が可能な事であり…

そして、俺はその大多数の一人である事は間違いない。


変人の魔法に関しての話も同じだ。

殆ど理解できなかった。

ゾンビ騒動からようやく一月が経って大体の事が解決して魔法について聞いたが分からない事が分かった。


ゾンビの事は何度も説明を受けて俺なりに噛み砕いて理解したつもりだが、魔法とは、魔力とは何ぞやと思う気持ちは変わらなかった。


変人は言動こそ怪しいものの、優秀なのだ。

知識の吸収が異常に早い。

これは異世界から転生した影響もあるだろう。

違う世界といえ、世界を獲ろうとした魔術師。

さらには異世界に転生してきた実力者。

それなりに頭が良いのだろう。


いつだったか、小学校の先生から聞いた話だが入学して間もない頃には大学で学ぶような事すら理解していたらしい。

日本に飛び級制度が無いことを本気で悔やんでいた先生の顔を思い出した。


「兄弟!

 聞いてるのか!?

 だから魔力とは…」


現実逃避させてほしい。

延々と理解できない話を聞かされ変人の言葉を聞く気力が俺にはもう無い。

馬の耳に念仏という言葉があるが、まさにその言葉に相応しい状況なのだ。

俺から尋ねた話題であるから止める事もできず、ただただ聞き流す事に徹する。

変人は話し足りなさそうで止まるにはまだまだ時間がかかるだろう。


理解できたと思うゾンビの特徴を一つ一つ思い返して時間を潰すか。


ゾンビ、正確にはエロゾンビ。


魔法によって歪められた生物…通称、魔物となった彼…彼女達。


元は犯罪者の男だが、同一化という呪い…魔法とは違うものでゾンビとして変えられた者達。

ゾンビに変わる際に元の人格なんかをまとめて固めた物、心の結晶だったか?

それを俺が取り込む事で魔法の範囲が拡がる。

他にも色々と強くなるようだが…今の所、変化は見られない。


ゾンビは魔力によって存在を維持しており、食事や睡眠、呼吸や排泄など生命維持に必要な活動を一切必要としない生物の枠から外れた存在。

腹の中に俺の手が入った事も変人と俺の魔力が全くの同じ性質だからできた事らしい。

一種の魔法らしいのだが、俺の使える魔法がゾンビのアレを取るだけなのは不服だ。


姿形は変人の任意で変えられるが成長や老化はしない。

俺には無理らしい。

変形には魔法を使うしかなく、俺はその魔法を知らないからな。


変わりに魔力が無くなると存在を維持できずに消滅するらしい。

暴走の件も俺の魔力が届かなくなり、周囲から魔力を得ようと動いたかららしい。

ちなみに男の生命力を魔力に変換して同一化の呪いとやらを発動しているらしく、ゾンビにとってあの乱交は食事に等しいようだ。


欠点は強い性欲。

特に唯一残された人らしさである性欲によって周囲が見えなくなるほど男を求めるようだ。

あの乱交現場を見れば納得しかない。


今は変人の犯罪者だけ狙うように魔法で設定されているようだが、その線引きは変人の匙加減である。

そこは変人の言葉を信じるしかない。


身体能力が普通の人よりも遥かに高い。

車に走って並走できたり、コンクリートの壁を豆腐でも潰すかのように破壊できる。

知能は獣並みで複雑な事は理解できず、言語や文字を理解できなくなっている。

変人の指示だけは魔法で通すから従うようだ。

たまに性欲に負けて指示から外れた事をやると変人が言った時は俺は沈黙するしかなかった。


そして最悪な事に魔法以外で傷つける事ができない。

魔法で歪み、魔力で再構成されたゾンビ達は物理法則を超越したようだ。

実質、人に倒せぬ不老不死の怪物である。


ヤクザやその取引相手をゾンビに変えて増え、今や10万を超えたらしい。

数えることも止めたゾンビのアレを抜き取る作業。

一月かかっても不思議ではない数だ。


大半のゾンビは信者から受け取った山や畑で林業やら農業に従事して残りは周辺の警戒及び敵の制圧を担当するらしい。

そんなに今の俺達に敵はいるのか?

ヤクザに目を付けられてた時点で察するべきか。


「そう言えば兄弟!

 一人だけ治せたぞ!」


ゾンビが裸で山を駆け巡っている光景を想像していて反応に遅れた。

治せたという言葉、治せなかった相手。

それはあの薬物で壊された彼女達の事だろう。

魔法を阻害するとはいえ、時間をかければ治ると言っていたが、治せたのか。


「…そうか」


「叫んでいた娘がいただろ?

 あれだけは薬物を投与されたばかりだった!

 他よりも脳のダメージが少なかった!

 明日には意識を取り戻す!

 ぜひ話を聞いてみようぜ!」


「ほどほどにな」


…変人、薬の体感を聞きたいんだろうな。

最近は夜中に寝ずに薬物に関して研究してるらしいし。

材料も作り方も魔法が干渉してないのに魔法を阻害する事に興味を抱いていたからな。

もしも変人が科学者だったならマッドサイエンティストという言葉がしっくりとした事だろう。

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